確率変数$X$を線形変換するとは次のような操作を指します。
線形変換後の確率変数を$Y$とすると、確率変数$X$の線形変換は、定数$a$、$b$を用いて、次にように表現できる
\begin{equation} Y = aX + b \end{equation}
例えば、恣意的な設定ですが、くじ引きを引いた時、出た目の数$x$に対して賞金が$y = 100 x + 2000$円もらえるようなくじがあるとします。この時、出る目の数$x$が正規分布に従うとき、賞金はどのような分布に従うでしょうか。また、その分布の平均や分散はどのようになるでしょうか。
といった設定の問題を解くときに確率変数の線形変換をマスターする必要性があります。
では、早速内容に入っていきましょう。
確率変数の線形変換
ある線形変換をする対象の、確率変数$X$の確率密度関数を$f (x)$ とします。
ここで、次のような線形変換をするとします。
\begin{equation} Y = aX + b \end{equation}
このとき、線形変換した確率変数$Y$の確率密度関数 $g(y)$は、次のようになります。
確率変数$X$を $Y = aX + b$で線形変換した確率変数$Y$の確率密度関数$g(y)$は、次のようになる
\begin{equation} g(y) = \frac{1}{|a|} f(\frac{y-b}{a}) \end{equation}
(3)の結論は覚えて置けると良いですね。では平均と分散はどのようになるか見ていきましょう。
線形変換した確率変数の期待値
(2)式によって、線形変換された確率変数$Y$ の期待値 $E[Y]$は次のようになります。
簡単なので、証明と一緒に、結論を提示します。
確率変数$X$を$Y = aX + b$ の線形変換をおこなった確率変数$Y$の期待値$E[Y]$は次のようになる
\begin{equation} E[Y] = E[aX + b ] = aE[X] + b \end{equation}
(4)は期待値の線形性の性質を利用しました。期待値の線形性については、こちらの記事をご覧ください。

線形変換した確率変数の分散
続いて、同様の線形変換をした確率変数$Y$の分散を考えてみましょう。
確率変数$X$を$Y = aX + b$ の線形変換をおこなった確率変数$Y$の分散$V[Y]$は、次のようになる
\begin{equation} \begin{split} V[Y] &= E[(Y- E[Y])^2] \\ &= E[(aX + b)^2 - 2(aX + b)(aE[X]+b) + (aE[X] + b)^2 ] \\ &= E[a^2X^2 +2abX + b^2 - 2a^2XE[X] - 2abX - 2abE[X] -2b^2 + a^2E[X]^2 + 2abE[X] + b^2] \\ &= E[a^2X^2 - 2a^2XE[X] + a^2E[X]^2] \\ &= a^2E[X^2 - 2XE[X] + E[X]^2] \\ &= a^2(E[(X-E[X])^2]) \\ &= a^2E[X] \end{split} \end{equation}
(5) では、期待値の定義と分散の定義を利用しました。分散の定義は、次の記事をご覧ください。

(5)の結論から、確率変数を$aX+b$で線形変換すると、分散の値が$a^2$倍になることがわかりました。