ヘンテナの仕組みと作成方法を解説

変なアンテナ、通称「ヘンテナ」はアマチュア無線家では有名なアンテナです。制作時間も短く、予算も数百円から数千円で作成できることから、アンテナ工学や無線通信に興味がある人は是非作ってみると面白いと思います。

本記事の内容

  • ヘンテナの概要とアンテナの基礎理論
  • ヘンテナの寸法設計
  • ヘンテナの材料と作成方法
  • Pythonでの放射パターンのシミュレーション

アンテナの基礎理論

アンテナとは、電気信号と電磁波を相互に変換する素子です。アンテナの特性を理解するために、いくつかの基本的な概念を押さえましょう。

波長と周波数の関係

電磁波の周波数 $f$ と波長 $\lambda$ の関係は、

$$ \lambda = \frac{c}{f} $$

ここで $c = 3 \times 10^8 \, \text{m/s}$ は光速です。例えば、地上デジタル放送(470-710 MHz)の波長は約42-64 cmです。

ダイポールアンテナ

最も基本的なアンテナがダイポールアンテナです。半波長ダイポール($\lambda/2$ ダイポール)は、全長が波長の半分のアンテナで、入力インピーダンスは約 $73 + j42.5 \, \Omega$ です。

アンテナの利得

アンテナの利得 $G$ は、等方性アンテナに対する放射電力密度の比で定義されます。

$$ G = \frac{4\pi U(\theta, \phi)}{P_{\text{in}}} $$

ここで $U(\theta, \phi)$ は放射強度、$P_{\text{in}}$ は入力電力です。利得はデシベル(dBi)で表されることが多く、

$$ G_{\text{dBi}} = 10 \log_{10} G $$

半波長ダイポールの利得は約2.15 dBiです。

ヘンテナの概要

ヘンテナは、日本のアマチュア無線家によって考案されたアンテナで、矩形のループ構造を持ちます。「変なアンテナ」の略称が名前の由来です。

構造

ヘンテナは、縦の長さが約 $\lambda/2$(半波長)、横の長さが約 $\lambda/6$ の矩形ループです。給電点は短辺の中点付近に設けます。

$$ \text{縦の長さ} \approx \frac{\lambda}{2}, \quad \text{横の長さ} \approx \frac{\lambda}{6} $$

特性

  • 利得: 約5-6 dBi(ダイポールに対して約3 dB高い)
  • 入力インピーダンス: 約50 $\Omega$(同軸ケーブルに直接接続可能)
  • 偏波: 水平偏波
  • 放射パターン: 8の字形(ブロードサイドアレイ的な特性)

ヘンテナの寸法設計

対象周波数: 地デジ(550 MHz)

$$ \lambda = \frac{3 \times 10^8}{550 \times 10^6} \approx 0.545 \, \text{m} = 54.5 \, \text{cm} $$

$$ \text{縦} = \frac{\lambda}{2} \approx 27.3 \, \text{cm}, \quad \text{横} = \frac{\lambda}{6} \approx 9.1 \, \text{cm} $$

用意する材料

実際に準備する材料は以下の通りです。

  • 同軸ケーブル(5C-2V等): テレビとの接続用。3m程度
  • 銅線またはアルミ線: アンテナ本体。直径1-2mm、全長約80cm
  • はんだごて・はんだ: 接続部のはんだ付け
  • プラスチック板(下敷き等): アンテナの骨組み
  • F型接栓: テレビ接続端子

作成手順

  1. 骨組みの作成: プラスチック板を縦27cm x 横9cmに加工
  2. 銅線の成形: 銅線を矩形に曲げ、骨組みに沿わせる
  3. 給電点の設定: 短辺の中点で銅線を切断し、給電点とする
  4. 同軸ケーブルの接続: 芯線を一方の端に、シールドをもう一方の端にはんだ付け
  5. F型接栓の取り付け: 同軸ケーブルのもう一端にF型接栓を取り付け

Pythonで放射パターンをシミュレーション

矩形ループアンテナの放射パターンを簡易的に計算してみましょう。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

# パラメータ
freq = 550e6            # 周波数 [Hz]
c = 3e8                 # 光速 [m/s]
lam = c / freq          # 波長 [m]
k = 2 * np.pi / lam     # 波数 [rad/m]

# ヘンテナの寸法
L = lam / 2    # 縦の長さ
W = lam / 6    # 横の長さ

# 放射パターンの計算(E面: xz平面)
theta = np.linspace(0, 2 * np.pi, 360)

# 矩形ループの放射パターン(簡易モデル)
# E面パターン: ダイポール的な特性 + ループの効果
E_dipole = np.cos(k * L / 2 * np.cos(theta))
denom = np.sin(theta)
denom[denom == 0] = 1e-10
E_dipole = E_dipole / denom

# ループ部分の寄与
E_loop = np.cos(k * W / 2 * np.sin(theta))

# 合成パターン
E_total = np.abs(E_dipole * E_loop)
E_total = E_total / np.max(E_total)  # 正規化

# dB変換
E_dB = 20 * np.log10(E_total + 1e-10)
E_dB = np.clip(E_dB, -30, 0)

# 可視化
fig, axes = plt.subplots(1, 2, figsize=(14, 6))

# リニアスケール(極座標)
ax_polar = fig.add_subplot(121, projection='polar')
ax_polar.plot(theta, E_total, 'b-', linewidth=2)
ax_polar.set_title('Hentenna Radiation Pattern (Linear)')
ax_polar.set_rticks([0.25, 0.5, 0.75, 1.0])

# dBスケール
ax_polar2 = fig.add_subplot(122, projection='polar')
ax_polar2.plot(theta, E_dB + 30, 'r-', linewidth=2)
ax_polar2.set_title('Hentenna Radiation Pattern (dB)')
ax_polar2.set_rticks([0, 10, 20, 30])
ax_polar2.set_yticklabels(['-30', '-20', '-10', '0'])

plt.tight_layout()
plt.show()

# 寸法表の出力
print("=== ヘンテナ寸法設計表 ===")
freqs_mhz = [144, 430, 550, 700, 900, 1200]
for f_mhz in freqs_mhz:
    lam_m = c / (f_mhz * 1e6)
    length = lam_m / 2 * 100   # cm
    width = lam_m / 6 * 100    # cm
    print(f"  {f_mhz:5d} MHz: 波長={lam_m*100:.1f}cm, "
          f"縦={length:.1f}cm, 横={width:.1f}cm")

まとめ

本記事では、ヘンテナの仕組みと作成方法について解説しました。

  • ヘンテナは縦 $\lambda/2$、横 $\lambda/6$ の矩形ループアンテナである
  • 入力インピーダンスが約50 $\Omega$ で同軸ケーブルに直接接続できる利点がある
  • ダイポールアンテナに対して約3 dBの利得向上が得られる
  • 材料費数百円で自作可能であり、アンテナ工学の学習に最適である

次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。