対称行列の定義や固有値、その行列式や逆行列が持っている性質などを一挙にまとめます。
特に本サイトでは統計学や機械学習について解説しているので、統計学や機械学習の文脈で利用することのある対称行列の性質について重点的に解説をしていきます。
特にガウス分布などの確率分布を考える際の、(分散)共分散行列などは対称行列であるため、この記事で紹介するような対称行列の性質を理解しておくと、式変形などを理解するのに非常にスムーズに勉強が進められると思います。
対称行列の定義
まず、最初に対称行列の定義を示します。
行列$A$に対し、
\begin{equation} A^T = A \end{equation}
の性質が成り立つ時、この行列$A$を対称行列(symmetric matrix)と呼ぶ。
この定義を満たす行列を対称行列と言います。
この性質から、実は対称行列は正方行列に限られますが、この性質は以降でわかりやすく解説していきます。
対称行列の具体例
先ほど定義を示しましたが、対称行列はイメージで理解すると非常に簡単であることがわかります。
例えば、次のような行列は対称行列になります。
\begin{equation} A = \begin{pmatrix} 3 & 2 & 1 & 5 \\ 2 & 2 & 5 & 6 \\ 1 & 5 & 3 & 3 \\ 5 & 6 & 3 & 2 \\ \end{pmatrix} \end{equation}
定義通り、行列$A$の転置行列$A^T$を考えることで、$A = A^T$を確認することもできますし、下記のように左上から右下へ対象線を引いて考えることでも、行列$A$が対称行列であることは明らかです。
対称行列の逆行列
続いて、対称行列の性質について解説していきます。
まず、対称行列の逆行列について、下記の性質が成り立ちます。
対称行列の逆行列も対称行列になる。
対称行列の逆行列も対称行列になります。これを証明したいと思います。
$A$を対称行列とすると、その定義から$A^T = A$が成り立つ。また、$A$の逆行列を考えると、逆行列の定義から、
A^{-1} A = I
が成り立つ。ここで上式の転置行列を考えると、
(A^{-1} A)^T = A^T (A^{-1})^T = I^T = I
が成り立つ。ここで、最初の式変形においては、転置行列の積の形で成り立つ等式を利用した。
ここで、対称行列より$A^T = A$であることから、
A(A^{-1})^T = I
ここで、上式において、左から$A^{-1}$をかけると、
(A^{-1})^T = A^{-1}
となり、対称行列$A$の逆行列$A^{-1}$も、対称行列であることが示された。