機械学習や統計学、大学の教養課程などで線形代数を勉強していると、さまざまな用語が飛び交います。特に正方行列は行列の基本的な形の1つで、多くの性質を有しています。
今回は正方行列(square matrix)について、その定義や正方行列が有している性質について解説します。
特に、機械学習や統計学で必要な知識や性質を重点的にまとめます。
正方行列の定義
まず最初に、正方行列の定義を示します。
行の数 $m$と列の数$n$が等しい時、その行列のことを、n次(m次)の正方行列という。
まさに定義はこれだけです。
正方行列の正方は、正方形から来ており、行成分と列成分の個数が等しければ全て正方行列になります。上記の定義よりも、下記のような正方形のイメージで覚えておくと良いと思います。

正方行列は、逆行列をもつかどうかで、正則行列か特異行列に分類されます。
一方、正則行列や特異行列は必ず正方行列になります。

正方行列の性質
正方行列はたくさんの性質や、正方行列だけに定義できる値が多く定義されています。一度に覚える必要はありませんが、どれも機械学習等で必要なので覚えておくようにしましょう。
対角成分
正方行列においては、対角成分(diagonal component)が定義できます。
対角成分とは、行$n$と列$m$において、$n=m$が成り立つ要素を集めた値になります。例えば、下記のような正方行列$A$が定義されているとき、
\begin{equation} A = \begin{pmatrix} 3 & 2 & 1 & 5 \\ 5 & 2 & 5 & 6 \\ 1 & 2 & 3 & 3 \\ 1 & 6 & 4 & 2 \\ \end{pmatrix} \end{equation}
体格要素は、[3, 2, 3, 2] となります。対角成分は非常に簡単で、正方行列における斜めの成分だと理解すれば十分です。

ちなみに、対角成分は英語でdiagonal componentと呼ぶので、正方行列$A$の対角成分をdiag(A)と表現することがあるので気をつけてください。
対角行列
正方行列のうち、対角成分以外の要素が0である行列を対角行列と言います。対角行列の具体例としては、次のような行列が挙げられます。
\begin{equation} A = \begin{pmatrix} 5 & 0 & 0 \\ 0 & 3 & 0 \\ 0 & 0 & 2 \\ \end{pmatrix} \end{equation}
逆行列
正方行列においては、逆行列を定義できる場合があります。
先ほども説明しましたが、正方行列のうち、逆行列を有するものを正則行列、逆行列を有さないものを特異行列と言います。
行列式
行の数と列の数が等しい正方行列に限り、行列式(determinant)が定義できます。行列式は英語でdeterminantと表現するので、行列$A$の行列式をdet(A)と表現します。行列Aの対角成分はdiag(A)なので、似ていますが違うことに注意してください。
正方行列の具体例
単位行列
単位行列は正方行列になります。次は2次元の単位行列ですが、これも行成分と列成分が等しいので、正方行列になります。
\begin{equation} E = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \\ \end{pmatrix} \end{equation}