分流器と倍率器 — 電流計・電圧計の測定範囲を拡大する理論と内部抵抗の影響

手元に「最大1 mAまでしか測れない電流計」しかないのに、10 Aの電流を測りたい。あるいは「最大0.1 Vまで」の電圧計で、300 Vの電圧を測りたい。こんなとき、計器を買い替える必要はありません。抵抗を1本つなぐだけで、同じ計器の測定範囲を何倍にも広げられます。電流計に使うその抵抗が分流器(シャント)、電圧計に使うのが倍率器(マルチプライヤ)です。

さらにこの記事では、もう一段深い話に踏み込みます。計器というのは「回路をのぞき見る道具」ですが、のぞき見ること自体が回路の状態を変えてしまいます。電流計をつなげば回路の抵抗がわずかに増え、電圧計をつなげば余計な電流が流れる。この負荷効果(loading effect)を無視すると、「安物のテスターで測ったら値がぜんぜん合わない」という現象が起きます。この記事を読むと、次のことができるようになります。

  • 手持ちの計器のレンジを何倍にも広げる分流器・倍率器を、自分で設計できる
  • テスターのカタログにある「20 kΩ/V」という感度表示の意味がわかり、測定に適した計器を選べる
  • 「この測定にこのテスターを使うと何%ずれるか」を事前に見積もれる

応用先は広く、実験室での電流・電圧測定はもちろん、センサ信号の読み取り回路、電源装置の監視、教育用の計測実習など、電気を測るあらゆる場面で土台になります。

本記事の内容

  • 分流器・倍率器の仕組みと倍率の式の導出(省略なし)
  • 多レンジ計器(アイルトン分流器)の設計
  • 電圧計の感度(Ω/V)と内部抵抗の関係
  • 負荷効果をテブナン等価回路で一般化し、Pythonで定量的に再現

前提知識

この記事を読む前に、以下の記事を読んでおくと理解が深まります。

分流器と倍率器の全体像

まず全体像をつかみましょう。電流計も電圧計も、その心臓部は「小さな電流を流すと針が振れる」同じ可動コイル型の計器です。この計器そのものが測れる電流はごくわずか(たとえばフルスケールで1 mA)で、計器自身も内部抵抗 $r$ を持っています。

この計器を「大きな電流計」に化けさせるのが分流器、「大きな電圧計」に化けさせるのが倍率器です。次の図で、両者のつなぎ方の違いを見てください。

分流器と倍率器の回路構成と電流の分かれ方の模式図

左の分流器は、計器に並列に抵抗 $R_s$ をつなぎます。大きな全電流 $I$ が来ると、計器にはそのごく一部 $I_g$ だけを流し、残り $I – I_g$ を分流抵抗に受け持たせます。右の倍率器は、計器に直列に抵抗 $R_m$ をつなぎます。大きな電圧 $V$ がかかっても、直列抵抗で電圧の大半を分担し、計器には安全な電圧だけを残します。

「電流を測るなら並列に逃がす、電圧を測るなら直列で分担する」——この対称性が、この記事全体を貫く骨格です。ではまず分流器から、なぜこのつなぎ方でレンジが広がるのかを式で確かめていきましょう。

分流器の理論 — なぜ並列抵抗でレンジが広がるのか

分流器の狙いは、計器に流れる電流を「間引く」ことです。全電流のうち一定の割合だけを計器に流し、残りをバイパスさせれば、計器の針の振れは小さくなります。その分だけ、より大きな全電流まで測れるようになる、というわけです。

計器(内部抵抗 $r$、フルスケール電流 $I_g$)に並列に分流抵抗 $R_s$ をつないだとします。並列接続なので、計器の両端の電圧と分流抵抗の両端の電圧は等しくなります。計器に流れる電流を $I_g$、分流抵抗に流れる電流を $I_s$ とすると、オームの法則から両端電圧が等しいという条件は次の1本の式になります。

$$ \begin{equation} I_g \, r = I_s \, R_s \end{equation} $$

一方、キルヒホッフの電流則から、全電流 $I$ は2つの枝に分かれます。

$$ \begin{equation} I = I_g + I_s \end{equation} $$

ここで知りたいのは「全電流 $I$ が、計器だけで測れる最大電流 $I_g$ の何倍まで測れるようになったか」です。この比を倍率 $m$ と呼びます。

$$ \begin{equation} m = \frac{I}{I_g} \end{equation} $$

式を組み立てていきましょう。まず式(2)を式(3)に代入して、$m$ を $I_s$ で表します。

$$ m = \frac{I_g + I_s}{I_g} = 1 + \frac{I_s}{I_g} $$

次に、比 $I_s / I_g$ を抵抗で書き換えます。式(1)を変形すると $I_s / I_g = r / R_s$ が得られるので、これを代入すると倍率の式が完成します。

$$ \begin{equation} m = 1 + \frac{r}{R_s} \end{equation} $$

とてもきれいな式です。計器の内部抵抗 $r$ に対して分流抵抗 $R_s$ を小さくすればするほど、倍率 $m$ が大きくなります。

この式の意味を、水路のアナロジーで直感的につかんでおきましょう。全電流という「水の流れ」が来たとき、計器と分流器は2本の水路のようなものです。抵抗が小さい水路ほど水がたくさん流れます。分流器の抵抗を計器の抵抗よりずっと小さくしておけば、水の大半は分流器側を通り、計器側にはほんの少しだけ流れます。計器側に流れる割合が「$1/m$」に絞られるので、その分だけ大きな全電流まで測れる、というわけです。式(4)はこの「水の分かれる割合」を抵抗の比で表したものにすぎません。

逆に、必要な倍率 $m$ が決まっているなら、式(4)を $R_s$ について解いて、次のように設計できます。

$$ \begin{equation} R_s = \frac{r}{m – 1} \end{equation} $$

たとえば内部抵抗 $r = 5\,\Omega$ の計器を10倍のレンジにしたいなら、$R_s = 5 / (10 – 1) \approx 0.556\,\Omega$ の分流抵抗をつなげばよい、と一発で求まります。倍率と分流抵抗の関係を図で見てみましょう。

分流抵抗と分流器の倍率の関係グラフ

このグラフから、倍率を上げるには分流抵抗をどんどん小さくする必要があるとわかります。10倍で0.556 Ω、100倍ならわずか0.05 Ω程度です。大電流用の分流器が「太い金属板」のような形をしているのは、これほど小さな抵抗を、電流が流れても発熱で溶けないように作る必要があるからです。

具体的な数値で設計を確かめておきましょう。フルスケール1 mA・内部抵抗 $r = 50\,\Omega$ の計器を、フルスケール1 Aの電流計にしたいとします。倍率は $m = 1\,\text{A} / 1\,\text{mA} = 1000$ 倍です。式(5)から必要な分流抵抗は $R_s = 50 / (1000 – 1) \approx 0.05005\,\Omega$。このとき全電流1 Aのうち、計器には $1\,\text{A} / 1000 = 1\,\text{mA}$ だけが流れ、残りの999 mAが分流抵抗を通ります。計器の針は「1 mAでフルスケール」なので、目盛りの読みを1000倍して「1 A」と表示すればよい、という仕組みです。

分流器が1つだけなら1つのレンジしか作れません。では、1台の計器で「1 A・10 A・100 A」のように複数のレンジを切り替えたいときはどうすればよいでしょうか。ここで工夫が必要になります。

多レンジ分流器 — アイルトン分流器

素直に考えると、レンジごとに別々の分流抵抗を用意し、スイッチで切り替えればよさそうです。ところが、この方式には落とし穴があります。切り替えの一瞬、スイッチが「どの分流抵抗にもつながっていない」状態になると、全電流がすべて計器に流れ込み、計器が焼き切れてしまうのです。

この危険を避けるのがアイルトン分流器(Ayrton shunt)です。発想は「分流抵抗を1本ずつ独立させず、直列に並べて、そのどこにタップ(端子)を立てるかで役割を変える」というものです。1本の長い抵抗の帯があって、その帯のどこに電流の入口を作るかで「計器に直列な区間」と「分流路になる区間」が決まる、とイメージすると分かりやすいでしょう。入口を計器から遠い側に置けば分流路が短く(抵抗が小さく)なって倍率が上がり、近い側に置けば分流路が長く(抵抗が大きく)なって倍率が下がります。次の図を見てください。

アイルトン分流器の切替式回路構成

分流抵抗 $R_1, R_2, R_3$ を直列につなぎ、その両端を計器に並列に接続します。測定電流を流し込む端子(タップ)の位置を選ぶと、選んだ点より計器側にある抵抗は「計器に直列」に、反対側にある抵抗は「分流路」になります。総抵抗 $R_1 + R_2 + R_3$ は常に計器と並列につながったままなので、切り替えの瞬間も計器がむき出しになりません。これが安全性の鍵です。

設計式を導きましょう。総抵抗を $R_T = R_1 + R_2 + R_3$ とし、あるタップを選んだとき「分流路になる抵抗」を $R_{sh}$、「計器に直列に入る抵抗」を $R_{se} = R_T – R_{sh}$ とします。このとき計器側の抵抗は $r + R_{se}$、分流側は $R_{sh}$ です。分流器の倍率の式(4)で $r$ を $r + R_{se}$ に、$R_s$ を $R_{sh}$ に置き換えると、そのタップでの倍率が決まります。

$$ \begin{equation} m = 1 + \frac{r + R_{se}}{R_{sh}} = 1 + \frac{r + R_T – R_{sh}}{R_{sh}} = \frac{r + R_T}{R_{sh}} \end{equation} $$

式(6)は驚くほど簡潔です。倍率 $m$ は「計器と総抵抗の和 $r + R_T$」を「そのタップでの分流抵抗 $R_{sh}$」で割るだけ。したがって、目標倍率 $m_k$ に対する分流抵抗は

$$ \begin{equation} R_{sh,k} = \frac{r + R_T}{m_k} \end{equation} $$

で求まります。倍率が大きいレンジほど分流抵抗が小さくてよい、という直感どおりの結果です。実際の設計では、まず最大倍率のレンジから総抵抗 $R_T$ を決め、各タップの位置を式(7)で割り振っていきます。この計算は後ほどPythonでまとめて実行します。

分流器の話がひととおり済みました。ここまでは電流計の話でしたが、電圧計はどうでしょうか。今度は「並列」ではなく「直列」の世界に入ります。

倍率器の理論 — 直列抵抗で電圧を分担する

電圧計の心臓部も、実は電流計と同じ可動コイル計器です。「電圧計」といっても、内部では小さな電流 $I_g$ が流れることで針が振れています。つまり電圧計は「内部抵抗 $r$ に流れる電流を電圧に読み替えている」だけなのです。計器単体で測れる最大電圧は $V_g = I_g \, r$ という、ごく小さな値になります。

もっと大きな電圧を測るには、計器に直列に倍率抵抗 $R_m$ を入れて、電圧の大半をこの抵抗に肩代わりさせます。測定したい電圧 $V$ が計器と倍率抵抗の直列回路にかかると、同じ電流 $I_g$ が両者を流れ、電圧が分担されます。

$$ \begin{equation} V = I_g \,(r + R_m) \end{equation} $$

一方、計器単体のレンジは $V_g = I_g \, r$ でした。倍率 $m$ を「拡大後の電圧 $V$ が計器単体のレンジ $V_g$ の何倍か」と定義します。

$$ m = \frac{V}{V_g} = \frac{I_g (r + R_m)}{I_g \, r} $$

分母分子の $I_g$ が消えて、次のように整理できます。

$$ m = \frac{r + R_m}{r} = 1 + \frac{R_m}{r} $$

つまり倍率器の倍率は

$$ \begin{equation} m = 1 + \frac{R_m}{r} \end{equation} $$

となります。分流器の式(4) $m = 1 + r/R_s$ と見比べてください。分数の $r$ と抵抗が、ちょうど分子と分母で入れ替わっています。並列(分流器)と直列(倍率器)の双対性が、式の形にそのまま現れているのです。倍率が決まっているなら、式(9)を解いて倍率抵抗を設計します。

$$ \begin{equation} R_m = r\,(m – 1) \end{equation} $$

分流器では倍率を上げるほど抵抗を小さくしましたが、倍率器では逆に、倍率に比例して抵抗を大きくします。この関係を図で確認しましょう。

倍率抵抗と倍率器の倍率の関係グラフ

内部抵抗 $r = 1\,\text{k}\Omega$ の計器を50倍にするには、$R_m = 1000 \times 49 = 49\,\text{k}\Omega$ の倍率抵抗が必要です。グラフが直線なのは、式(9)が $R_m$ の一次式だからです。分流器のグラフが反比例の曲線だったのと対照的で、ここでも双対性が見て取れます。

具体例で確かめましょう。フルスケール1 mA・内部抵抗 $r = 100\,\Omega$ の計器を、フルスケール100 Vの電圧計にしたいとします。計器単体のレンジは $V_g = I_g \, r = 1\,\text{mA} \times 100\,\Omega = 0.1\,\text{V}$ しかありません。必要な倍率は $m = 100\,\text{V} / 0.1\,\text{V} = 1000$ 倍です。式(10)から倍率抵抗は $R_m = 100 \times (1000 – 1) = 99{,}900\,\Omega \approx 99.9\,\text{k}\Omega$。100 Vをかけたとき、この直列回路に流れる電流は $100\,\text{V} / (100 + 99900)\,\Omega = 1\,\text{mA}$ となり、ちょうど計器がフルスケールになります。100 Vのうち99.9 Vを倍率抵抗が引き受け、計器にはわずか0.1 Vしかかからないので、計器は安全に動作します。

倍率器も1本では1レンジです。複数レンジの電圧計はどう作るのでしょうか。分流器のときと同じく、抵抗の並べ方に工夫があります。

多レンジ電圧計と感度(Ω/V)

多レンジ電圧計は、倍率抵抗を直列に継ぎ足していく方式が一般的です。次の図のように、計器から順に $R_{m1}, R_{m2}, R_{m3}$ をつなぎ、各つなぎ目から端子を引き出します。ある端子を選ぶと、そこまでの抵抗の合計がそのレンジの倍率抵抗になります。

多レンジ電圧計の倍率抵抗の配置

たとえば3 Vレンジの端子は計器に近く、300 Vレンジの端子は遠くにあります。遠い端子ほど、途中の抵抗をすべて足し込むので大きな倍率抵抗になり、高い電圧まで測れる、という仕組みです。

ここで、電圧計を選ぶうえで最も大切な指標である感度(sensitivity)を導入します。感度とは、電圧計が「1 Vのレンジあたり、何Ωの内部抵抗を持つか」を表す量で、単位は Ω/V です。なぜこの量が重要なのかは次の節で明らかになりますが、まず定義を押さえましょう。

電圧計がフルスケールで振れるときに流れる電流を $I_{fs}$ とします。あるレンジ電圧 $V$ でフルスケールになるとき、そのレンジでの内部抵抗は $R_V = V / I_{fs}$ です。したがって感度 $S$ は

$$ \begin{equation} S = \frac{R_V}{V} = \frac{1}{I_{fs}} \quad [\Omega/\text{V}] \end{equation} $$

と、フルスケール電流の逆数そのものになります。フルスケール電流が小さい計器ほど感度が高い、というわけです。たとえば $I_{fs} = 50\,\mu\text{A}$ の計器なら $S = 1 / (50 \times 10^{-6}) = 20{,}000\,\Omega/\text{V}$、つまり「20 kΩ/V」です。これはアナログテスターのカタログでよく見る数字です。あるレンジの内部抵抗は、感度にレンジ電圧を掛けるだけで

$$ \begin{equation} R_V = S \times V \end{equation} $$

と求まります。20 kΩ/Vのテスターを10 Vレンジで使えば、内部抵抗は $20{,}000 \times 10 = 200\,\text{k}\Omega$ です。感度・レンジ・内部抵抗の関係を図にしました。

電圧計の感度と内部抵抗の関係グラフ

同じレンジでも、感度が高い電圧計ほど内部抵抗が大きくなることがわかります。1 kΩ/Vの安価なテスターと100 kΩ/Vの高感度計器では、内部抵抗が100倍も違います。

なぜフルスケール電流の逆数が「感度」と呼ばれるのかも押さえておきましょう。感度が高い($I_{fs}$ が小さい)計器は、ごくわずかな電流でも針が振れます。電圧計としては、その小さな電流で目的の電圧に達するように大きな倍率抵抗を直列に入れることになり、結果として内部抵抗が大きくなります。内部抵抗が大きいほど回路から吸い取る電流が少なくなるので、回路を乱しにくい良い電圧計になる、という連鎖です。「内部抵抗が大きいと、なぜ良い電圧計なのか」——この問いに答えるのが、次の負荷効果の話です。ここからが、この記事のもう一つの主役になります。

負荷効果 — 測ること自体が測定値を変える

理想の計器は「回路に何の影響も与えず、値だけを読み取る」ものです。理想の電流計は抵抗ゼロ(つないでも電流が変わらない)、理想の電圧計は抵抗無限大(つないでも電流を吸わない)であるべきです。しかし現実の計器は有限の内部抵抗を持つため、回路につないだ瞬間に回路の状態を変えてしまいます。この現象が負荷効果です。

体温計にたとえると分かりやすいかもしれません。冷たい体温計を口に入れると、ほんのわずかですが口の中の熱が体温計に奪われ、本当の体温より少し低い値が出ます。計器も同じで、回路の「電気的な状態」を測るために回路とエネルギーをやり取りせざるを得ず、その分だけ測定対象を乱します。この乱しが小さくなるように計器を作る(電流計は抵抗を小さく、電圧計は抵抗を大きく)のが設計の要ですが、乱しをゼロにはできません。だからこそ、どれだけ乱すのかを式で見積もれることが大切です。まず電流計から見ましょう。

電流計を挿入したときの誤差

電流を測るには、電流計を回路に直列に割り込ませます。ところが電流計にも内部抵抗 $R_A$ があるので、割り込ませた分だけ回路全体の抵抗が増え、流れる電流が減ってしまいます。つまり、測った電流は本当に流れていたはずの電流より必ず小さくなります。

回路の抵抗を $R$、電源電圧を $V$ とすると、電流計を入れる前の真の電流は $I_{true} = V / R$、電流計(抵抗 $R_A$)を直列に入れた後に実際に流れる電流は次のようになります。

$$ I_{meas} = \frac{V}{R + R_A} $$

相対誤差を計算しましょう。$I_{meas}$ と $I_{true}$ の比を取ると $V$ が消えて、

$$ \frac{I_{meas}}{I_{true}} = \frac{V/(R+R_A)}{V/R} = \frac{R}{R + R_A} $$

となります。したがって相対誤差は

$$ \begin{equation} \varepsilon_A = \frac{I_{meas} – I_{true}}{I_{true}} = \frac{R}{R + R_A} – 1 = -\frac{R_A}{R + R_A} \end{equation} $$

です。マイナス符号は「必ず小さめに読む」ことを表します。誤差を小さくするには、回路の抵抗 $R$ に比べて電流計の内部抵抗 $R_A$ を十分小さくすればよい、と式が教えてくれます。図で確認しましょう。

電流計挿入による負荷効果の誤差カーブ

回路抵抗100 Ωに対し、内部抵抗1 Ωの電流計なら誤差は約−0.99%ですが、50 Ωもの内部抵抗があると約−33%と大きく狂います。良い電流計の内部抵抗が「できるだけ小さい」ことを目指す理由が、この式と図から腹落ちします。では電圧計はどうでしょうか。

電圧計を並列接続したときの誤差

電圧を測るには、電圧計を測定対象に並列につなぎます。すると電圧計に余計な電流が流れ込み、その分だけ測定対象の電圧が下がってしまいます。今度は測定対象がどれだけ「弱い電源」か——つまり内部抵抗が大きいか——が効いてきます。これをきれいに扱うために、テブナンの定理を使いましょう。

どんな複雑な回路でも、測定する2端子から見れば、電源 $V_{th}$(開放電圧=真に測りたい電圧)と直列内部抵抗 $R_{th}$ の組に等価変換できます。この2端子に内部抵抗 $R_V$ の電圧計をつなぐと、$R_{th}$ と $R_V$ の分圧回路になります。電圧計が読む値は

$$ V_{meas} = V_{th} \cdot \frac{R_V}{R_{th} + R_V} $$

です。真に測りたいのは開放電圧 $V_{th}$ なので、相対誤差は

$$ \frac{V_{meas}}{V_{th}} = \frac{R_V}{R_{th} + R_V} $$

より

$$ \begin{equation} \varepsilon_V = \frac{V_{meas} – V_{th}}{V_{th}} = \frac{R_V}{R_{th} + R_V} – 1 = -\frac{R_{th}}{R_{th} + R_V} \end{equation} $$

となります。電流計の式(13)と見比べてください。$R$ と $R_A$ が、$R_{th}$ と $R_V$ に対応しつつ、分子と分母での役割が入れ替わっています。ここにも双対性が現れています。電圧計の誤差を小さくするには、回路の内部抵抗 $R_{th}$ に比べて電圧計の内部抵抗 $R_V$ を十分大きくすればよい、とわかります。図で見ましょう。

電圧計の内部抵抗と負荷効果誤差の関係グラフ

回路の内部抵抗 $R_{th}$ が大きい(=高抵抗回路、青→赤→緑の順に大きい)ほど、同じ電圧計でも誤差が大きくなることがわかります。逆に言えば、内部抵抗の大きい電圧計(グラフの右側)ほど、どんな回路でも誤差が小さい。感度20 kΩ/Vの電圧計が良い電圧計とされる理由が、ここでようやくつながります。この負荷効果を、身近な「安物テスター」の例で定量的に再現してみましょう。

安物テスターで高抵抗回路を測ると値が狂う

「安物のテスターで測ったら、電圧がぜんぜん違う値になった」——これは負荷効果の典型例です。定量的に再現してみます。

12 Vの電源を、1 MΩの抵抗2本で分圧する回路を考えます。中点の電圧は、理想的にはちょうど半分の6 Vのはずです。この中点を、内部抵抗の異なる3種類のテスターで測ってみます。テブナンの視点では、この分圧回路を中点から見た内部抵抗は $R_{th} = 1\,\text{M}\Omega \parallel 1\,\text{M}\Omega = 500\,\text{k}\Omega$ と非常に大きく、負荷効果が出やすい回路です。

高抵抗分圧回路をテスターで測ったときの測定値の違い

結果は衝撃的です。真値6 Vに対し、安物(1 kΩ/Vを10 Vレンジで使用=内部抵抗10 kΩ)はわずか0.12 Vしか示さず、ほぼ測定になっていません。中級(20 kΩ/V、内部抵抗200 kΩ)でも1.71 Vと大きくずれます。デジタルテスター(内部抵抗10 MΩ)でようやく5.71 Vと真値に近づきます。回路の内部抵抗500 kΩに対して電圧計の内部抵抗が同程度かそれ以下だと、測定が壊滅的に狂うことが実感できます。この計算は次のPythonの節で詳しく再現します。

原理がわかったところで、応用として「電流計と電圧計を同時に使って未知の抵抗を測る」場面を考えます。ここでは2つの計器の負荷効果が同時に絡んでくるため、結線方法によって誤差の出方が変わります。

電流計・電圧計法による抵抗測定 — 2つの結線と系統誤差

未知の抵抗 $R_x$ を、電流計と電圧計を使って測ることを考えます。オームの法則 $R_x = V / I$ から、電圧と電流を測れば抵抗が求まる、という発想です。ところが、電流計と電圧計をどう配置するかで、2通りの結線が生まれ、それぞれ違う系統誤差を持ちます。

抵抗測定の2つの結線方法の回路図

結線A(電圧計を負荷側)では、電圧計を $R_x$ に直接並列につなぎ、電流計はその外側に置きます。このとき電圧計は $R_x$ の正しい電圧を読みますが、電流計は「$R_x$ を流れる電流」と「電圧計を流れる電流」の合計を読んでしまいます。測定値 $R_{meas} = V/I$ は、$R_x$ と電圧計の内部抵抗 $R_V$ の並列合成になります。

$$ \begin{equation} R_{meas}^{(A)} = \frac{V}{I} = R_x \parallel R_V = \frac{R_x R_V}{R_x + R_V} < R_x \end{equation} $$

必ず真値より小さく出ます。誤差の原因は電圧計が吸う電流なので、$R_x$ が $R_V$ に比べて十分小さいとき(低抵抗測定)に誤差が小さくなります。真値を取り戻す補正式は、式(16)を $R_x$ について解いて

$$ \begin{equation} R_x = \frac{R_{meas} R_V}{R_V – R_{meas}} \end{equation} $$

です。

結線B(電圧計を電源側)では、電流計を $R_x$ に直列につなぎ、電圧計はその両方の外側に置きます。このとき電流計は $R_x$ を流れる正しい電流を読みますが、電圧計は「$R_x$ の電圧」と「電流計の電圧降下」の合計を読んでしまいます。測定値は $R_x$ と電流計の内部抵抗 $R_A$ の直列和になります。

$$ \begin{equation} R_{meas}^{(B)} = \frac{V}{I} = R_x + R_A > R_x \end{equation} $$

こちらは必ず真値より大きく出ます。誤差の原因は電流計の電圧降下なので、$R_x$ が $R_A$ に比べて十分大きいとき(高抵抗測定)に誤差が小さくなります。

2つの結線の使い分けは、「どちらの計器の負荷効果を無視できるか」で決まると考えるとすっきりします。結線Aは電圧計の電流の吸い込みが誤差源なので、その電流が $R_x$ を流れる電流に比べて無視できる低抵抗のときに正確です。結線Bは電流計の電圧降下が誤差源なので、その降下が $R_x$ の電圧に比べて無視できる高抵抗のときに正確です。どちらの結線でも、補正式を使えば計器の内部抵抗が分かっている限り真値を取り戻せます。結線Bの補正式は単純に

$$ \begin{equation} R_x = R_{meas} – R_A \end{equation} $$

です。ではどこで両者の優劣が入れ替わるのでしょうか。結線Aの相対誤差の大きさは近似的に $R_x / R_V$、結線Bは $R_A / R_x$ に比例します。両者が等しくなる境界は $R_x / R_V = R_A / R_x$、すなわち

$$ \begin{equation} R_x = \sqrt{R_A \, R_V} \end{equation} $$

です。この幾何平均より小さい抵抗なら結線A、大きい抵抗なら結線Bが有利、というきれいな判定基準になります。この交点をPythonで確かめましょう。

Pythonで確かめる

ここまでの理論を、Pythonでまとめて検証します。まず分流器・倍率器の設計計算、アイルトン分流器のタップ抵抗、そして負荷効果の各誤差を計算します。matplotlibのグラフは記事に埋め込んだ図と同じものを生成します。

最初に、分流器・倍率器の基本的な設計計算を確認します。

import numpy as np

# --- 分流器の設計 ---
r_A = 5.0  # 電流計の内部抵抗 [Ω]
for m in [2, 5, 10]:
    Rs = r_A / (m - 1)          # 式(5)
    print(f"分流器 倍率{m:>3}倍 → Rs = {Rs:.4f} Ω")

# --- 倍率器の設計 ---
r_V = 1000.0  # 電圧計の内部抵抗 [Ω]
for m in [5, 10, 50]:
    Rm = r_V * (m - 1)          # 式(10)
    print(f"倍率器 倍率{m:>3}倍 → Rm = {Rm/1000:.1f} kΩ")

このコードを実行すると、分流器は倍率10倍で $R_s \approx 0.556\,\Omega$、倍率器は倍率50倍で $R_m = 49\,\text{k}\Omega$ と出力されます。分流器は倍率を上げるほど抵抗が小さく、倍率器は倍率に比例して抵抗が大きくなるという、式(5)と式(10)の対照的な振る舞いが数値でも確認できます。

次に、アイルトン分流器の各タップの分流抵抗を式(7)で設計します。

# --- アイルトン分流器の設計 ---
r = 100.0                     # 計器の内部抵抗 [Ω]
ranges = {"×2": 2, "×10": 10, "×100": 100}  # 各レンジの倍率
RT = r / (min(ranges.values()) - 1)  # 最小倍率レンジから総抵抗を決める
# ↑ 最小倍率×2のとき Rsh=RT となるよう総抵抗を設定
print(f"総抵抗 RT = {RT:.2f} Ω")
for name, m in ranges.items():
    Rsh = (r + RT) / m        # 式(7): そのタップでの分流抵抗
    Rse = RT - Rsh            # 計器に直列に入る分
    print(f"レンジ{name:>5}(倍率{m:>3}) : 分流Rsh={Rsh:6.2f}Ω, 直列Rse={Rse:6.2f}Ω")

この出力から、倍率が大きいレンジ(×100)ほど分流抵抗 $R_{sh}$ が小さく、計器に直列に入る抵抗 $R_{se}$ が大きくなることがわかります。総抵抗 $R_T$ は一定に保たれたまま、タップ位置だけで倍率を切り替えられる——これがアイルトン分流器が切り替え時にも計器を保護できる仕組みそのものです。

続いて、負荷効果の中心である「安物テスターで高抵抗回路を測る」実験を再現します。

import matplotlib, matplotlib.pyplot as plt
for cand in ["Hiragino Sans", "Yu Gothic", "Noto Sans CJK JP", "IPAexGothic", "Meiryo"]:
    if any(cand == f.name for f in matplotlib.font_manager.fontManager.ttflist):
        plt.rcParams["font.family"] = cand
        break
plt.rcParams["axes.unicode_minus"] = False

# 12V を 1MΩ + 1MΩ で分圧、中点(真値6V)を測る
Vs, R1, R2 = 12.0, 1e6, 1e6
V_true = Vs * R2 / (R1 + R2)
testers = {"安物(RV=10kΩ)": 10e3, "中級(RV=200kΩ)": 200e3, "デジタル(RV=10MΩ)": 10e6}

for name, RV in testers.items():
    Rpar = R2 * RV / (R2 + RV)          # R2 と電圧計の並列
    V_meas = Vs * Rpar / (R1 + Rpar)    # 分圧則で測定値
    err = (V_meas - V_true) / V_true * 100
    print(f"{name:20s}: 測定値 {V_meas:5.2f} V (誤差 {err:6.1f} %)")

実行すると、安物テスター(内部抵抗10 kΩ)では測定値が0.12 V・誤差−98%と壊滅的に狂い、デジタルテスター(10 MΩ)では5.71 V・誤差−4.8%まで改善します。真値6 Vに対するこの差は、式(15)の負荷効果そのものです。回路の内部抵抗(この場合500 kΩ)に対して電圧計の内部抵抗が同程度以下だと、測定が成り立たないことが数値ではっきりします。

最後に、抵抗測定の2結線の誤差が、抵抗値によってどう入れ替わるかを確認します。

# 電流計 RA=2Ω, 電圧計 RV=50kΩ
RA, RV = 2.0, 50e3
Rx = np.logspace(-1, 6, 8)  # 0.1Ω 〜 1MΩ

print(f"{'Rx[Ω]':>10} {'結線A誤差[%]':>12} {'結線B誤差[%]':>12}")
for rx in Rx:
    errA = (rx * RV / (rx + RV) - rx) / rx * 100   # 式(16)
    errB = (rx + RA - rx) / rx * 100               # 式(18)
    print(f"{rx:>10.2f} {errA:>12.3f} {errB:>12.3f}")

R_cross = np.sqrt(RA * RV)   # 式(20) 有利な結線が入れ替わる境界
print(f"\n交点 √(RA·RV) = {R_cross:.1f} Ω")

この表から、低抵抗($R_x$ が小さい)では結線Bの誤差が大きく結線Aが有利、高抵抗では逆に結線Aの誤差が大きく結線Bが有利になることが読み取れます。両者の誤差が等しくなる境界は $\sqrt{R_A R_V} = \sqrt{2 \times 50000} \approx 316\,\Omega$ で、式(20)の予測と一致します。これをグラフにすると、次のように交点で2本の誤差曲線が交差します。

2つの結線方法の測定誤差の比較グラフ

赤(結線A)は高抵抗側で急に誤差が増え、青(結線B)は低抵抗側で急に誤差が増えます。交点316 Ωを境に有利な結線が入れ替わる様子が一目でわかります。実際の抵抗測定では、測りたい抵抗の大きさをざっと見積もり、この境界と比べて結線を選ぶのが定石です。

まとめ

本記事では、電流計・電圧計の測定範囲を広げる分流器・倍率器と、計器の内部抵抗がもたらす負荷効果について解説しました。

  • 分流器は計器に並列に抵抗をつなぎ、倍率は $m = 1 + r/R_s$。倍率を上げるほど分流抵抗は小さくする
  • 倍率器は計器に直列に抵抗をつなぎ、倍率は $m = 1 + R_m/r$。倍率に比例して抵抗を大きくする。分流器とは並列・直列の双対関係にある
  • アイルトン分流器は直列抵抗のタップ切り替えで、計器を保護しながら多レンジを実現する
  • 感度(Ω/V)はフルスケール電流の逆数で、$R_V = S \times V$ で内部抵抗が決まる
  • 負荷効果は、電流計挿入で $-R_A/(R+R_A)$、電圧計並列で $-R_{th}/(R_{th}+R_V)$ の系統誤差を生む。高抵抗回路を低感度テスターで測ると値が大きく狂う
  • 抵抗測定の2結線は、$\sqrt{R_A R_V}$ を境に有利な結線が入れ替わる

これらの理論は、テブナン等価回路と分圧・分流の考え方さえ押さえれば、すべて自分で導けます。計器を「回路をわずかに変えてしまう素子」として扱う視点は、センサ回路の設計やインピーダンス整合の理解にも直結します。なお、分流器・倍率器と内部抵抗・負荷効果は、電気系の資格試験(第一級陸上無線技術士の「無線工学の基礎」など)でも頻出のテーマです。式の導出まで理解しておくと、数値が変わっても迷わず対応できます。

次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。