カルマンフィルタ 等のアルゴリズムでは、事後分布を事前分布と尤度で更新するような場合があるが、ガウス関数(正規分布)と仮定された事前分布と、同様にガウス関数で表現される尤度を掛け算すると、その関数の形状は正規分布になるのでしょうか?
今回はその動作を確認してみます。
ガウス関数同士の積を考える
例えば、あるクラスにおける女子の身長の分布を$g_1$、男子の身長の分布を$g_2$とし、それぞれ下記の正規分布に従うとします。
g1 ∼ \mathcal{N}(155, 10) \\ g2 ∼ \mathcal{N}(172, 8)
この時、これらの2つのガウス分布の積は、この積の分布$g_1 g_2$はどのなるでしょうか。
実際にプロットしてみるとこのようになり、ガウス分布のような形状になります。
例えば、ガウス関数以外の$sin$や$cos$のような三角関数を2つ掛け合わせると、綺麗な三角関数にはならず、全く違う関数系になるのにも関わらず、ガウス関数を2つ掛け合わせると、このような形になるのは覚えておくとよいでしょう。
(参考) 三角関数同士の掛け合わせ
三角関数の場合、位相も周期も違う関数を掛け合わせた場合、その周期は全く三角関数とは異なるものになります。
例えば、$sin(1.2x)$と$cos(1.5x)$を掛け合わせると、このようになり、全く三角関数とは違う関数系ができます。
ガウス分布の積における公式の整理
ここで、ガウス分布の積についての定式化をしておきます。
今回、独立な2つの確率変数$X_1$, $X_2$を考え、その確率分布が下記にような正規分布に従っているとしま。
X_1 ∼ \mathcal{N} (μ_1, \sigma_1^2) \\ X_2 ∼ \mathcal{N} (μ_2, \sigma_2^2) \\
その時、これらの2つのガウス分布の積は、下記のような平均$μ$、分散$\sigma$のガウス関数になります。
μ = \frac{\sigma_1^2μ_2 + \sigma_2^2μ_1 }{\sigma_1^2+ \sigma_2^2} \\ \\ \sigma^2 = \frac{\sigma_1^2 \sigma_2^2 }{\sigma_1^2+ \sigma_2^2}
一方でここで注意して欲しいのは、2つのガウス分布を掛け合わせると、上記の平均$μ$、分散$\sigma$に従う、ガウス関数の形状にはなるものの、ガウス分布にならないということに注意してください。
ガウス分布は、その下側面積が1になるように正規化されていますが、ガウス関数は、形状はガウス分布と同じ釣鐘状の形をしていますが、下側面積が1になりません。
上記の公式の証明
直接、2つの正規分布の式を掛け合わせて係数を整理しても証明できますし、ベイズ則を使うことでも比較的簡単に証明をすることができます。