pH測定用のガラス電極は、出力インピーダンスが 100 MΩ を超えることも珍しくありません。この電極を、入力抵抗 10 kΩ のごく普通の増幅回路につないだらどうなるでしょうか。答えは残酷で、信号は $10\,\text{k}/(100\,\text{M} + 10\,\text{k}) = 0.0001$ 倍、つまり 1 万分の 1 に痩せてしまいます。電極が正しく 59 mV/pH を出していても、増幅器の入り口に届くのは 6 µV です。これは回路のノイズに埋もれます。
「信号を測ろうとした瞬間に、測る行為そのものが信号を壊してしまう」— この問題を、部品を1個も追加せず、オペアンプの結線を変えるだけで解決するのが非反転増幅回路(non-inverting amplifier) です。そして利得を 1 に落とした特別な場合が、バッファとして至るところで使われるボルテージフォロワ(voltage follower) です。
この回路を理解しておくと、次のような場面で設計の勘所が一気に見えるようになります。
- センサフロントエンド: ひずみゲージ、圧電素子、フォトダイオード、熱電対、ガラス電極といった「電圧は出るが電流は出せない」信号源を、負荷をかけずに受け取る
- ADCドライバ: 逐次比較型ADCのサンプリング容量は、変換のたびにアンプから瞬間的に大きな電流を引き抜きます。出力インピーダンスが数 mΩ まで下がったバッファでこれを吸収します
- 基準電圧のバッファリング: 抵抗分圧やバンドギャップリファレンスの出力を、電圧を変えずに電流駆動能力だけ増強する
- アクティブフィルタ: サレン・キー型ローパスフィルタの中核は、まさにこの非反転増幅回路です
一方で、非反転構成には反転構成には無い固有の弱点もあります。入力信号がそのまま「同相入力電圧」になるため、CMRR(同相除去比)と同相入力範囲が、そのまま増幅精度の上限を決めてしまうのです。この記事では、利点だけでなくこの制約も含めて、式で追いかけます。
本記事の内容
- 非反転増幅回路の直感的な理解 — 「分圧器を逆回しする」という見方
- 帰還率 $\beta = R_g/(R_g+R_f)$ の定義と、閉ループ利得 $A/(1+A\beta) \to 1+R_f/R_g$ の導出
- ループ利得 $T = A\beta$ が利得誤差・帯域・インピーダンスをすべて支配することの証明
- 小信号等価回路による入力インピーダンス $(1+A\beta)R_d$ の計算
- 同じく出力インピーダンス $R_o/(1+A\beta)$ の計算
- ボルテージフォロワ($\beta = 1$)がバッファとして最強である理由と、その代償
- 反転構成との比較 — 同相入力電圧の違いが CMRR・同相入力範囲・歪みに与える影響
- 抵抗値の選び方、ノイズゲイン、入力容量と位相余裕、スルーレートといった実務上の制約
- Python: 反転/非反転の入力インピーダンスと帯域の比較、フォロワによる分圧誤差の解消、CMRR有限時の誤差電圧の見積もり
前提知識
この記事を読む前に、以下の記事を読んでおくと理解が深まります。
非反転増幅回路とは
まず、これから式で追いかける回路の全体像を眺めておきましょう。

この図の要点は3つです。第一に、入力 $V_{\text{in}}$ は抵抗を1本も通さずに + 端子へ直結されており、信号源から見て接地へ落ちる経路がありません。第二に、$R_f$ と $R_g$ が作っているのは単なる分圧器で、出力の $\beta = R_g/(R_g+R_f)$ 倍が − 端子に戻ります。第三に、オペアンプは2つの入力端子の差がゼロになるまで出力を振るので、結果として「分圧器の中点が入力電圧に一致する」状態に落ち着きます。この3点だけで、以下の議論はすべて説明できます。
分圧器を「逆回し」する
まず、抵抗分圧器を思い浮かべてください。$R_f$ と $R_g$ を直列にして、上端に電圧 $V_{\text{out}}$ を、下端を接地します。中点の電圧は当然
$$ V_{\text{mid}} = \frac{R_g}{R_g + R_f} V_{\text{out}} $$
です。$R_f = 9\,\text{k}\Omega$, $R_g = 1\,\text{k}\Omega$ なら中点は上端の 1/10 になります。ここまでは中学レベルの話です。
ここで発想を逆転させます。「中点の電圧を指定したら、上端の電圧はいくらになるべきか」 と問うのです。中点を 1 V にしたければ上端は 10 V であるべきです。非反転増幅回路がやっているのは、まさにこの逆問題を「解く」ことです。オペアンプという強力な調整役に、「分圧器の中点が入力電圧 $V_{\text{in}}$ とぴったり一致するように、上端の電圧を必死に調整せよ」と命じる。すると上端の電圧、すなわち出力は自動的に $V_{\text{in}}$ の 10 倍になります。
分圧器は電圧を「減らす」ことしかできませんが、その減らす比率を負帰還ループの中に埋め込んで逆回しすると、増幅器になる。これが非反転増幅回路の本質です。そして重要なのは、利得を決めているのはオペアンプではなく抵抗2本の比だという点です。オペアンプの利得は個体差が大きく、温度でも変わり、周波数でも変わりますが、抵抗比は安定しています。負帰還が「不安定な大きな利得」を「安定した小さな利得」に両替してくれるわけです。

左右で回路は完全に同じもので、違うのは「どちらの端の電圧を先に決めるか」だけです。(a) では上端 10 V を与えて中点 1 V が決まりますが、(b) では中点を 1 V に固定したいという要求から上端 10 V が逆算されます。同じ $\beta = 0.1$ の分圧器が、使う向きを変えるだけで 0.1 倍の減衰器にも 10 倍の増幅器にもなる、というのがこの図の主張です。
回路構成と3つの約束
非反転増幅回路の結線は次の3点だけです。
- 入力信号 $V_{\text{in}}$ を、オペアンプの非反転入力端子(+ 端子)に直接つなぐ
- 出力 $V_{\text{out}}$ から $R_f$ を通して反転入力端子(− 端子) に帰還させる
- − 端子から $R_g$ を通して接地する
反転増幅回路では入力信号を $R_g$ を通して − 端子に入れましたが、非反転では + 端子に直結します。この「直結」が、後で見るように途方もなく高い入力インピーダンスを生みます。信号源から見ると、その先にあるのはオペアンプの入力端子だけで、抵抗を通って接地に落ちる経路が存在しないからです。
理想オペアンプの2大原則を復習しておきましょう。
- バーチャルショート(仮想短絡): 負帰還がかかっている限り、2つの入力端子の電位差はほぼゼロになる。$V_P \simeq V_N$
- 入力電流ゼロ: 入力端子には電流が流れ込まない
この2つを使えば、利得はほとんど暗算で出ます。次節でそれを確認したうえで、「ほとんど」ではなく「厳密に」何が起きているのかを、有限利得 $A$ を残したまま追いかけます。
帰還率 $\beta$ と閉ループ利得の導出
帰還率の定義
負帰還回路を議論するときの主役は、増幅器の利得 $A$ でも抵抗値そのものでもなく、帰還率(feedback factor) $\beta$ です。$\beta$ は「出力のうち、何割が入力側に戻ってくるか」を表す量で、非反転増幅回路では帰還網が $R_f$ と $R_g$ の分圧器そのものなので、
$$ \begin{equation} \beta \equiv \frac{V_N}{V_{\text{out}}} = \frac{R_g}{R_g + R_f} \end{equation} $$
と定義されます。$R_f = 9\,\text{k}\Omega$, $R_g = 1\,\text{k}\Omega$ なら $\beta = 0.1$ です。この $\beta$ は 0 から 1 の間の値をとり、$\beta = 1$($R_f = 0$ または $R_g = \infty$)が「出力を丸ごと戻す」完全帰還、すなわちボルテージフォロワに対応します。
$\beta$ を導入した瞬間に、話は非常に見通しがよくなります。以下で見るように、閉ループ利得・利得誤差・帯域・入力インピーダンス・出力インピーダンスのすべてが、$\beta$ とオペアンプの裸利得 $A$ の積 $T = A\beta$ というたった1つの量で書けてしまうからです。

回路図をブロック線図に描き直すと、非反転増幅回路が制御工学の教科書に出てくる標準的な負帰還ループそのものであることがわかります。前向き経路がオペアンプの裸利得 $A$、帰還経路が抵抗分圧器 $\beta$、そして入力の加算点で $V_{\text{in}} – \beta V_{\text{out}}$ が作られます。図の下に並べた4つの式が示すように、精度も帯域もインピーダンスも、このループを一周したときの利得 $T = A\beta$ ただ1つで決まります。
理想オペアンプでの導出
まず理想オペアンプ($A = \infty$、入力電流ゼロ)で計算します。− 端子の電位 $V_N$ は、$R_f$ と $R_g$ による分圧です。ここで「入力電流ゼロ」の原則が効いています。− 端子に電流が流れ込まないので、$R_f$ に流れる電流と $R_g$ に流れる電流は等しく、単純な分圧器として扱えます。
$$ V_N = \frac{R_g}{R_g + R_f} V_{\text{out}} = \beta V_{\text{out}} $$
一方、バーチャルショートより $V_N = V_P = V_{\text{in}}$ です。この2式を等置すると、
$$ V_{\text{in}} = \beta V_{\text{out}} $$
したがって閉ループ利得 $G$ は $\beta$ の逆数になります。
$$ \begin{equation} G = \frac{V_{\text{out}}}{V_{\text{in}}} = \frac{1}{\beta} = \frac{R_g + R_f}{R_g} = 1 + \frac{R_f}{R_g} \end{equation} $$
有名な $1 + R_f/R_g$ が出ました。注目したいのは「1 +」の由来です。分子の $R_g + R_f$ を $R_g$ で割ったときの $R_g/R_g = 1$ がこれに当たります。物理的には「入力電圧がそのまま出力に現れる分(バッファとしての働き)」に、「$R_f$ による増幅分」が上乗せされている、と読めます。だからこそ $R_f = 0$(あるいは $R_g \to \infty$)にしても利得は 0 にならず、1 で下げ止まります。非反転増幅回路は 1 より小さい利得を作れないという重要な制約が、この式から直接読み取れるのです。減衰が必要なら、入力に別途分圧器を置くか、反転構成を使う必要があります。
有限利得 $A$ での厳密な導出
現実のオペアンプの直流裸利得 $A$ は無限大ではなく、汎用品で $10^5$(100 dB)程度です。バーチャルショートを使わずに、$A$ を残したまま解いてみましょう。
オペアンプの出力は、2入力の差にオープンループ利得を掛けたものです。
$$ V_{\text{out}} = A (V_P – V_N) $$
ここに $V_P = V_{\text{in}}$ と $V_N = \beta V_{\text{out}}$ を代入します。帰還網の分圧比は、オペアンプの入力電流がゼロである限り $A$ の値によらず成り立つので、そのまま使えます。
$$ V_{\text{out}} = A (V_{\text{in}} – \beta V_{\text{out}}) $$
$V_{\text{out}}$ を含む項を左辺に集めます。右辺を展開して $-A\beta V_{\text{out}}$ を移項すると、
$$ V_{\text{out}} + A\beta V_{\text{out}} = A V_{\text{in}} $$
左辺を $V_{\text{out}}$ でくくると、負帰還理論でおなじみの形が現れます。
$$ (1 + A\beta) V_{\text{out}} = A V_{\text{in}} $$
両辺を $(1+A\beta)$ で割って、閉ループ利得の厳密式が得られます。
$$ \begin{equation} A_{\text{cl}} = \frac{V_{\text{out}}}{V_{\text{in}}} = \frac{A}{1 + A\beta} \end{equation} $$
この式をこのまま眺めても $1 + R_f/R_g$ との関係が見えにくいので、分子分母を $A\beta$ で整理します。分子と分母を $A\beta$ で割ると、
$$ A_{\text{cl}} = \frac{A}{1+A\beta} = \frac{1}{\beta} \cdot \frac{A\beta}{1 + A\beta} $$
ここでループ利得(loop gain) $T \equiv A\beta$ を導入すると、極めて示唆的な形になります。
$$ \begin{equation} A_{\text{cl}} = \underbrace{\frac{1}{\beta}}_{\text{理想利得}} \cdot \underbrace{\frac{T}{1+T}}_{\text{現実による割引}} \end{equation} $$
閉ループ利得は「抵抗比で決まる理想利得 $1/\beta$」に「$T/(1+T)$ という 1 よりわずかに小さい割引係数」を掛けたものだ、と読めます。$T \to \infty$ で割引係数は 1 に収束し、理想の $1 + R_f/R_g$ に一致します。
利得誤差はループ利得の逆数
割引がどれくらいなのかを定量化しましょう。理想利得からの相対誤差 $\epsilon$ は、
$$ \epsilon = \frac{A_{\text{cl}} – 1/\beta}{1/\beta} = \frac{T}{1+T} – 1 = -\frac{1}{1+T} $$
$$ \begin{equation} \epsilon = -\frac{1}{1 + T} \simeq -\frac{1}{T} \quad (T \gg 1) \end{equation} $$
利得誤差はループ利得の逆数。これが負帰還回路のいちばん実用的な指針です。0.01 % の利得精度が欲しければ $T \geq 10^4$(80 dB)が必要、0.1 % でよければ $T \geq 10^3$(60 dB)でよい、と即座に判断できます。
具体例で確かめましょう。$A = 10^5$、$G = 10$($\beta = 0.1$)なら $T = 10^4$、誤差は $-1/10001 = -0.0100\,\%$ です。実際の利得は 9.99900 になります。一方 $G = 1000$($\beta = 10^{-3}$)にすると $T = 100$ まで落ち、誤差は $-0.990\,\%$ にまで悪化します。高利得ほど精度が落ちるのは、帰還率が小さくなってループ利得が減るからです。1段で 1000 倍を狙うより、30 倍を2段重ねたほうが精度も帯域も有利になる理由がここにあります。

左のグラフは両対数軸で傾き $-1$ の直線になっており、$\epsilon \simeq -1/T$ が厳密に成り立っていることを示しています。0.01 % の精度が欲しければ $T = 10^4$、0.1 % でよければ $T = 10^3$ と、横軸から必要なループ利得を直読できます。右のグラフは $A_0 = 10^5$ に固定したまま設定利得 $G$ を変えたときの誤差で、$G$ が 1 → 1000 と3桁上がると誤差も 0.0010 % → 0.9901 % と3桁悪化します。利得を欲張ることは、そのまま精度を捨てることと同義だと読み取れます。
感度 — なぜオペアンプの個体差が消えるのか
もう一歩踏み込んで、「オペアンプの $A$ が 2 倍ばらついたら閉ループ利得は何 % 変わるか」を計算します。感度 $S$ を、$A$ の相対変化に対する $A_{\text{cl}}$ の相対変化の比として定義します。
$$ S \equiv \frac{dA_{\text{cl}}/A_{\text{cl}}}{dA/A} = \frac{dA_{\text{cl}}}{dA} \cdot \frac{A}{A_{\text{cl}}} $$
まず $A_{\text{cl}} = A/(1+A\beta)$ を $A$ で微分します。商の微分公式を使い、分子の微分が 1、分母の微分が $\beta$ であることに注意すると、
$$ \frac{dA_{\text{cl}}}{dA} = \frac{(1 + A\beta)\cdot 1 – A \cdot \beta}{(1+A\beta)^2} = \frac{1}{(1+A\beta)^2} $$
分子で $A\beta$ が綺麗に相殺されました。これを感度の式に代入し、$A/A_{\text{cl}} = 1 + A\beta$ を使うと、
$$ S = \frac{1}{(1+A\beta)^2} \cdot (1 + A\beta) = \frac{1}{1 + A\beta} = \frac{1}{1+T} $$
$$ \begin{equation} S = \frac{1}{1+T} \end{equation} $$
$T = 10^4$ なら、$A$ が 100 % 変動しても閉ループ利得の変動は 0.01 % です。オペアンプの $A$ は個体差・温度・電源電圧で数倍平気で変わりますが、負帰還がそれを $1/(1+T)$ に圧縮してくれます。負帰還とは、余った利得を精度に両替する仕組みだと言えます。

左のグラフでは、横軸のオペアンプ裸利得 $A$ を $10^3$ から $10^7$ まで4桁も振っています。それでも $\beta = 1$ のフォロワと $G = 10$ の曲線は 1.0 に張り付いたまま動きません。一方 $G = 1000$($\beta = 0.001$)の曲線だけは $A = 10^3$ で 0.5 まで落ちており、帰還率が小さいと裸利得のばらつきに耐えられないことがわかります。右のグラフは感度そのもので、$A_0 = 10^5$ の代表点で $S = 0.01\,\%$ — つまり裸利得が倍になっても閉ループ利得は 1 万分の 1 しか動きません。
ここまでで、直流での利得と精度が $T = A\beta$ で決まることがわかりました。しかしオペアンプの $A$ は周波数が上がると急速に落ちます。ということは $T$ も落ち、精度も落ちるはずです。次にこの周波数依存性を見ていきましょう。
ループ利得が決める周波数特性
1次ロールオフモデル
内部位相補償された汎用オペアンプの開ループ利得は、数十 Hz 程度にある1つの支配極でロールオフする1次系として、よく近似できます。
$$ A(s) = \frac{A_0}{1 + s/\omega_a} $$
$A_0$ は直流利得、$\omega_a$ は支配極の角周波数です。$\mu$A741 なら $A_0 \simeq 2\times 10^5$、$f_a \simeq 5$ Hz といった値です。この記事では $A_0 = 10^5$(100 dB)、GB積 10 MHz、すなわち $f_a = 10\,\text{MHz}/10^5 = 100$ Hz として話を進めます。
閉ループ利得の式に代入します。分母の $1 + \beta A(s)$ を通分して整理するのがポイントです。
$$ A_{\text{cl}}(s) = \frac{A(s)}{1 + \beta A(s)} = \frac{\dfrac{A_0}{1+s/\omega_a}}{1 + \dfrac{\beta A_0}{1+s/\omega_a}} $$
分子分母に $(1 + s/\omega_a)$ を掛けると、分数の入れ子が解けます。
$$ A_{\text{cl}}(s) = \frac{A_0}{1 + s/\omega_a + \beta A_0} = \frac{A_0}{(1 + \beta A_0)\left(1 + \dfrac{s}{\omega_a (1+\beta A_0)}\right)} $$
最後の変形では、分母の定数部分 $(1 + \beta A_0)$ でくくり出しました。この形は「直流利得 × 1次ローパス」の標準形です。
$$ \begin{equation} A_{\text{cl}}(s) = \frac{A_0/(1+T_0)}{1 + s/\omega_c}, \qquad \omega_c = \omega_a (1 + T_0), \quad T_0 = \beta A_0 \end{equation} $$
閉ループ帯域は、開ループ帯域を $(1+T_0)$ 倍に広げたものです。負帰還は利得を捨てる代わりに帯域を買っている、という交換が式に明示されています。
GB積一定則
直流利得と帯域の積を計算してみましょう。
$$ \frac{A_0}{1+T_0} \times \omega_a (1+T_0) = A_0 \omega_a = \text{GB積} $$
$(1+T_0)$ が完全に相殺し、閉ループ利得と帯域の積はオペアンプ固有の GB積に等しいという結論が出ます。GB積 10 MHz のオペアンプなら、利得 10 倍で 1 MHz、利得 100 倍で 100 kHz、利得 1000 倍で 10 kHz。「利得を欲張れば帯域が狭まる」という設計上の基本トレードオフは、ここから来ています。
$\beta$ を使って書き直すと、閉ループ帯域は
$$ f_c = \text{GB積} \times \beta $$
とも表せます。帯域を決めているのは信号利得ではなく帰還率です。この区別は、次に見る反転構成との比較で決定的な差を生みます。

左のグラフでは、$G$ = 1, 10, 100, 1000 の4本の水平線がすべて同じ開ループ利得の斜線にぶつかって折れています。○で示した遮断周波数は 10 MHz, 1 MHz, 100 kHz, 10 kHz と、利得を10倍にするたびにきっちり 1/10 になっており、GB積一定則が図として現れています。右のグラフはループ利得 $|T|$ そのもので、$T = 1$(0 dB)の破線を下回った時点で負帰還の恩恵が消えます。フォロワは 10 MHz まで恩恵が続きますが、$G = 1000$ では 10 kHz で尽きてしまう、という差が一目で読み取れます。
ここまでは、オペアンプを「利得 $A$ の理想電圧増幅器」として扱ってきました。しかし冒頭で挙げた「高抵抗センサを受ける」という目的を果たせるかどうかは、入力端子から中を覗いたときのインピーダンスにかかっています。次は小信号等価回路を持ち出して、これを厳密に計算します。
入力インピーダンスが跳ね上がる理由
小信号等価回路を立てる
理想オペアンプは入力インピーダンス無限大ですが、実際のオペアンプには有限の値があります。等価回路としては、
- 差動入力抵抗 $R_d$: + 端子と − 端子の間に入る抵抗。バイポーラ入力で 1〜10 MΩ、FET入力で $10^{12}\,\Omega$ 以上
- 同相入力抵抗 $R_{\text{cm}}$: 各入力端子から接地(あるいは電源) へ落ちる抵抗。$10^9\,\Omega$ 以上が典型
- 出力抵抗 $R_o$: 制御電圧源 $A V_d$ に直列に入る抵抗。数十〜数百 Ω
このうち、まず $R_d$ だけを考えます。信号源から流れ込む電流 $I_{\text{in}}$ は、$R_d$ を通って − 端子へ抜ける電流です。オームの法則より、
$$ I_{\text{in}} = \frac{V_P – V_N}{R_d} = \frac{V_d}{R_d} $$
ここで $V_d = V_P – V_N$ は差動入力電圧です。ポイントは、この $V_d$ が負帰還によって極端に小さく抑え込まれていることです。それを計算します。
$(1+T)$ 倍のブートストラップ効果
前節で求めた $V_{\text{out}} = A V_{\text{in}}/(1+A\beta)$ を使います。差動入力電圧は $V_d = V_{\text{out}}/A$ なので、
$$ V_d = \frac{1}{A}\cdot\frac{A V_{\text{in}}}{1 + A\beta} = \frac{V_{\text{in}}}{1 + A\beta} $$
同じことを別の道筋でも確認しておきましょう。$V_d = V_{\text{in}} – V_N = V_{\text{in}} – \beta V_{\text{out}}$ に $V_{\text{out}}$ を代入すると、
$$ V_d = V_{\text{in}} – \beta \cdot \frac{A V_{\text{in}}}{1+A\beta} = V_{\text{in}}\left(1 – \frac{A\beta}{1+A\beta}\right) = \frac{V_{\text{in}}}{1+A\beta} $$
括弧の中を通分すると $\{(1+A\beta) – A\beta\}/(1+A\beta) = 1/(1+A\beta)$ となり、確かに一致します。
この $V_d$ を電流の式に入れると、
$$ I_{\text{in}} = \frac{V_{\text{in}}}{(1 + A\beta) R_d} $$
したがって入力インピーダンスは、
$$ \begin{equation} Z_{\text{in}} = \frac{V_{\text{in}}}{I_{\text{in}}} = (1 + A\beta) R_d = (1+T) R_d \end{equation} $$

この図が言いたいのは「同じ 2 MΩ の抵抗でも、反対側が動くかどうかで見え方が 4 桁変わる」ということです。(a) のように反対側が接地されていれば両端に丸ごと 1 V がかかり、$Z_{\text{in}} = R_d = 2$ MΩ です。(b) では負帰還が − 端子を 0.9999 V まで追随させるので、$R_d$ の両端に残る電位差はわずか 0.1 mV。電流が $1/(1+T)$ に減った結果、入り口から見たインピーダンスは $(1+T)R_d = 20$ GΩ に化けます。
負帰還は入力インピーダンスをループ利得倍に押し上げます。 直感的な説明はこうです。$R_d$ の一方の端(+ 端子)に $V_{\text{in}}$ を加えると、負帰還が働いてもう一方の端(− 端子)も $V_{\text{in}}$ にほぼ等しい電圧まで持ち上げられます。抵抗の両端が同じ電圧なら電流は流れません。実際に残る電位差は $V_{\text{in}}/(1+T)$ だけです。この「抵抗の反対側を信号と一緒に持ち上げて電流を流させない」手法は、アナログ回路一般でブートストラップと呼ばれます。非反転増幅回路は、意識せずともブートストラップを実行しているのです。
現実の上限は同相入力抵抗
数値を入れます。$R_d = 2\,\text{M}\Omega$、$A_0 = 10^5$、$\beta = 0.1$ なら $T = 10^4$ で、
$$ Z_{\text{in}} = (1 + 10^4)\times 2\,\text{M}\Omega \simeq 2.0\times 10^{10}\,\Omega = 20\,\text{G}\Omega $$
20 GΩ という途方もない値です。ところが、ここに冷や水を浴びせるのが同相入力抵抗 $R_{\text{cm}}$ です。$R_{\text{cm}}$ は + 端子から接地へ直接落ちる抵抗であり、ブートストラップの恩恵を受けません(+ 端子の電圧は $V_{\text{in}}$ そのままで、接地側は動かないため)。したがって実効的な入力インピーダンスは両者の並列で、
$$ Z_{\text{in,total}} = (1+T) R_d \parallel R_{\text{cm}} $$
$R_{\text{cm}} = 1\,\text{G}\Omega$ なら、$20\,\text{G}\Omega \parallel 1\,\text{G}\Omega = 952\,\text{M}\Omega$。20 GΩ が 952 MΩ まで引き下げられました。十分に負帰還が効いた非反転増幅回路の入力インピーダンスは、$R_d$ ではなく $R_{\text{cm}}$(と入力容量)で決まる、というのが実務的な結論です。データシートで「入力抵抗」を見るときは、差動入力抵抗と同相入力抵抗のどちらが書かれているかを必ず確認してください。
さらに高周波では、$A(s)$ の低下とともに $T$ が下がるため $Z_{\text{in}}$ も下がります。加えて入力容量 $C_{\text{in}}$(数 pF)のインピーダンス $1/(\omega C_{\text{in}})$ が並列に入ってきます。1 MHz では 5 pF が 32 kΩ に相当するので、高周波での入力インピーダンスは容量性で決まると考えたほうがよいでしょう。

点線が $R_{\text{cm}}$ を無視した理論値 $(1+A\beta)R_d$ で、直流では 20 GΩ に達しています。しかし実効値(太い実線)は $R_{\text{cm}} = 1$ GΩ の一点鎖線に頭を押さえられ、低周波域でも 1 GΩ を超えられません。周波数を上げると 1 kHz で 666 MΩ、100 kHz で 20 MΩ、1 MHz で 2.8 MΩ と落ちていき、最終的に裸の $R_d = 2$ MΩ に漸近します。一方、反転構成(破線)は $R_g = 1$ kΩ で全周波数にわたって水平です。低周波では 6 桁の差がありますが、その差は周波数とともに縮んでいくことがわかります。
入力側で信号を痩せさせない仕組みがわかりました。次は出口側です。せっかく受け取った信号を、負荷につないだ瞬間に痩せさせてしまっては意味がありません。
出力インピーダンスが下がる理由
テスト電源法で計算する
出力インピーダンスは、「入力を殺して($V_{\text{in}} = 0$、つまり + 端子を接地)、出力にテスト電圧源 $V_x$ を当て、流れ込む電流 $I_x$ を測る」という手順で求めます。$Z_{\text{out}} = V_x/I_x$ です。
まず、テスト電圧が帰還網を通って − 端子に返ってくる分を計算します。分圧なので、
$$ V_N = \beta V_x $$
すると差動入力電圧は、+ 端子が接地されているので、
$$ V_d = V_P – V_N = 0 – \beta V_x = -\beta V_x $$
オペアンプ内部の制御電圧源は $A V_d = -A\beta V_x = -T V_x$ を出力します。テスト源から見ると、$V_x$ と $A V_d$ の間に出力抵抗 $R_o$ が挟まっている形なので、$R_o$ を流れる電流は
$$ I_{x1} = \frac{V_x – A V_d}{R_o} = \frac{V_x – (-T V_x)}{R_o} = \frac{(1+T)V_x}{R_o} $$
ここが仕掛けの核心です。テスト電圧を上げると、オペアンプは慌てて出力を逆方向に $T$ 倍で振ろうとします。その結果、$R_o$ の両端電圧が $(1+T)$ 倍に増幅され、$R_o$ が実効的に $1/(1+T)$ に見えるのです。
もう1つの電流経路として、帰還網 $R_f + R_g$ を通って接地に流れる分があります。
$$ I_{x2} = \frac{V_x}{R_f + R_g} $$
両者を足して逆数を取ると、出力インピーダンスは2つの並列になります。
$$ \begin{equation} Z_{\text{out}} = \frac{V_x}{I_{x1}+I_{x2}} = \frac{R_o}{1+T} \parallel (R_f + R_g) \end{equation} $$
通常 $R_o/(1+T)$ は mΩ オーダー、$R_f + R_g$ は kΩ オーダーなので、実用上は
$$ Z_{\text{out}} \simeq \frac{R_o}{1+T} $$
と考えて差し支えありません。
数値と限界
$R_o = 75\,\Omega$、$T = 10^4$ なら $Z_{\text{out}} = 75/10001 = 7.5\,\text{m}\Omega$。ボルテージフォロワ($\beta = 1$、$T = 10^5$)なら $0.75\,\text{m}\Omega$ です。ミリオーム級の出力インピーダンスは、太い銅線の抵抗に匹敵する水準です。

3本の曲線はいずれも低周波で平坦、100 Hz あたりから傾き $+1$ の直線に乗り、最後は裸の $R_o = 75\,\Omega$ に合流します。帰還率が大きいほど平坦部が低く(フォロワは 0.75 mΩ)、また立ち上がりが始まる周波数も高くなります。傾き $+1$ は $Z \propto \omega$、すなわちインダクタと同じ振る舞いで、ここに容量負荷をぶら下げると LC 共振が成立してリンギングや発振につながります。
ただしこの値も低周波に限った話である点に注意してください。$T$ は周波数とともに落ちるので、$Z_{\text{out}}$ は周波数に比例して上昇します。$\beta = 0.1$ の例では、1 kHz で 75 mΩ、10 kHz で 0.75 Ω、100 kHz で 7.5 Ω、1 MHz では 53 Ω と、ほぼ裸の $R_o$ に戻ります。出力インピーダンスが周波数とともに誘導性($Z \propto \omega$)に見えるのはこのためで、容量性負荷をつないだときにこの実効インダクタンスと負荷容量が共振し、リンギングや発振を引き起こします。ADCのサンプリング容量やケーブル容量を駆動するときに直列抵抗(アイソレーション抵抗)を入れるのは、この共振を減衰させるためです。
さて、ここまでの結果はすべて $T = A\beta$ の関数でした。ということは、$\beta$ を最大値の 1 にすればすべての性能が最良になるはずです。その極限が、ボルテージフォロワです。
ボルテージフォロワ — $\beta = 1$ の極限
完全帰還がもたらすもの
$R_f = 0$(出力と − 端子を直結)にすると、帰還率は
$$ \beta = \frac{R_g}{R_g + 0} = 1 $$
となり、出力の全部が入力に戻ってきます。閉ループ利得は $1/\beta = 1$、つまり出力は入力を「そのままなぞる(follow する)」だけです。$R_g$ は 0 でも $\infty$ でもよく、通常は $R_g$ を取り去って単に配線1本で結線します。
利得 1 の増幅器なんて何の役に立つのか、と思うかもしれません。答えは「電圧は変えないが、インピーダンスを変える」からです。$\beta = 1$ のとき $T = A$ となり、ループ利得はオペアンプが出せる最大値になります。その結果、
- 入力インピーダンス: $(1+A_0)R_d = 2\times 10^{11}\,\Omega$($R_{\text{cm}}$ 込みで 995 MΩ)
- 出力インピーダンス: $R_o/(1+A_0) = 0.75\,\text{m}\Omega$
- 帯域: $\text{GB積}\times\beta = 10$ MHz(オペアンプの限界いっぱい)
- 利得誤差: $-1/(1+A_0) = -0.001\,\%$
すべての指標が最良になります。入口は 1 GΩ 近く、出口は 1 mΩ 以下。インピーダンス比にして $10^{12}$ 倍の変換器です。これが「バッファ」「インピーダンス変換器」と呼ばれる所以で、電圧という情報を保ったまま、駆動能力だけを 1兆倍に増強していると言えます。
冒頭の問題を解く
冒頭のガラス電極の話に戻りましょう。冒頭の 100 MΩ ほど極端ではない、出力抵抗 $R_s = 100\,\text{k}\Omega$ の信号源(電極の中では低抵抗な部類、あるいは高抵抗の分圧器やサーミスタを想定してください)を、入力抵抗 $R_L = 10\,\text{k}\Omega$ の回路に直結すると、分圧比は
$$ \frac{R_L}{R_s + R_L} = \frac{10\,\text{k}}{110\,\text{k}} = 0.0909 $$
信号は 9.09 % しか届きません(誤差 $-90.9\,\%$)。ところがボルテージフォロワを間に挟むと、信号源が見る負荷は $Z_{\text{in}} = 995\,\text{M}\Omega$ になり、
$$ \frac{995\,\text{M}}{100\,\text{k} + 995\,\text{M}} = 0.9999 $$

2つの回路の違いは、オペアンプが1個入っているかどうかだけです。(a) では $R_s$ と $R_L$ が直列につながって分圧器を形成してしまい、後段には 9.09 % しか届きません。(b) ではフォロワの入力インピーダンス 995 MΩ が $R_L$ の代わりに信号源の負荷となるため、$R_s = 100$ kΩ はもはや無視できる大きさになります。しかも後段を駆動するのは出力インピーダンス 0.75 mΩ のフォロワ出力なので、$R_L$ が 10 kΩ でも 1 kΩ でも出力電圧は変わりません。入口を軽く、出口を強く — これがバッファの働きです。
誤差はわずか $-100$ ppm(0.01 %)です。しかも、この $-100$ ppm のほとんどは $R_{\text{cm}} = 1\,\text{G}\Omega$ に起因します。FET入力オペアンプを選んで $R_{\text{cm}}$ を $10^{13}\,\Omega$ にすれば、誤差は 0.01 ppm 未満まで落ちます。適切なバッファ1個で、90 % の信号欠損が 0.01 % 未満になる — これがフォロワの価値です。
フォロワならではの落とし穴
万能に見えるフォロワですが、$\beta = 1$ には代償もあります。
その1: 安定性が最も厳しい。 位相余裕は、ループ利得 $T = A\beta$ の大きさが 1(0 dB)になる周波数での位相遅れで決まります。$\beta = 1$ ではループ利得が最大なので、ゲイン交差周波数が最も高い所(=オペアンプ内部の第2極・第3極の影響が強い所)まで押し上げられ、位相余裕が最小になります。データシートに「ユニティゲイン安定(unity-gain stable)」と書かれていないオペアンプ(デコンペンセーテッド品、たとえば最小安定利得5倍といった品種)をフォロワにすると、確実に発振します。フォロワは負帰還回路の最悪条件だと覚えておいてください。
その2: 容量負荷に弱い。 前節で見たように出力インピーダンスは誘導性に見えます。$\beta = 1$ ではその誘導性が最も広い帯域にわたって現れるため、負荷容量との共振が起きやすくなります。長いケーブルやADCのサンプリング容量を駆動するときは、出力に 10〜50 Ω 程度の直列抵抗を入れ、帰還点を抵抗の内側(オペアンプ出力側)に取るのが定石です。
その3: 同相入力範囲が最も厳しい。 これは次節で詳しく扱いますが、フォロワでは同相入力電圧が出力振幅そのものになります。出力を電源レールいっぱいまで振りたいなら、入力もレールいっぱいまで許容できるオペアンプ(レール・ツー・レール入力品)が必要です。
その4: 電流帰還型オペアンプでは $R_f = 0$ にしてはいけない。 電流帰還型(CFA)では $R_f$ が位相補償の一部として働くため、データシート指定の $R_f$(数百 Ω)を必ず入れます。$R_f = 0$ は即発振です。この記事で扱っているのは電圧帰還型(VFA)であることに注意してください。
ここまで、非反転構成の利点(高入力インピーダンス)と、フォロワの威力を見てきました。しかし世の中には反転増幅回路も広く使われています。なぜ全部を非反転にしないのか。その理由を、同相入力電圧という切り口から見ていきます。
反転構成との比較 — 同相入力電圧という決定的な違い
2つの構成の対応表
同じ利得 10 倍(絶対値)を作るとして、両者を並べてみます。オペアンプは $A_0 = 10^5$、GB積 10 MHz、$R_d = 2\,\text{M}\Omega$、$R_o = 75\,\Omega$ とします。
| 項目 | 非反転($R_f=9\text{k}, R_g=1\text{k}$) | 反転($R_f=10\text{k}, R_g=1\text{k}$) |
|---|---|---|
| 信号利得 | $+10$ | $-10$ |
| 帰還率 $\beta$ | $R_g/(R_g+R_f) = 0.100$ | $R_g/(R_g+R_f) = 0.0909$ |
| ノイズゲイン $1/\beta$ | 10.0 | 11.0 |
| ループ利得 $T$ | $10^4$(80.0 dB) | $9091$(79.2 dB) |
| 利得誤差 | $-0.0100\,\%$ | $-0.0110\,\%$ |
| 閉ループ帯域 | 1.00 MHz | 909 kHz |
| 入力インピーダンス | $\sim 950\,\text{M}\Omega$ | $R_g = 1\,\text{k}\Omega$ |
| 同相入力電圧 $V_{\text{icm}}$ | $V_{\text{in}}$(信号そのもの) | $\simeq 0$(一定) |
まず入力インピーダンスの差が圧倒的です。非反転が 950 MΩ、反転が 1 kΩ。実に6桁の差があります。反転増幅回路では − 端子がバーチャルグラウンド(仮想接地)になるため、信号源から見た負荷は $R_g$ そのものです。$R_g$ を大きくすれば入力インピーダンスは上がりますが、同じ利得を保つには $R_f$ も比例して大きくしなければならず、後述する熱雑音とバイアス電流の問題が悪化します。
ノイズゲインの微妙な差
$\beta$ の定義は両構成で同じ $R_g/(R_g+R_f)$ ですが、信号利得が違うため、同じ絶対利得を作ったときの $\beta$ に差が出ます。非反転で $|G|=10$ なら $1/\beta = 10$、反転で $|G|=10$ なら $1/\beta = 11$ です。
この $1/\beta$ はノイズゲインと呼ばれ、オペアンプの入力オフセット電圧 $V_{os}$ や入力換算雑音電圧 $e_n$ が出力に現れるときの倍率です。信号がどう入るかによらず、入力端子に加わった誤差電圧は必ず $1/\beta$ 倍されて出力に出ます。したがって同じ信号利得なら、反転構成のほうがオフセットも雑音も 10 % 大きく、帯域は 9 % 狭いことになります。差は小さいですが、利得1のバッファを作るときは決定的です。非反転(フォロワ)ならノイズゲイン 1 ですが、反転で $-1$ 倍を作るとノイズゲインは 2 になり、雑音もオフセットも帯域損失も倍になります。
CMRR — 非反転構成の弱点
ここからが本題です。反転増幅回路では、+ 端子は接地され、− 端子もバーチャルグラウンドで 0 V に張り付いています。つまり入力段が見る同相電圧はほぼ 0 V で固定です。信号がどう振れようと、入力段の動作点は動きません。
非反転増幅回路はまったく逆です。+ 端子には $V_{\text{in}}$ が直結され、− 端子もバーチャルショートで $V_{\text{in}}$ に追随します。したがって
$$ V_{\text{icm}} = \frac{V_P + V_N}{2} \simeq V_{\text{in}} $$
入力信号がそのまま同相入力電圧になるのです。入力段の差動対の動作点が、信号に合わせてフルスイングで動き回ります。これが、CMRR と同相入力範囲を性能の律速要因に押し上げます。

左右で出力波形(黒)は同じ振幅 4 V です。違うのは太線で描いた同相入力電圧で、非反転構成では入力信号そのものが $\pm 0.4$ V で揺れ続けるのに対し、反転構成では 0 V に完全に張り付いています。入力段のトランジスタから見れば、前者は動作点が信号に合わせて動き回る状態、後者は動作点が固定された状態です。CMRR が有限であることの影響は「動作点が動くかどうか」で決まるので、この一枚の違いが以降のすべての差を生みます。
CMRR(Common-Mode Rejection Ratio、同相除去比)は、同相入力電圧が差動入力電圧に化けてしまう度合いを表します。入力換算誤差電圧として、
$$ V_{\text{err}} = \frac{V_{\text{icm}}}{\text{CMRR}} $$
がオペアンプの入力に「見えない誤差信号」として加算される、とモデル化できます。CMRR = 80 dB($10^4$ 倍)のオペアンプに $V_{\text{icm}} = 5$ V が加わると、入力に 0.5 mV の偽信号が混入します。これは並のオペアンプの入力オフセット電圧に匹敵する大きさです。
この誤差が閉ループでどう効くかを解きましょう。オペアンプの出力式を、同相誤差込みで書きます。
$$ V_{\text{out}} = A\left(V_d + \frac{V_{\text{icm}}}{\text{CMRR}}\right) $$
非反転構成では $V_d = V_{\text{in}} – \beta V_{\text{out}}$、$V_{\text{icm}} = V_{\text{in}}$ です。代入すると、
$$ V_{\text{out}} = A\left(V_{\text{in}} – \beta V_{\text{out}} + \frac{V_{\text{in}}}{\text{CMRR}}\right) $$
$V_{\text{out}}$ の項を左辺に集め、右辺を $V_{\text{in}}$ でくくります。
$$ (1 + A\beta) V_{\text{out}} = A V_{\text{in}}\left(1 + \frac{1}{\text{CMRR}}\right) $$
両辺を $(1+A\beta)$ で割り、これまでと同様に $1/\beta$ を括り出すと、
$$ \begin{equation} A_{\text{cl}} = \frac{1}{\beta}\cdot\frac{T}{1+T}\cdot\left(1 + \frac{1}{\text{CMRR}}\right) \end{equation} $$
CMRR は利得誤差として現れます。CMRR = 80 dB なら $+0.01\,\%$ の利得誤差です。ループ利得由来の $-0.0100\,\%$ と同じオーダーであり、無視できません。
CMRR誤差が「歪み」になる理由
利得が 0.01 % ずれるだけなら、校正で吸収すればよさそうに思えます。しかし話はそう簡単ではありません。CMRR は同相電圧の関数であり、一定ではないからです。
入力段の差動対では、同相電圧が動くと各トランジスタの $V_{DS}$(あるいは $V_{CE}$)が変化し、出力抵抗やアーリー効果の効き方が変わります。その結果 CMRR は $V_{\text{icm}}$ に依存し、特にレールに近づくと急激に劣化します。レール・ツー・レール入力品では、PNP対とNPN対を電圧に応じて切り替える構造のため、切り替え点で CMRR が不連続に変化し、クロスオーバー歪みとして現れることさえあります。
CMRR が同相電圧に依存するということは、入力換算誤差 $V_{\text{err}}(V_{\text{icm}})$ が $V_{\text{icm}}$ の非線形関数だということです。非反転構成では $V_{\text{icm}} = V_{\text{in}}$ なので、この非線形性はそっくりそのまま信号の歪みになります。正弦波を入れれば高調波が生まれます。
反転構成ではこれが起きません。$V_{\text{icm}} \simeq 0$ で固定されているため、CMRR がどれだけ悪くても、また同相電圧にどれだけ依存していても、誤差は生じないのです。歪み性能を極限まで追い込む用途(高分解能ADCドライバ、オーディオ)で反転構成が選ばれるのは、この理由が大きいわけです。非反転構成の高入力インピーダンスと、反転構成の低歪み — この2つは基本的にトレードオフの関係にあります。
同相入力範囲(CMIR)
CMRR が「精度」の問題だとすれば、同相入力範囲(Common-Mode Input Range, CMIR)は「そもそも動くか」の問題です。オペアンプの入力段が正常に動作するには、入力端子の電位が一定の範囲になければなりません。単電源 5 V 動作の汎用品では「0 V 〜 3.5 V」のように、正電源側に 1.5 V ほどの余裕(ヘッドルーム)を要求するものが多くあります。
非反転構成では $V_{\text{icm}} = V_{\text{in}} = V_{\text{out}}/G$ です。ここから重要な設計則が導けます。利得が小さいほど同相入力電圧が大きくなるのです。
- 利得 10 倍で出力を 0〜4 V 振らせるなら、$V_{\text{icm}}$ は 0〜0.4 V。CMIR は余裕
- 利得 2 倍で同じ出力なら $V_{\text{icm}}$ は 0〜2 V。まだ大丈夫
- ボルテージフォロワなら $V_{\text{icm}}$ は 0〜4 V。CMIR 上限 3.5 V を超えて破綻

同じ「出力 0〜4 V」という仕様でも、利得を上げるほど入力側の振幅は $1/G$ に縮むので、$V_{\text{icm}}$ は 4.0 V → 2.0 V → 0.8 V → 0.4 V と下がっていきます。CMIR 上限 3.5 V(破線)を超えているのはフォロワだけで、$G = 2$ 以上ならすべて安全域に入ります。バッファ用途こそ入力段の仕様を最も厳しく問われるという、直感に反する結論がこの図から読み取れます。単電源でフォロワを使うなら、レール・ツー・レール入力品を選ぶのが実質的な必須条件です。
フォロワが CMIR の観点で最悪条件になる、というのはこの計算から出てきます。CMIR を超えると、単に飽和するだけならまだしも、旧世代のバイポーラ入力品では位相反転(phase inversion) という現象が起きます。入力段の差動対が飽和して極性が反転し、出力が逆のレールに張り付いてしまうのです。負帰還ループの中でこれが起きると、ループが正帰還に転じてラッチアップし、入力を戻しても復帰しないことがあります。センサ入力のようにレール外の電圧が加わり得る箇所では、位相反転耐性を明記したオペアンプを選ぶか、入力にクランプダイオードと直列抵抗を入れて保護します。
反転構成にはこの問題がありません。$V_{\text{icm}}$ が 0 V 固定なので、入力信号が電源電圧を超えて振れても、$R_g$ が電流を制限するだけで入力段は動作点を保ちます。単電源回路で両極性信号を扱うときに反転構成が便利なのは、このためです。
構成の選択基準が見えてきました。最後に、実際に部品定数を決めるときの制約を整理しておきましょう。
実用上の設計指針
抵抗値の選び方
$1 + R_f/R_g$ という式は比しか決めないので、絶対値は自由に選べます。しかし実際には上下から挟まれています。
大きすぎるとダメな理由(3つ)
- 熱雑音: 抵抗の雑音電圧密度は $e_R = \sqrt{4kTR}$ です。$R = 10\,\text{k}\Omega$ で $12.9\,\text{nV}/\sqrt{\text{Hz}}$、$R = 1\,\text{M}\Omega$ で $129\,\text{nV}/\sqrt{\text{Hz}}$。低雑音オペアンプの入力換算雑音が $1\text{–}5\,\text{nV}/\sqrt{\text{Hz}}$ であることを考えると、抵抗が雑音の主役になってしまいます。入力換算では $R_f \parallel R_g$ の雑音が効きます
- バイアス電流による誤差: − 端子に流れ込むバイアス電流 $I_B$ は $R_f \parallel R_g$ を通って直流電圧降下を作ります。$I_B = 100$ nA、$R_f\parallel R_g = 100\,\text{k}\Omega$ なら 10 mV のオフセットです
- 寄生容量との極: $R_f \parallel R_g$ とオペアンプ入力容量 $C_{\text{in}}$ が帰還ループに極を作ります。$f_p = 1/(2\pi (R_f\parallel R_g) C_{\text{in}})$ で、$R_f\parallel R_g = 9\,\text{k}\Omega$、$C_{\text{in}} = 10$ pF なら 1.77 MHz。これが GB積より低いと位相余裕を食い潰し、リンギングや発振を招きます
小さすぎるとダメな理由
$R_f + R_g$ が小さいと、オペアンプは帰還網に無駄な電流を流し続けなければなりません。$R_f + R_g = 100\,\Omega$ で出力 5 V なら 50 mA。多くの汎用オペアンプの出力電流定格を超えます。加えて、出力段が大電流を吐くと歪みが増えます。
実用的な落としどころは、$R_f + R_g$ を 1 kΩ 〜 100 kΩ の範囲に置くことです。低雑音重視なら 1〜10 kΩ、低消費電力重視なら 10〜100 kΩ が目安になります。

(a) の熱雑音は $\sqrt{R}$ で増えるため、両対数軸では傾き 1/2 の直線になります。低雑音オペアンプの 3 nV/√Hz と交わるのは 543 Ω で、これを超えると雑音の主役はオペアンプではなく抵抗に移ります。(b) のバイアス電流誤差は $R$ に比例するので傾き 1 の直線で、同じ 100 kΩ でもバイポーラ入力なら 10 mV、FET入力なら 0.1 µV と 6 桁も違います。(c) は逆に抵抗を下げすぎたときの弊害で、$R_f+R_g = 100\,\Omega$ では出力 5 V に対して 50 mA が帰還網に流れ、汎用品の定格 20 mA を軽く超えます。3 枚を重ねると、上からは雑音とバイアス電流、下からは出力電流に挟まれて 1 k〜100 kΩ という帯が残ることがわかります。
帰還容量による位相補償
上記3番目の「入力容量による極」は、非反転増幅回路で最もよく遭遇する不安定要因です。対策は $R_f$ に小容量 $C_f$ を並列に入れることです。$C_f$ は帰還網に零点を作り、$C_{\text{in}}$ の極を打ち消します。両者が完全に相殺する条件は、時定数を一致させることで、
$$ R_f C_f = (R_f \parallel R_g)\, C_{\text{in}} $$
$R_f \parallel R_g = R_f R_g/(R_f+R_g)$ を代入して $C_f$ について解くと、
$$ C_f = \frac{R_g}{R_f + R_g} C_{\text{in}} = \beta\, C_{\text{in}} $$
きれいな結果です。必要な帰還容量は、入力容量に帰還率を掛けたもの。$\beta = 0.1$、$C_{\text{in}} = 10$ pF なら $C_f = 1$ pF。基板の配線パターン間容量とほぼ同じオーダーなので、レイアウトでの寄生容量管理も含めて考える必要があります。
スルーレートによる帯域制限
これまで議論してきた閉ループ帯域は小信号帯域です。大振幅では、オペアンプ内部の位相補償容量を充放電する電流に上限があるため、出力の傾きが $\text{SR}$(スルーレート)で頭打ちになります。振幅 $V_p$ の正弦波 $V_p\sin(2\pi f t)$ の最大傾きは $2\pi f V_p$ なので、歪まずに出せる最大周波数(フルパワー帯域幅)は、
$$ f_{\max} = \frac{\text{SR}}{2\pi V_p} $$
$\text{SR} = 10\,\text{V}/\mu\text{s}$、$V_p = 5$ V なら $f_{\max} = 318$ kHz。小信号帯域が 1 MHz あっても、5 V 振幅では 318 kHz を超えると三角波に潰れます。小信号帯域と大信号帯域は別物という点は、設計で必ず確認してください。

左のグラフでは、振幅を上げるほど使える周波数が反比例で下がっていきます。小信号帯域 1 MHz(破線)と SR = 10 V/µs の線が交わるのは $V_p = 1.6$ V あたりで、それより大きな振幅では帯域を決めているのは GB積ではなくスルーレートに切り替わります。右のグラフはその結末で、100 kHz なら理想の正弦波(点線)にぴったり重なっているのに、500 kHz では頂点が削られ始め、2 MHz では完全な三角波になってしまいます。振幅も周波数も、データシートの「帯域」だけを見て決めてはいけない理由がここにあります。
バイアス電流のキャンセル
- 端子と − 端子には、それぞれほぼ等しいバイアス電流 $I_B$ が流れます。− 端子から見た直流抵抗は $R_f \parallel R_g$、+ 端子から見た直流抵抗は信号源抵抗 $R_s$ です。両者が作る電圧降下の差が入力オフセットとして残るので、
$$ V_{os,\text{bias}} = I_{B+} R_s – I_{B-} (R_f \parallel R_g) $$
$R_s = R_f \parallel R_g$ に設計すれば、$I_{B+} = I_{B-} = I_B$ の成分が完全に相殺し、残るのは入力オフセット電流 $I_{os} = I_{B+}-I_{B-}$ による項だけになります。$I_{os}$ は $I_B$ の 1/10 以下が普通なので、誤差は1桁減ります。信号源抵抗が小さい場合は、+ 端子に直列抵抗を入れて意図的に $R_f\parallel R_g$ に合わせる、というテクニックが使われます(ただしその抵抗の熱雑音が加わるトレードオフがあります。FET入力オペアンプでは $I_B$ が pA オーダーなので、この対策は不要どころか有害です)。
理論と設計指針が揃いました。ここからは Python で、これまでの主張が数値としてどう現れるかを確かめます。
Python による数値実験
以下のコードは、いずれも $A_0 = 10^5$(100 dB)、GB積 10 MHz、$R_d = 2\,\text{M}\Omega$、$R_{\text{cm}} = 1\,\text{G}\Omega$、$R_o = 75\,\Omega$ という共通のオペアンプモデルを使います。
実験1: 反転 vs 非反転 — 入力インピーダンスと帯域の比較
同じ絶対利得 10 倍を、非反転($R_f=9\text{k}, R_g=1\text{k}$)と反転($R_f=10\text{k}, R_g=1\text{k}$)の両方で作り、周波数特性と入力インピーダンスを比べます。
import numpy as np
import matplotlib, matplotlib.pyplot as plt
for cand in ["Hiragino Sans", "Yu Gothic", "Noto Sans CJK JP", "IPAexGothic", "Meiryo"]:
if any(cand == f.name for f in matplotlib.font_manager.fontManager.ttflist):
plt.rcParams["font.family"] = cand
break
plt.rcParams["axes.unicode_minus"] = False
# --- オペアンプモデル(1次ロールオフ) ---
A0, GBW = 1e5, 10e6 # 直流利得, GB積[Hz]
fa = GBW / A0 # 支配極 = 100 Hz
Rd, Rcm, Ro = 2e6, 1e9, 75.0 # 差動入力抵抗, 同相入力抵抗, 出力抵抗
def A_open(f):
"""開ループ利得(複素数)"""
return A0 / (1 + 1j * f / fa)
f = np.logspace(0, 8, 2000)
# --- 非反転: 信号利得 +10 ---
Rf_n, Rg_n = 9e3, 1e3
beta_n = Rg_n / (Rg_n + Rf_n) # 帰還率 0.1
T_n = A_open(f) * beta_n # ループ利得
Gn = A_open(f) / (1 + T_n) # 閉ループ利得
# --- 反転: 信号利得 -10 ---
Rf_i, Rg_i = 10e3, 1e3
beta_i = Rg_i / (Rg_i + Rf_i) # 帰還率 1/11
T_i = A_open(f) * beta_i
Gi = -(Rf_i / Rg_i) * (T_i / (1 + T_i))
print(f"非反転: beta={beta_n:.4f} T(DC)={abs(T_n[0]):.4g} ({20*np.log10(abs(T_n[0])):.1f} dB)")
print(f"反転 : beta={beta_i:.4f} T(DC)={abs(T_i[0]):.4g} ({20*np.log10(abs(T_i[0])):.1f} dB)")
print(f"利得誤差 非反転={100*(abs(Gn[0])-10)/10:+.4f} % 反転={100*(abs(Gi[0])-10)/10:+.4f} %")
print(f"閉ループ帯域 非反転={GBW*beta_n/1e3:.1f} kHz 反転={GBW*beta_i/1e3:.1f} kHz")
出力は次のようになります。
非反転: beta=0.1000 T(DC)=1e+04 (80.0 dB)
反転 : beta=0.0909 T(DC)=9090 (79.2 dB)
利得誤差 非反転=-0.0100 % 反転=-0.0110 %
閉ループ帯域 非反転=1000.0 kHz 反転=909.1 kHz
同じ「10倍」でも、帰還率が 0.100 と 0.0909 で違うため、ループ利得に 0.8 dB の差がつきます。その結果、利得誤差は非反転が $-0.0100\,\%$、反転が $-0.0110\,\%$ と 10 % 悪化し、帯域は 1.00 MHz 対 909 kHz で約 9 % 狭くなります。$1/\beta$(ノイズゲイン)が 10 と 11 であることの直接の帰結で、「反転構成は同じ利得を作るのに帰還を1段階分損する」という事実が数値で確認できます。
続いて、この2つの構成の入力インピーダンスを周波数軸で比べます。
# --- 入力インピーダンス ---
Zin_n = np.abs((1 + T_n) * Rd) # 非反転: ブートストラップ効果
Zin_n = 1 / (1/Zin_n + 1/Rcm) # 同相入力抵抗と並列
Zin_i = np.full_like(f, Rg_i) # 反転: Rg そのもの
fig, ax = plt.subplots(1, 2, figsize=(13, 4.5))
ax[0].loglog(f, np.abs(Gn), label="非反転 (+10倍)", lw=2)
ax[0].loglog(f, np.abs(Gi), label="反転 (-10倍)", lw=2, ls="--")
ax[0].loglog(f, np.abs(A_open(f)), color="gray", lw=1, label="開ループ利得 $A(f)$")
ax[0].axhline(10, color="k", lw=0.6, ls=":")
ax[0].set(xlabel="周波数 [Hz]", ylabel="利得(倍)", ylim=(1e-1, 1e6),
title="同じ利得10倍でも帯域が違う(GB積一定)")
ax[0].legend(); ax[0].grid(which="both", alpha=0.3)
ax[1].loglog(f, Zin_n, label="非反転: $(1+A\\beta)R_d \\parallel R_{cm}$", lw=2)
ax[1].loglog(f, Zin_i, label="反転: $R_g$ のみ", lw=2, ls="--")
ax[1].set(xlabel="周波数 [Hz]", ylabel="入力インピーダンス [$\\Omega$]",
title="入力インピーダンスは6桁の差")
ax[1].legend(); ax[1].grid(which="both", alpha=0.3)
plt.tight_layout(); plt.show()
for ff in [1e2, 1e3, 1e4, 1e5, 1e6]:
T = A_open(ff) * beta_n
print(f"f={ff:8.0f} Hz |1+T|={abs(1+T):8.1f} Zin={abs(1+T)*Rd:.3g} Ω Zout={Ro/abs(1+T):.3g} Ω")

左のグラフでは、2本の閉ループ利得曲線がどちらも開ループ利得の直線に沿って折れ曲がっている点に注目してください。閉ループ帯域は「水平な利得線と開ループ利得線の交点」で決まり、これが GB積一定則の図的な意味です。反転構成の線は非反転より少し早く折れています。
右のグラフはさらに劇的で、低周波では非反転が数百 MΩ、反転が 1 kΩ と6桁近い差があります。ただし非反転の曲線は 100 Hz あたりから右下がりに転じます。これはループ利得 $T$ が周波数とともに落ち、ブートストラップ効果が弱まるためです。数値出力を見ると、1 kHz で $Z_{\text{in}} = 2.0\,\text{G}\Omega$、100 kHz で 20 MΩ、1 MHz では 2.8 MΩ まで低下し、裸の $R_d = 2\,\text{M}\Omega$ に漸近していきます。同時に $Z_{\text{out}}$ は 1 kHz の 75 mΩ から 1 MHz の 53 Ω まで上昇し、$R_o$ に戻っていきます。負帰還によるインピーダンス改善は低周波限定の恩恵であることが、はっきり読み取れます。
実験2: ボルテージフォロワによる分圧誤差の解消
冒頭のセンサの話を数値実験にします。出力抵抗 $R_s$ の信号源を、(a) 入力抵抗 10 kΩ の回路に直結した場合と、(b) ボルテージフォロワを介した場合で、届く信号の割合を比べます。
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
A0, Rd, Rcm = 1e5, 2e6, 1e9
RL = 10e3 # 後段の入力抵抗(直結時)
Rs = np.logspace(1, 8, 300) # 信号源抵抗 10Ω 〜 100MΩ
# (a) 直結: 単純な分圧
ratio_direct = RL / (Rs + RL)
# (b) フォロワ経由: Zin = (1+A0)Rd ∥ Rcm
Zin_follower = 1 / (1/((1 + A0) * Rd) + 1/Rcm)
ratio_buf = Zin_follower / (Rs + Zin_follower)
# (c) FET入力オペアンプ(Rcm = 1e13 Ω)
Zin_fet = 1 / (1/((1 + A0) * 1e12) + 1/1e13)
ratio_fet = Zin_fet / (Rs + Zin_fet)
for r in [1e3, 1e5, 1e8]:
d = RL/(r+RL); b = Zin_follower/(r+Zin_follower)
print(f"Rs={r:9.0f} Ω : 直結 {100*d:7.3f}% (誤差{100*(d-1):+8.3f}%) / "
f"フォロワ {100*b:.5f}% (誤差{1e6*(b-1):+.1f} ppm)")
print(f"フォロワの入力インピーダンス: {Zin_follower/1e6:.1f} MΩ (FET入力なら {Zin_fet/1e9:.0f} GΩ)")
出力は次の通りです。
Rs= 1000 Ω : 直結 90.909% (誤差 -9.091%) / フォロワ 99.99990% (誤差-1.0 ppm)
Rs= 100000 Ω : 直結 9.091% (誤差 -90.909%) / フォロワ 99.98995% (誤差-100.5 ppm)
Rs=100000000 Ω : 直結 0.010% (誤差 -99.990%) / フォロワ 90.86779% (誤差-91322.1 ppm)
フォロワの入力インピーダンス: 995.0 MΩ (FET入力なら 9999 GΩ)
$R_s = 100\,\text{k}\Omega$ のとき、直結では信号が 9.09 % しか届かず 90.9 % を失いますが、フォロワを挟むと誤差はわずか 100 ppm(0.01 %)に激減します。誤差が4桁改善しています。一方、$R_s = 100\,\text{M}\Omega$ まで極端に上げると、バイポーラ入力オペアンプのフォロワでも 9.1 % の誤差が出ます。これは $R_{\text{cm}} = 1\,\text{G}\Omega$ が効いているためで、ここが「$R_d$ ではなく $R_{\text{cm}}$ が限界を決める」という先の指摘の実例です。FET入力品では $Z_{\text{in}}$ が 9999 GΩ まで伸び、この領域でも誤差は 100 ppm 以下に収まります。
グラフにすると関係が一目で見えます。
plt.figure(figsize=(9, 5))
plt.semilogx(Rs, 100*ratio_direct, lw=2, label="直結(後段 $R_L$=10 kΩ)")
plt.semilogx(Rs, 100*ratio_buf, lw=2, label="フォロワ経由(バイポーラ入力, $R_{cm}$=1 GΩ)")
plt.semilogx(Rs, 100*ratio_fet, lw=2, ls="--", label="フォロワ経由(FET入力, $R_{cm}$=10 TΩ)")
plt.axvline(100e3, color="crimson", ls=":", lw=1.5)
plt.text(1.2e5, 50, "ガラス電極\n$R_s$=100 kΩ", color="crimson", fontsize=9)
plt.xlabel("信号源の出力抵抗 $R_s$ [Ω]")
plt.ylabel("後段に届く信号の割合 [%]")
plt.title("バッファの有無で信号の届き方がどう変わるか")
plt.ylim(-2, 105); plt.grid(alpha=0.3); plt.legend(loc="lower left")
plt.tight_layout(); plt.show()

このグラフから3点が読み取れます。第一に、直結の曲線は $R_s = R_L = 10\,\text{k}\Omega$ で 50 % を切り、そこから急落します。信号源抵抗が後段の入力抵抗と同程度になった時点で、もう半分失っているわけです。第二に、バイポーラ入力フォロワの曲線は $R_s = 10\,\text{M}\Omega$ 付近までほぼ 100 % を保ちます。第三に、FET入力品の破線は $R_s = 100\,\text{M}\Omega$ でもまだ平坦です。信号源抵抗に応じて、バッファの入力段(バイポーラかFETか)を選ぶ必要があることがわかります。
実験3: CMRR有限時の誤差と歪み
最後に、非反転構成固有の弱点である CMRR の影響を評価します。まず入力換算誤差電圧の大きさを見て、次に CMRR の非線形性が歪みを生む様子を確認します。
import numpy as np
Vcm = 5.0 # 同相入力電圧 [V]
print("CMRR 倍率 入力換算誤差(Vcm=5V) G=10での出力誤差")
for db in [60, 80, 100, 120]:
cmrr = 10 ** (db / 20)
verr = Vcm / cmrr # 入力換算誤差電圧
print(f"{db:4d} dB {cmrr:9.0f} {verr*1e6:10.1f} µV {verr*10*1e3:7.3f} mV")
# 閉ループ利得への影響(式(9))
A0, beta = 1e5, 0.1
T = A0 * beta
for db in [60, 80, 100]:
cmrr = 10 ** (db / 20)
Acl = (1/beta) * (T/(1+T)) * (1 + 1/cmrr)
print(f"CMRR={db}dB → 閉ループ利得 {Acl:.6f} (理想10, 誤差 {100*(Acl-10)/10:+.4f} %)")
出力は次のようになります。
CMRR 倍率 入力換算誤差(Vcm=5V) G=10での出力誤差
60 dB 1000 5000.0 µV 50.000 mV
80 dB 10000 500.0 µV 5.000 mV
100 dB 100000 50.0 µV 0.500 mV
120 dB 1000000 5.0 µV 0.050 mV
CMRR=60dB → 閉ループ利得 10.008999 (理想10, 誤差 +0.0900 %)
CMRR=80dB → 閉ループ利得 10.000000 (理想10, 誤差 +0.0000 %)
CMRR=100dB → 閉ループ利得 9.999100 (理想10, 誤差 -0.0090 %)
同相入力電圧 5 V に対し、CMRR が 60 dB しかないオペアンプでは 5 mV もの入力換算誤差が生じます。これは 12 bit ADC のフルスケール 5 V における 1 LSB(1.22 mV)の4倍で、精度を完全に潰します。CMRR 100 dB 品なら 50 µV まで落ち、実用範囲に入ります。
閉ループ利得への影響も興味深い結果になりました。CMRR = 60 dB では $+0.090\,\%$ の利得誤差が生じ、ループ利得由来の $-0.010\,\%$ を完全に食ってしまいます。逆に CMRR = 80 dB のときは $+0.010\,\%$ の CMRR 誤差とループ利得由来の $-0.010\,\%$ がちょうど相殺し、見かけ上の利得誤差がゼロになります。この「偶然の相殺」を設計の根拠にしてはいけません。 CMRR も $A_0$ も個体差・温度で大きく動くため、相殺は再現しないからです。誤差要因は符号を無視して二乗和や絶対値和で積み上げるのが正しい見積もり方です。
次に、CMRR が同相電圧に依存する(=非線形である)場合に何が起きるかを見ます。入力換算誤差を $V_{\text{err}}(V_{\text{cm}}) = (V_{\text{cm}}/\text{CMRR}_0)\{1 + (V_{\text{cm}}/V_0)^2\}$ という単純な奇対称モデルで表し、正弦波を入れて高調波を測ります。
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
CMRR0, V0, G = 1e4, 10.0, 10.0 # DC CMRR=80dB, 非線形の効き始める電圧, 信号利得
N, k0 = 1 << 14, 5 # FFT点数, 基本波のビン番号
t = np.arange(N) / N
def sim(Vp, nonlinear=True):
"""振幅Vpの正弦波を非反転増幅したときの出力(CMRR誤差込み)"""
vin = Vp * np.sin(2 * np.pi * k0 * t)
vcm = vin # 非反転では同相電圧=入力信号
e = vcm / CMRR0 * ((1 + (vcm / V0) ** 2) if nonlinear else 1.0)
return G * (vin + e)
S = np.fft.rfft(sim(5.0)) * 2 / N
h1, h3 = abs(S[k0]), abs(S[3 * k0])
print(f"非線形CMRR: 基本波 {h1:.4f} V, 3次高調波 {h3*1e3:.4f} mV")
print(f" HD3 = {100*h3/h1:.6f} % ({20*np.log10(h3/h1):.1f} dBc)")
print(f" 利得誤差 = {100*(h1-G*5.0)/(G*5.0):+.4f} %")
S2 = np.fft.rfft(sim(5.0, nonlinear=False)) * 2 / N
print(f"線形CMRR : HD3 = {abs(S2[3*k0])/abs(S2[k0]):.2e}(実質ゼロ), "
f"利得誤差 = {100*(abs(S2[k0])-G*5.0)/(G*5.0):+.4f} %")
結果は次の通りです。
非線形CMRR: 基本波 50.0059 V, 3次高調波 0.3125 mV
HD3 = 0.000625 % (-104.1 dBc)
利得誤差 = +0.0119 %
線形CMRR : HD3 = 3.60e-17(実質ゼロ), 利得誤差 = +0.0100 %
CMRR が同相電圧によらず一定(線形モデル)なら、影響は $+0.0100\,\%$ の純粋な利得誤差だけで、高調波はまったく出ません。ところが CMRR に $V_{\text{cm}}^2$ の依存性を入れた瞬間、3次高調波が $-104$ dBc(0.000625 %)現れます。これは 16 bit(98 dB)を超える分解能を狙う系では無視できないレベルです。反転構成なら $V_{\text{cm}} = 0$ なので、この歪みは原理的に発生しません。「非反転は入力インピーダンスで勝ち、反転は歪みで勝つ」 という定性的な話が、数値として裏付けられました。
振幅を振って、歪みが信号振幅にどう依存するかも確認しておきます。
amps = np.linspace(0.5, 9.0, 30)
hd3 = []
for Vp in amps:
S = np.fft.rfft(sim(Vp)) * 2 / N
hd3.append(20 * np.log10(abs(S[3*k0]) / abs(S[k0])))
plt.figure(figsize=(9, 5))
plt.plot(amps, hd3, "o-", lw=2, label="非反転($V_{cm}$ = 入力信号)")
plt.axhline(-98, color="crimson", ls="--", lw=1.5, label="16 bit の分解能限界 (-98 dBc)")
plt.axhline(-132, color="gray", ls=":", lw=1.5, label="参考: $V_p$=1 V での歪み (-132 dBc)")
plt.xlabel("入力振幅 $V_p$ [V]")
plt.ylabel("3次高調波歪み HD3 [dBc]")
plt.title("非反転構成では信号振幅が大きいほど CMRR 由来の歪みが増える")
plt.grid(alpha=0.3); plt.legend(loc="lower right")
plt.tight_layout(); plt.show()

左は $V_p = 5$ V のときの出力スペクトルで、基本波(ビン5)から $-104.1$ dBc 下がったところにビン15の3次高調波が立っています。CMRR が一定なら存在しないはずのスペクトル線が、同相電圧依存性を入れただけで現れることが確認できます。右がこの記事のコードで描いた振幅依存性です。このグラフから、HD3 が振幅の2乗に比例して増える様子が読み取れます。実際に解析的に解くと、$\sin^3\theta = \frac{3}{4}\sin\theta – \frac{1}{4}\sin 3\theta$ の展開から $\text{HD3} = V_p^2/(4\,\text{CMRR}_0 V_0^2)$ が得られ、振幅が2倍になるごとに歪みは 12 dB 悪化します($40\log_{10}2 = 12.0$ dB)。3次の非線形性が生む3次高調波は振幅の3乗に比例し、基本波は1乗に比例するので、比を取ると2乗になるためです。
$V_p = 1$ V では $-132$ dBc と完全に無視できるのに、$V_p = 7.1$ V で 16 bit の分解能限界($-98$ dBc)を超えます。フルスケールに近い大振幅ほど非反転構成の不利が効いてくるわけです。反転構成なら $V_{\text{cm}} = 0$ なのでこの曲線は存在せず、振幅によらず歪みは生じません。小振幅のセンサ信号を受ける前段では非反転(高入力インピーダンス優先)、フルスケールでADCを叩く最終段では反転(低歪み優先)、という段構成の使い分けが合理的なのは、この特性の違いによります。
まとめ
本記事では、非反転増幅回路とボルテージフォロワを、帰還率 $\beta$ とループ利得 $T = A\beta$ を軸に解説しました。
- 帰還率 $\beta = R_g/(R_g+R_f)$ が理論のすべての中心にあります。閉ループ利得は $A_{\text{cl}} = A/(1+A\beta) = (1/\beta)\cdot T/(1+T)$ で、$T \gg 1$ の極限で理想値 $1/\beta = 1 + R_f/R_g$ に収束します
- 利得誤差は $-1/(1+T)$、感度は $1/(1+T)$。0.01 % の精度が欲しければループ利得 80 dB が必要、という設計指針が直接得られます。高利得ほど $\beta$ が小さくなり精度が落ちるので、多段化が有利です
- 帯域は $\omega_a(1+T_0) = \text{GB積}\times\beta$。閉ループ利得と帯域の積は常に GB積に等しく、利得と帯域は交換関係にあります
- 入力インピーダンスは $(1+T)R_d$。負帰還が − 端子を入力信号と一緒に持ち上げるブートストラップ効果で、$R_d$ に電圧がかからなくなります。ただし実際の上限は同相入力抵抗 $R_{\text{cm}}$ と入力容量で決まります
- 出力インピーダンスは $R_o/(1+T)$。テスト電源法で導いた通り、$T$ が大きいほど mΩ 級まで下がりますが、$T$ が落ちる高周波では誘導性に見え、容量負荷との共振に注意が必要です
- ボルテージフォロワは $\beta = 1$ の極限で、ループ利得・入力インピーダンス・帯域・精度のすべてが最良になります。$10^{12}$ 倍のインピーダンス変換器として、高抵抗センサの信号欠損を 90 % から 0.01 % に改善します。代償として位相余裕が最小になり、容量負荷と同相入力範囲の制約が最も厳しくなります
- 反転構成との決定的な違いは同相入力電圧です。非反転では $V_{\text{icm}} = V_{\text{in}}$ となるため、CMRR は利得誤差として現れ、CMRR の非線形性はそのまま歪みになります。同相入力範囲を超えれば位相反転のリスクもあります。高入力インピーダンス(非反転)と低歪み(反転)はトレードオフです
非反転増幅回路は、単体の回路として完結しているだけでなく、サレン・キー型アクティブフィルタ、計装アンプの入力段、非反転加算回路、ハウランド電流源など、数多くの応用回路の骨格になっています。$\beta$ を見つけて $T = A\beta$ を計算する — この手順さえ身につければ、初めて見る帰還回路でも精度・帯域・インピーダンスをその場で見積もれるようになります。
次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。
- オペアンプの基本回路 — 反転増幅・加算・積分・微分回路の全体像
- 帰還増幅回路 — 負帰還が特性を改善する仕組み — 4種類の帰還トポロジーと安定性の一般論
- 差動増幅回路の理論と設計 — CMRR の発生源を入力段の回路から理解する
- 増幅回路の設計 — バイアス設計を含めた増幅回路全般
- インピーダンスの基礎 — インピーダンス整合と信号伝送の基本