数式を書くとき、ルート(根号)は避けて通れない記号です。二次方程式の解の公式、標準偏差、ユークリッドノルム、RMSE——どれも $\sqrt{}$ なしには書けません。「LaTeX でルートってどう書くんだっけ?」と検索するたびに同じページを何度も開いてしまう、そんな経験はありませんか。
この記事では \sqrt{} コマンドの基本から、三乗根・n 乗根の書き方、分数が入った複雑なルート、隣り合うルートの高さを揃えるテクニック、そして「ルートを使わないほうが読みやすい場面」まで、コピペしてすぐ使えるリファレンス形式でまとめます。
応用先はふたつあります。ひとつは試験・レポートの数式記述。統計や線形代数の答案で標準偏差やノルムを正確に書くには \sqrt{} の使い方を押さえる必要があります。もうひとつは機械学習・信号処理の論文。RMSE・SNR・周波数応答など、ルートが入る式は至るところに登場します。
本記事の内容
- やりたいことから引ける逆引き早見表
\sqrt{x}の基本と中括弧の要否(\sqrt 2xの罠)- n 乗根
\sqrt[n]{x}の書き方と KaTeX 上の注意点 - 複雑な中身(分数・和・二重根号)の書き方
- ルートの高さを揃えるテクニック(
\vphantom) - ルートを避ける流儀:$x^{1/2}$ との使い分け
- 実戦コピペ例(二次方程式・標準偏差・ノルム・RMSE・黄金比)
- KaTeX 互換表と よくある間違い

\sqrt[n]{x} は指数・ルート記号本体・中身(引数)の 3 要素から成ります。この構造を頭に入れておくと、どの部分を変更すれば望みの表示になるかがすぐわかります。
逆引き早見表:やりたいことからコマンドを引く
| やりたいこと | コマンド | 表示 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 平方根(ルート)を書く | \sqrt{x} |
$\sqrt{x}$ | KaTeX 対応。必ず {} で囲む |
| 三乗根(立方根) | \sqrt[3]{x} |
$\sqrt[3]{x}$ | KaTeX 対応 |
| 一般の n 乗根 | \sqrt[n]{x} |
$\sqrt[n]{x}$ | n に変数も使える |
| 分数の入ったルート | \sqrt{\frac{a}{b}} |
$\sqrt{\frac{a}{b}}$ | KaTeX 対応 |
| 入れ子(二重根号) | \sqrt{2+\sqrt{3}} |
$\sqrt{2+\sqrt{3}}$ | KaTeX 対応 |
| 隣のルートと高さを揃える | \sqrt{\vphantom{x^2}x} |
$\sqrt{\vphantom{x^2}x}$ | KaTeX 対応 |
| 指数表記に逃げる(簡潔) | x^{1/2} |
$x^{1/2}$ | 常に使える |
| 複数行の変形でルートを避ける | (a^2+b^2)^{1/2} |
$(a^2+b^2)^{1/2}$ | 微分が楽になる |
| 指数の位置調整(PDF 専用) | \sqrt[\leftroot{-1}\uproot{2} 3]{x} |
— | KaTeX 非対応。PDF 限定 |
早見表で全体像を把握したら、各コマンドを詳しく見ていきましょう。コマンドの「なぜそう書くのか」を理解しておくと、初めて見る式でも自信を持って再現できるようになります。
1. \sqrt{x} の基本——平方根の書き方
ルートの直感:「2 乗すると中身になる数」
$\sqrt{x}$ は「2 乗すると $x$ になる非負の数」です。中学数学から馴染みのある記号ですが、LaTeX で書くときには中括弧 {} の使い方に落とし穴があります。
基本の書き方
$\sqrt{x}$ % √x(インライン)
$$
\sqrt{x^2 + y^2} % ブロック表示
$$
$$ \sqrt{x^2 + y^2} $$
ルートの横棒(vinculum)は中括弧 {} で囲んだ範囲の上に自動で伸びます。中身が長くなれば、横棒も自動でそれに合わせて伸びます——特別な操作は不要です。
中括弧の要否:\sqrt 2x の罠
中括弧を省くと、ルートに入る範囲は最初の 1 文字だけになります。これが最も多い間違いです。

図の左列(NG)を見てください。\sqrt 2x と書くと $\sqrt{2} \cdot x$(2 だけルートに入る)になり、\sqrt a+b と書くと $\sqrt{a} + b$(a だけルートに入り、+b はルートの外)になります。
% NG:最初の 1 文字しかルートに入らない
\sqrt 2x → \sqrt{2} × x (罠!)
\sqrt a+b → \sqrt{a} + b (罠!)
\sqrt ab → \sqrt{a} × b (罠!)
% OK:すべてを {} で囲む
\sqrt{2x} → √(2x) ✓
\sqrt{a+b} → √(a+b) ✓
\sqrt{ab} → √(ab) ✓
ルール:\sqrt の後は必ず { と } でくくる。これを守れば罠を完全に回避できます。
基本を押さえたら、指数部分を指定して 3 乗根や n 乗根を書く方法に進みましょう。
\sqrt{} の内部で使えるコマンド一覧
\sqrt{} の中括弧の中には、LaTeX/KaTeX で使えるほぼ任意のコマンドを入れられます。よく組み合わせるものを挙げます。
| 中身のパターン | コード例 | 表示 |
|---|---|---|
| 多項式 | \sqrt{a^2 + 2ab + b^2} |
$\sqrt{a^2 + 2ab + b^2}$ |
| 分数 | \sqrt{\frac{p}{q}} |
$\sqrt{\frac{p}{q}}$ |
| 総和 | \sqrt{\sum_{i=1}^n x_i^2} |
$\sqrt{\sum_{i=1}^n x_i^2}$ |
| 絶対値 | \sqrt{|a|^2} |
$\sqrt{|a|^2}$ |
| 三角関数 | \sqrt{1 - \sin^2\theta} |
$\sqrt{1 – \sin^2\theta}$ |
特に \sqrt{1 - \sin^2\theta} = |\cos\theta| は三角関数の恒等式でよく登場するパターンです。ピタゴラスの定理 $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ から $|\cos\theta|$ を取り出す変形がここで現れます。
2. n 乗根:\sqrt[n]{x} の書き方
三乗根・四乗根・一般 n 乗根
\sqrt[n]{x} の [n] の部分が指数です。省略すると $n = 2$(平方根)とみなされます。

図の 4 種類を見ると、[n] に何を書くかで根号の左上の数字が変わることがわかります。
$$
\sqrt{x} % 平方根(n=2、省略形)
$$
$$
\sqrt[3]{x} % 三乗根(立方根)
$$
$$
\sqrt[4]{x} % 四乗根
$$
$$
\sqrt[n]{x} % 一般 n 乗根(n は変数でもよい)
$$
$$ \sqrt[3]{x} $$
$$ \sqrt[n]{x} $$
[] と {} の順序を間違えない
\sqrt[3]{x} の [](角括弧)と {}(中括弧)は順序が固定されています。
% 正しい順序
\sqrt[3]{x} % ← OK
% 逆にすると別の意味
\sqrt{3}[x] % ← NG: {3} がルートに入り、[x] は余分な文字
\sqrt[指数]{中身} という順序を覚えてしまえば間違いません。
KaTeX 非対応:\leftroot / \uproot
LaTeX の amsmath パッケージには \sqrt[\leftroot{-1}\uproot{2}3]{x} のように指数の位置を微調整するコマンドがありますが、KaTeX(このブログ)では対応していません。ブログや Web の数式には影響しませんが、PDF 出力時の細かい調整用コマンドとして覚えておきましょう。
n 乗根の書き方がわかったところで、ルートの中に分数や別のルートが入る複雑なケースを見てみましょう。
n 乗根の代数的性質と LaTeX での表現
n 乗根にはいくつかの重要な性質があり、これらをうまく LaTeX で表現できると、証明や式変形の読みやすさが上がります。
$$ \sqrt[n]{a \cdot b} = \sqrt[n]{a} \cdot \sqrt[n]{b} $$
$$
\sqrt[n]{a \cdot b} = \sqrt[n]{a} \cdot \sqrt[n]{b}
$$
$$ \sqrt[m]{\sqrt[n]{a}} = \sqrt[mn]{a} $$
$$
\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}} = \sqrt[mn]{a}
$$
二番目の式は「m 乗根の中に n 乗根が入ると、指数が掛け算になる」関係です。二重根号を一段階解消するときに使います。$\sqrt{\sqrt{x}} = \sqrt[4]{x}$ はこの特別な場合($m = n = 2$)です。LaTeX では \sqrt{\sqrt{x}} と \sqrt[4]{x} のどちらで書くかは読者にどちらが直感的かで判断します。
3. 複雑な中身——分数入り・和のルート・二重根号
分数の入ったルート
\frac を \sqrt{} の中にそのまま入れられます。

$$
\sqrt{\frac{a}{b}}
$$
$$
\sqrt{\frac{GM}{r}} % 円軌道速度の例
$$
$$ \sqrt{\frac{a}{b}} $$
ルートの横棒は分数全体の上に伸び、分子・分母が正しく判別できる表示になります。\dfrac を使うと中の分数がディスプレイサイズになり、さらに読みやすくなります。
\sqrt{\dfrac{a}{b}} % 大きめの分数でルートを書く
和の入ったルート
複数の項を足したものをルートに入れる場合も、{} で囲むだけです。
$$
\sqrt{a^2 + b^2}
$$
$$
\sqrt{(x - \mu)^2 + (y - \nu)^2}
$$
$$ \sqrt{a^2 + b^2} $$
二重根号(ルートの入れ子)
ルートの中にルートを入れる「二重根号」も \sqrt{} を入れ子にするだけです。
$$
\sqrt{2 + \sqrt{3}}
$$
$$
\sqrt{1 + \sqrt{1 + \sqrt{1 + \cdots}}}
$$
$$ \sqrt{2 + \sqrt{3}} $$
外側のルートの横棒は内側のルート全体を覆うように自動で伸びます。何重にでも入れ子にできますが、4 重以上になると読みにくいため、途中から指数表記(後述)に切り替えるのが実務的です。
分数や入れ子の書き方がわかったところで、隣り合う複数のルートの「高さが揃わない」という視覚的な問題を解決するテクニックに進みましょう。
二重根号の展開:手計算と LaTeX での表現
二重根号 $\sqrt{a + \sqrt{b}}$ を展開する計算は、数学のパズルとして有名です。$\sqrt{a + \sqrt{b}} = \sqrt{p} + \sqrt{q}$ の形に変形できる場合があります。
$$ \sqrt{3 + 2\sqrt{2}} = \sqrt{2} + 1 $$
確認してみましょう。右辺を 2 乗すると $(\sqrt{2} + 1)^2 = 2 + 2\sqrt{2} + 1 = 3 + 2\sqrt{2}$ となり、確かに一致します。
% 展開前の二重根号
$$
\sqrt{3 + 2\sqrt{2}}
$$
% 展開後
$$
\sqrt{3 + 2\sqrt{2}} = \sqrt{2} + 1
$$
$$ \sqrt{3 + 2\sqrt{2}} = \sqrt{2} + 1 $$
この変形を LaTeX で表現するときは、等号でつなぐだけです。ルートを二段階に分解する過程を式中に示すことで、どのように変形したかが読者に伝わります。
4. ルートの高さを揃える——\vphantom のテクニック
問題:隣り合うルートの高さ不揃い
中身の背丈が異なる 2 つのルートを並べると、横棒の高さが揃わず見た目が悪くなります。
% 高さが揃わない例
$$
\sqrt{x} + \sqrt{x^2 + 1}
$$
$$ \sqrt{x} + \sqrt{x^2 + 1} $$
$\sqrt{x}$ の横棒は低く、$\sqrt{x^2 + 1}$ の横棒は高くなります。並べて書くと段差ができ、視線が分断される印象を受けます。
解決法:\vphantom{高い方の中身}
\vphantom{...} は「中身と同じ高さ・深さを持つが、横幅ゼロの透明なボックス」です。背の低いルートの中に入れることで、ルートの高さを背の高い方に合わせられます。

% \vphantom で高さを揃える
$$
\sqrt{\vphantom{x^2+1}x} + \sqrt{x^2 + 1}
$$
$$ \sqrt{\vphantom{x^2+1}x} + \sqrt{x^2 + 1} $$
\vphantom{x^2+1} を短い側($\sqrt{x}$ の中)に挿入することで、横棒の高さが揃います。\vphantom は透明なので、式の見た目には「$x$ と書いてあるのに高さだけ $x^2+1$ に合わせた」ようになります。
別の方法:\smash[b] で下揃え
ルートが長い式で上揃えでなく下揃えにしたい場合は \smash[b]{...} も使えます。ただし \vphantom のほうが直感的なため、まず \vphantom を試すのが定石です。
高さ揃えの問題を解決したところで、次は「そもそも \sqrt{} を使わないほうが読みやすい場面」について整理しましょう。
\phantomsection や \hphantom との違い
LaTeX にはいくつかの「ファントム(幻)」系コマンドがあります。混同しないように整理しておきましょう。
| コマンド | 効果 | 用途 |
|---|---|---|
\vphantom{X} |
高さ・深さは X と同じ、横幅ゼロ | ルートや括弧の高さ揃え |
\hphantom{X} |
横幅は X と同じ、高さ・深さゼロ | 水平方向の揃え |
\phantom{X} |
高さ・深さ・横幅すべて X と同じ | 式の穴埋め・位置合わせ |
\smash[b]{X} |
X を表示するが深さをゼロに | 下方向の飛び出しを抑える |
ルートの高さ揃えには \vphantom が最適です。\phantom では横幅も確保されてしまい、余分な空白ができます。\vphantom は「縦方向の幽霊(透明スペーサー)」と覚えておきましょう。
5. ルートを避ける流儀——$x^{1/2}$ との使い分け
指数表記 $x^{1/n}$ はいつ使うか
\sqrt[n]{x} と x^{1/n} は数学的に同じ意味です。どちらを使うかは「読み手にとってどちらが理解しやすいか」で決まります。

図の対応表が示すように、場面によって使い分けが変わります。
ルート記法 \sqrt{} が読みやすい場面
- 幾何・距離の文脈($\sqrt{x^2 + y^2}$ は直感的)
- 教科書・解説記事(読者が根号に慣れている)
- 最終結果の表示($\sqrt{5}$ のほうが
5^{1/2}より一目でわかる)
指数表記 x^{1/2} が読みやすい場面
- 微分の計算($\frac{d}{dx} x^{1/2} = \frac{1}{2} x^{-1/2}$ と自然につながる)
- 指数法則を連続して使うとき($x^{1/2} \cdot x^{1/3} = x^{5/6}$ はそのまま書ける)
- 複雑な分母にルートが入り数式が縦に伸びすぎる場合
% 指数法則の計算例:指数表記のほうが自然
$$
x^{1/2} \cdot x^{1/2} = x^{1/2 + 1/2} = x^1 = x
$$
% 微分の文脈:指数表記のほうが展開しやすい
$$
\frac{d}{dx} (a^2 + b^2)^{1/2} = \frac{1}{2}(a^2 + b^2)^{-1/2} \cdot 2a
$$
$$ \frac{d}{dx} (a^2 + b^2)^{1/2} = \frac{1}{2}(a^2 + b^2)^{-1/2} \cdot 2a $$
判断のポイント:ルート記号は「視覚的に中身が囲まれる」ため、短い式の最終結果を示すのに適しています。一方、指数表記は「べき乗算の一環として扱える」ため、連続した変形が続く導出過程に向いています。
どちらを使うかの具体的な判断フロー
迷ったときは次の順番で考えましょう。
- 式が孤立した最終結果か? → ルート記法($\sqrt{x}$ のほうが $x^{1/2}$ より一目で伝わる)
- 微分や積分が続くか? → 指数表記($\frac{d}{dx} x^{1/2}$ のほうが合成微分のルールと整合する)
- n 乗根が何重にも入れ子になっているか? → 指数表記($((x^2+y^2)^{1/2})^{1/3}$ のほうが
\sqrt[3]{\sqrt{x^2+y^2}}より可読性が高い) - 読者が文脈を共有しているか? → 物理・工学の速度・距離の文脈では $\sqrt{}$ が直感的。代数・解析の計算では $x^{1/n}$ が自然。
一貫性も大切です。同じ文書の中でルート記法と指数記法を同じ式に交互に使うと読者が混乱します。どちらかに統一し、切り替える場合は注記(例:「以後 $\sqrt{x} = x^{1/2}$ と書く」)を入れましょう。
それでは、実際の数式でコピペして使えるパターンを集めてみましょう。
6. 実戦コピペ例
二次方程式の解の公式
代数の定番公式です。ルートの中に引き算が入り、分数と組み合わせる典型例です。

$$
x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 - 4ac}}{2a}
$$
$$ x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4ac}}{2a} $$
判別式 $D = b^2 – 4ac$ を \sqrt{} で包むことで、「判別式の根を求める」という操作が一目で伝わります。$\pm$ は \pm で書きます。
標準偏差・ノルム・RMSE・黄金比

標準偏差
$$
\sigma = \sqrt{\frac{1}{N}\sum_{i=1}^N (x_i - \mu)^2}
$$
$$ \sigma = \sqrt{\frac{1}{N}\sum_{i=1}^N (x_i – \mu)^2} $$
分散($\sigma^2$)の平方根が標準偏差です。\sum と \frac がルートの中に入るパターンは統計・機械学習で非常に頻繁に登場します。
ユークリッドノルム
$$
\|\mathbf{x}\| = \sqrt{x_1^2 + x_2^2 + \cdots + x_n^2}
$$
$$ \|\mathbf{x}\| = \sqrt{x_1^2 + x_2^2 + \cdots + x_n^2} $$
ノルム記号 \| は \Vert でも書けます。ルートの中の各成分は添字 _1, _2 などで表します。
RMSE(二乗平均平方根誤差)
$$
\mathrm{RMSE} = \sqrt{\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (y_i - \hat{y}_i)^2}
$$
$$ \mathrm{RMSE} = \sqrt{\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (y_i – \hat{y}_i)^2} $$
予測値 $\hat{y}_i$ は \hat{y}_i と書きます(\hat と _i の組み合わせ)。RMSE は標準偏差と同じ形の式であることがルート記号を見るとよくわかります。
黄金比
$$
\varphi = \frac{1 + \sqrt{5}}{2}
$$
$$ \varphi = \frac{1 + \sqrt{5}}{2} $$
分子の中にルートが入る典型例です。$\sqrt{5}$ はルートの中身が 1 文字なので \sqrt{5} とします(\sqrt 5 だと素打ちで罠になる環境もあるため、中括弧付きの習慣をつけましょう)。
SNR(信号対雑音比)と電力・振幅の関係
信号処理や電気工学でよく使われる式も押さえておきましょう。
$$
\text{SNR}_{\mathrm{dB}} = 10 \log_{10} \frac{P_s}{P_n}
= 20 \log_{10} \frac{A_s}{A_n}
$$
振幅 $A$ とパワー $P$ は $P \propto A^2$ の関係があるため、振幅比を求める場面でルートが出てきます。
$$
A_s = \sqrt{P_s} \quad \Rightarrow \quad
\frac{A_s}{A_n} = \sqrt{\frac{P_s}{P_n}}
$$
$$ \frac{A_s}{A_n} = \sqrt{\frac{P_s}{P_n}} $$
その他の実戦パターン:複素数・フーリエ・量子力学
複素数の絶対値
$$
|z| = \sqrt{a^2 + b^2} \quad (z = a + bi)
$$
$$ |z| = \sqrt{a^2 + b^2} \quad (z = a + bi) $$
複素平面上の距離(絶対値)は実部と虚部の二乗和の平方根で表します。これはユークリッドノルムと同じ形です。
フーリエ変換のエネルギー(パーセバルの等式)
$$
\sqrt{\int_{-\infty}^{\infty} |f(t)|^2 \, dt}
= \sqrt{\int_{-\infty}^{\infty} |F(\omega)|^2 \, d\omega}
$$
$$ \sqrt{\int_{-\infty}^{\infty} |f(t)|^2 \, dt} = \sqrt{\int_{-\infty}^{\infty} |F(\omega)|^2 \, d\omega} $$
積分とルートを組み合わせる典型パターンです。\int を \sqrt{} の中に入れるだけで自然に書けます。
波動関数の規格化条件(量子力学)
$$
\langle \psi | \psi \rangle
= \int_{-\infty}^{\infty} |\psi(x)|^2 \, dx = 1
$$
量子力学では「確率の合計が 1」という規格化条件を満たす係数として $1/\sqrt{N}$ や $1/\sqrt{L}$ が頻繁に登場します。
$$
\psi_n(x) = \frac{1}{\sqrt{L}} e^{i k_n x}
$$
$$ \psi_n(x) = \frac{1}{\sqrt{L}} e^{i k_n x} $$
分母に \sqrt{L} を置くことで、規格化係数が明確に伝わります。ルートを分母に置く場合は \frac{1}{\sqrt{...}} の形がよく使われます。
実戦コピペ例を確認したところで、KaTeX 対応状況と陥りやすい間違いをまとめておきましょう。
7. KaTeX 互換表
本ブログ(KaTeX 使用)での各コマンドの対応状況をまとめます。
| コマンド | 表示 | KaTeX 対応 | 備考 |
|---|---|---|---|
\sqrt{x} |
$\sqrt{x}$ | 対応 | 基本コマンド |
\sqrt[n]{x} |
$\sqrt[n]{x}$ | 対応 | n 乗根 |
\sqrt{\frac{a}{b}} |
$\sqrt{\frac{a}{b}}$ | 対応 | 分数入りルート |
\sqrt{2+\sqrt{3}} |
$\sqrt{2+\sqrt{3}}$ | 対応 | 入れ子(二重根号) |
\vphantom{...} |
(透明) | 対応 | 高さ揃えに使う |
\smash[b]{...} |
— | 対応 | 深さを揃える別手法 |
\sqrt[\leftroot{-1}\uproot{2}n]{x} |
— | 非対応 | PDF 専用。amsmath 必要 |
x^{1/2} |
$x^{1/2}$ | 対応 | 指数表記(常に使える) |
まとめると、ブログ環境(KaTeX)では \leftroot / \uproot を除いてすべての \sqrt 関連コマンドが問題なく動作します。位置調整コマンドは PDF 出力(LaTeX コンパイル)の場面に限って使いましょう。
LaTeX(PDF 出力)での追加テクニック
LaTeX コンパイラ(pdflatex・lualatex・xelatex)では KaTeX より多くのコマンドが使えます。ブログでは使えませんが、論文・レポート提出用に知っておくと役立ちます。
n 乗根の指数位置を微調整する(amsmath)
% amsmath パッケージが必要
\usepackage{amsmath}
% 指数を左に -1、上に 2 ずらす
$\sqrt[\leftroot{-1}\uproot{2}n]{x}$
\leftroot{k} は指数を左に k 単位移動、\uproot{k} は k 単位上に移動します。デフォルトの位置が不格好なとき(n が大文字 N のような背の高い文字の場合など)に使います。
\surd:ルート記号だけ(横棒なし)
$\surd$
$\surd$ は横棒のないルート記号(√ の記号部分だけ)です。横棒を自分で描いたり、単に「√ に類する記号を出したい」場面でまれに使います。通常の数式では \sqrt{} を使いましょう。
nicefrac パッケージによる美しい斜め分数表記
\usepackage{nicefrac}
$x^{\nicefrac{1}{2}}$ % x の上に 1/2 を斜め分数で
指数部分に小さく分数を書く際、1/2 をより読みやすい形にする LaTeX 専用パッケージです。KaTeX では未対応のため、ブログでは x^{1/2} と直書きします。
8. よくある間違いと修正
間違い1:中括弧なし——\sqrt 2x が √2 × x になる
これが最も多い間違いです。
% NG:2 だけルートに入る
$\sqrt 2x$ → $\sqrt{2} \cdot x$
% OK
$\sqrt{2x}$ → $\sqrt{2x}$
修正:\sqrt の後は反射的に { を打つ習慣をつけてください。エディタの補完機能があれば積極的に利用しましょう。
間違い2:[] と {} の順序を逆にする
% NG:中身と指数が逆
$\sqrt{3}[x]$ → 3 がルートに入り、[x] は余分な文字
% OK
$\sqrt[3]{x}$ → 三乗根 ∛x
修正:\sqrt[指数]{中身} の語順は「指数が先、中身が後」と覚えましょう。
間違い3:負の数にそのままルートをかける——複素数の書き方
$\sqrt{-1}$ は実数の範囲では定義されません。LaTeX で書いた場合は記号として表示されますが、意味を正確に伝えるには虚数単位 $i$ を使う必要があります。
% 複素数の書き方
$$
i \coloneqq \sqrt{-1}
$$
% 複素根の例
$$
x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 - 4ac}}{2a}
= \frac{-b \pm i\sqrt{4ac - b^2}}{2a}
\quad (b^2 < 4ac)
$$
$$ i \coloneqq \sqrt{-1} $$
修正:虚数単位 i は $\sqrt{-1}$ の別名です。負の数にルートをかける場合は、係数として i を外に出す形で書くと読みやすくなります。
間違い4:\sqrt を \Sqrt や \SQRT と書く
LaTeX のコマンドは大文字・小文字を区別します。\Sqrt や \SQRT というコマンドは存在しないため、コンパイルエラーまたは KaTeX エラーになります。
% NG
$\Sqrt{x}$ % エラー
% OK
$\sqrt{x}$ % 全小文字
間違い5:\sqrt{} の外側を \left / \right で囲もうとする
ルートを括弧で囲むとき、\left( / \right) と組み合わせることがありますが、ルート自体は \left / \right 不要です。
% 正しい:ルートの中身だけを囲む
$$
\left( \sqrt{x^2 + y^2} \right)^2 = x^2 + y^2
$$
% NG:\left\sqrt は文法エラー
$$
\left\sqrt{x} % エラー:\sqrt は \left の対象外
$$
$$ \left( \sqrt{x^2 + y^2} \right)^2 = x^2 + y^2 $$
\left と \right は括弧系の記号((, [, \{, | など)と組み合わせます。\sqrt{} 自体は自動サイズ調整されるので、ルートの高さを括弧に合わせたい場合は \left( / \right) でルートごと囲めば OK です。
間違い6:ルートの中の - が引き算に見えない
ルートの横棒と引き算の - が視覚的に混在することがあります。スペースや \,(小スペース)を意識的に入れると読みやすくなります。
% \, でスペースを微調整
$$
\sqrt{\,b^2 - 4ac\,}
$$
$$ \sqrt{\,b^2 - 4ac\,} $$
まとめ
本記事では、LaTeX/KaTeX での \sqrt{} コマンドの使い方をリファレンス形式でまとめました。
| 操作 | コマンド |
|---|---|
| 平方根 | \sqrt{x} |
| n 乗根 | \sqrt[n]{x} |
| 分数入り | \sqrt{\frac{a}{b}} |
| 二重根号 | \sqrt{a + \sqrt{b}} |
| 高さ揃え | \sqrt{\vphantom{高い方}低い方} |
| 指数表記で逃げる | x^{1/2}, (a^2+b^2)^{1/2} |
押さえるべきポイントは 3 つです。
- 中括弧は必ず付ける——
\sqrt 2xは√2·xになる罠に注意 - n 乗根は
[n]を先に——\sqrt[3]{x}の順序を覚える - 指数表記と使い分ける——微分・指数法則の計算では
x^{1/2}のほうが展開しやすい
\vphantom による高さ揃えは知っておくと論文・レポートの仕上がりが格段によくなります。ルートを含む数式を美しく書くための 3 点セットとして、本記事を手元においておきましょう。
次のステップ:ルートが登場する数式へ
\sqrt{} を自在に書けるようになったら、次はルートが頻繁に登場する数式のジャンルに踏み込んでみましょう。
- 分数との組み合わせ:解の公式・規格化係数など、
\fracと\sqrtの組み合わせが多い。\dfracと\fracの使い分けを確認しておくと表示が安定します。 - ノルム:$\|\mathbf{x}\|$ と
\sqrt{\mathbf{x}^\top \mathbf{x}}は同じ意味ですが、書き方を文脈で選ぶ必要があります。\|...\|の書き方はLaTeX ノルムの書き方を参照してください。 - 積分:$\sqrt{\int |f|^2}$ の形は物理・信号処理で頻出です。
\intを\sqrt{}に入れるだけですが、上下限の書き方(_a^b)と組み合わせると字句が複雑になるため、\left(/\right)を活用しましょう。 - 総和・総積:標準偏差・RMSE・変動係数など、
\sumをルートの中に入れる形も統計系の式では必須です。
LaTeX の数式記述は「組み合わせ」のスキルです。個々のコマンドを覚えることよりも、「どのコマンドとどのコマンドが組み合わさった式か」を素早く読み解く練習を積むことが上達への近道です。