【LaTeX】ハット・チルダ・バーの書き方一覧|hat・tilde・bar・vec全アクセント記号をコピペ実例で解説

「LaTeX ハット」「latex バー」「チルダ latex」で検索してこのページにたどり着いた方の多くは、$\hat{x}$ や $\bar{x}$ のように文字の上に記号を乗せたいのに、コマンド名が思い出せない・複数文字に付けると表示が崩れる・そもそも $\bar{x}$ と $\overline{x}$ のどちらが正しいのか分からない、という状況ではないでしょうか。本記事はそうした疑問に一覧早見表とコピペできる実例で一気に答えるリファレンスです。

アクセント記号は単なる飾りではありません。同じ文字 $x$ でも、ハット $\hat{x}$ なら「推定値」、バー $\bar{x}$ なら「平均」、チルダ $\tilde{x}$ なら「近似・変換後の値」、ドット $\dot{x}$ なら「時間微分」を表すのが慣例で、文字の上の小さな記号1つに意味を載せる「数式表記の縮約装置」です。統計・機械学習では真のパラメータ $\theta$ と推定値 $\hat{\theta}$ の区別に、力学・制御では速度 $\dot{x}$・加速度 $\ddot{x}$ の表記に、毎日のように登場します。

同じ文字にアクセント記号を付けて意味を変える概念図

上の図のように、文字本体は変えず、上の記号だけを差し替えて意味を切り替えているのがポイントです。まずは結論を先に知りたい方のために、冒頭に全アクセント記号の一覧早見表を置きました。そのあと、検索ニーズの多い「文字の上にバーを書く方法(\bar\overline の使い分け)」を専用セクションで解説し、ハット・チルダ・wide系・統計での意味・太字ベクトルとの組み合わせ・KaTeX互換まで順番に見ていきます。

本記事の内容

  • 全アクセント記号の一覧早見表\hat \tilde \bar \vec \dot \ddot \check \breve \acute \grave \mathring + wide系)
  • 文字の上にバーを書く方法——\bar\overline の違いと使い分け(平均・共役・否定・線分)
  • 短いアクセントと幅広(wide)アクセントの使い分け(\hat vs \widehat
  • 統計・物理での意味——$\bar{x}$=標本平均、$\hat{\theta}$=推定量、$\tilde{x}$=中央値・近似、$\dot{x}$=時間微分
  • 太字ベクトル(\bm)との組み合わせ、アクセントの重ね合わせ、添字との順序
  • x̄ や θ̂ の記号そのもののコピペ一覧と KaTeX 互換表

前提知識

この記事を読む前に、以下の記事を読んでおくと理解が深まります。

なお本記事のサンプルはすべて、Webで数式を表示するKaTeX、および一般的なLaTeX(amsmathパッケージ)の両方で動作するように書いています。

一覧早見表:全アクセント記号をやりたいことから引く

細かい解説に入る前に、アクセント記号を一覧にまとめます。「とりあえずコピペしたい」という場合はこの表だけで用が足りることも多いはずです。どれも \コマンド{中身} という同じ形で書きます。

出力 コマンド 名称 主な用途
$\hat{a}$ \hat{a} ハット 推定値、単位ベクトル
$\tilde{a}$ \tilde{a} チルダ 近似値、中央値、変換後の値
$\bar{a}$ \bar{a} バー 平均値、共役、否定
$\vec{a}$ \vec{a} ベクトル矢印 ベクトル
$\dot{a}$ \dot{a} ドット 1階時間微分
$\ddot{a}$ \ddot{a} ダブルドット 2階時間微分
$\dddot{a}$ \dddot{a} トリプルドット 3階時間微分(amsmath)
$\check{a}$ \check{a} チェック 双対、再構成値
$\breve{a}$ \breve{a} ブレーベ 短い弧
$\acute{a}$ \acute{a} アキュート (数式では稀)
$\grave{a}$ \grave{a} グレーブ (数式では稀)
$\mathring{a}$ \mathring{a} リング オングストローム $\mathring{A}$
$\widehat{abc}$ \widehat{abc} 幅広ハット 複数文字のハット
$\widetilde{abc}$ \widetilde{abc} 幅広チルダ 複数文字のチルダ
$\overline{abc}$ \overline{abc} 上線 複数文字のバー、線分、否定
$\overrightarrow{AB}$ \overrightarrow{AB} 幅広矢印 線分ベクトル $\overrightarrow{AB}$
$\overleftrightarrow{AB}$ \overleftrightarrow{AB} 両方向矢印 直線 $\overleftrightarrow{AB}$
$\overbrace{abc}$ \overbrace{abc} 上波括弧 式の上の注釈
$\underline{abc}$ \underline{abc} 下線 強調
$\underbrace{abc}$ \underbrace{abc} 下波括弧 式の下の注釈

文字だけだと記号の形がイメージしづらいので、基本アクセントを「ソース(コマンド)→ 結果」の対比図にしておきます。左端のコマンドを書くと、中央の見た目になる、と読んでください。

基本アクセント記号一覧 hat tilde bar vec dot ddot dddot check breve

この一覧から、いくつかの実用的なポイントが読み取れます。第一に、\dot\ddot\dddot とドットの数が増えると微分の階数が上がること。第二に、\hat\check\breve はどれも山型・く の字型の小さな記号で見間違えやすいので、名称とセットで覚える必要があること。第三に、\acute\grave は本来ヨーロッパ言語の発音記号で、数式単独で使う場面はほとんどないことです。実務で頻出するのは上から6行(ハット・チルダ・バー・ベクトル矢印・ドット・ダブルドット)で、残りは「見たときに読めれば十分」という温度感で構いません。

なお \dddot(3点)は LaTeX 標準ではなく amsmath パッケージで提供されますが、本ブログの KaTeX では追加設定なしで使えます。4階微分の \ddddot まで用意されていますが、ここまで来るとライプニッツ記法 $\frac{d^4 a}{dt^4}$ のほうが読みやすいことが多いです。

コピペ実例:頻出3パターン

早見表のコマンドが実際の数式でどう使われるか、代表例を3つ挙げます。まず最小二乗法によるパラメータ推定です。

$$ \hat{\theta} = \underset{\theta}{\operatorname{argmin}} \sum_{i=1}^n (y_i – f(x_i; \theta))^2 $$

$\hat{\theta}$(シータハット)は「最適化によって得られたパラメータの推定値」を意味します。次に統計学で最頻出の標本平均です。

$$ \bar{x} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n x_i $$

そして力学の時間微分(ニュートン記法)です。

$$ \dot{x} = \frac{dx}{dt}, \quad \ddot{x} = \frac{d^2x}{dt^2} $$

$\hat{\theta} = \underset{\theta}{\operatorname{argmin}} \sum_{i=1}^n (y_i - f(x_i; \theta))^2$
$\bar{x} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n x_i$
$\dot{x} = \frac{dx}{dt}, \quad \ddot{x} = \frac{d^2x}{dt^2}$

一覧を押さえたところで、検索ニーズが最も多い「文字の上にバーを書く方法」から詳しく見ていきましょう。ここには \bar\overline という2つのコマンドがあり、使い分けを知らないと見た目が崩れます。

文字の上にバーを書く:\bar と \overline の使い分け

\bar:1文字の上にバー(xバー・平均値)

「エックスバー($\bar{x}$)を書きたい」——文字の上にバー(上線・マクロン)を付ける最も基本のコマンドが \bar です。

$\bar{x}$   % xバー
$\bar{y}$   % yバー
$\bar{X}$   % 大文字にも付けられる

\bar の代表的な用途は標本平均です。$n$ 個のデータ $x_1, \dots, x_n$ を1つの代表値にまとめたものを $\bar{x}$ と書きます。

$$ \bar{x} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n x_i $$

$$
\bar{x} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n x_i
$$

平均を表すバー記号

図では、青い点が個々のデータ $x_i$、赤い破線がそれらの平均 $\bar{x}$ です。バラついた点群が、たった1本の水平線(=1つの数値 $\bar{x}$)に要約されている様子が読み取れます。バーは「集合をならして1つにする」操作のサインとして、時間平均 $\bar{f}$ や平均速度 $\bar{v}$ など、平均一般に広く使われます。

\overline:複数文字・式全体の上にバー

\bar は1文字専用です。2文字以上に付けると、バーが最初の1文字分の長さしかなく不格好になります。複数文字や式全体を覆いたいときは \overline を使います。

$$ \bar{AB} \quad \text{vs} \quad \overline{AB} $$

$\bar{AB}$        % バーが短くて崩れる(NG)
$\overline{AB}$   % 全体を覆う(OK)
$\overline{x+y}$  % 式全体にも掛けられる

\overline は中身の幅に合わせて線が自動的に伸びるので、幾何学の線分 $\overline{AB}$、複素共役 $\overline{z}$($z\overline{z} = |z|^2$)、式全体の平均 $\overline{x+y}$ などに使います。バーの幅広版だけ名前が \widebar ではなく \overline である点に注意してください(\widebar は標準には存在しません)。複素共役の性質を書くと、線の伸び方の違いがよく分かります。

$$ \overline{z_1 z_2} = \overline{z_1}\,\overline{z_2}, \qquad \overline{\overline{z}} = z $$

$$
\overline{z_1 z_2} = \overline{z_1}\,\overline{z_2}, \qquad \overline{\overline{z}} = z
$$

左辺では積 $z_1 z_2$ 全体を1本の線が覆い、右辺では各因子に個別の線が付いています。バーの掛かる範囲がそのまま「どこまでを共役するか」を表しています。

否定・補集合のバー

論理学・集合論では、バーは否定・補集合の記号としても使われます。集合 $A$ の補集合を $\bar{A}$、事象 $A$ の余事象を $\bar{A}$ と書く流儀です。複数の要素からなる式を否定するときは \overline で全体を覆います。ド・モルガンの法則が典型例です。

$$ \overline{A \cup B} = \bar{A} \cap \bar{B} $$

$$
\overline{A \cup B} = \bar{A} \cap \bar{B}
$$

確率論の余事象も同じバーです。

$$ P(\bar{A}) = 1 – P(A) $$

$P(\bar{A}) = 1 - P(A)$   % 余事象の確率

「どこまでバーが掛かっているか」=「どこまで否定されているか」なので、否定の範囲に合わせて \bar(1文字)と \overline(式全体)を使い分けることが、そのまま数学的な意味の違いになります。

使い分けの結論

状況 推奨コマンド
1文字の上にバー(平均・共役・否定) \bar{x} $\bar{x}$
複数文字・式全体の上にバー \overline{AB} $\overline{AB}$
線分 \overline{AB} $\overline{AB}$
1文字に \overline 非推奨(線が長すぎる) $\overline{x}$

1文字なら \bar、2文字以上なら \overline。この基準はハットとチルダにもそのまま当てはまります。次はハットの短い版と幅広版を見ていきましょう。

ハットの書き方:\hat と \widehat

1文字には \hat、複数文字には \widehat

「シータハット($\hat{\theta}$)」「ワイハット($\hat{y}$)」のように、1文字にハット(山型記号・サーカムフレックス)を付けるのが \hat です。

$\hat{x}$        % xハット
$\hat{\theta}$   % シータハット(推定値)
$\hat{y}$        % ワイハット(予測値)
$\hat{v}$        % 単位ベクトル

バーと同じく、複数文字には幅広版の \widehat を使います。

$$ \hat{xy} \quad \text{vs} \quad \widehat{xy} $$

左が \hat{xy}、右が \widehat{xy} です。\hat では記号が中央の1文字に乗るだけですが、\widehat は文字列全体を覆います。文字数を増やしていくと、この差は一目瞭然になります。

hatとwidehatの幅の違い比較

この図は、\hat\widehatxxyABCABCDE を渡したときの違いを並べたものです。左の \hat は文字数が増えても帽子の幅が変わらず、ABCDE ともなると記号が真ん中の1文字に乗っているだけに見えてしまいます。一方、右の \widehat は中身の幅に合わせて記号が自動的に伸び、全体を山型に覆っています。逆に、1文字に \widehat を使うと記号が大きすぎて間延びするので、1文字には素直に \hat を使うのが見栄えがよくなります。

\widehat は添字付きのパラメータに使うと便利です。最尤推定量なら次のように書きます。

$$ \widehat{ABC}, \quad \widehat{\bm{x}}, \quad \widehat{\theta_{\text{ML}}} $$

$$
\widehat{ABC}, \quad \widehat{\bm{x}}, \quad \widehat{\theta_{\text{ML}}}
$$

wide系アクセントの対応表

ハット・チルダ・バーの「短い版/幅広版」の対応をまとめて並べると、覆う範囲の違いがはっきりします。

短いアクセント 幅広アクセント 用途
\hat{AB} → $\hat{AB}$ \widehat{AB} → $\widehat{AB}$ 幅広ハット
\tilde{AB} → $\tilde{AB}$ \widetilde{AB} → $\widetilde{AB}$ 幅広チルダ
\bar{AB} → $\bar{AB}$ \overline{AB} → $\overline{AB}$ 上線

短いアクセントと幅広wideアクセントの対比

左列(赤)が短い版、右列(緑)が幅広版で、どちらも ABC という3文字に対して付けています。短い版はいずれも記号が中央の文字に乗るだけですが、幅広版(\widehat\widetilde\overline)は3文字全体に被さっているのがわかります。ハットには \widehat、チルダには \widetilde、バーには \overline という対応さえ覚えておけば、複数文字に付けたいときに迷いません。

wide系のコピペ実例もまとめて載せておきます。

$$ \widehat{\theta_{\text{ML}}}, \quad \widetilde{f}(k), \quad \overline{AB}, \quad \overline{x + y} $$

$\widehat{\theta_{\text{ML}}}$  % 最尤推定量(添字ごと覆う)
$\widetilde{f}(k)$              % 変換後の関数
$\overline{AB}$                 % 線分AB
$\overline{x + y}$              % 式全体の上線

残るはチルダです。チルダには「文字の上に付ける」以外に「チルダ記号そのものを出したい」という需要もあるので、あわせて解説します。

チルダの書き方:\tilde と \widetilde

文字の上にチルダを付ける

文字の上にチルダ(波線)を付けるコマンドが \tilde、複数文字用が \widetilde です。

$$ \tilde{x}, \quad \tilde{\mu}, \quad \widetilde{f}(k), \quad \widetilde{\bm{A}} $$

$\tilde{x}$          % 1文字のチルダ
$\widetilde{f}(k)$   % 複数文字・添字付きには widetilde

$\tilde{x}$ は「$x$ に関係する別の量」を表す万能記号で、用途を整理すると次の3系統になります。

用途 分野
近似値・摂動後の量 $\tilde{x} \approx x$ 数値解析・物理
中央値 $\tilde{x} = \operatorname{med}(x_1, \dots, x_n)$ 統計学
変換後・正規化後の変数 $\widetilde{f}(k)$(フーリエ変換後) 信号処理

いずれも「元の $x$ の親戚だが、同じものではない」ことを示すマーカーとして働いています。

チルダ記号そのものを出したいとき

「文字の上」ではなく、チルダという記号単体を数式に出したい場合はコマンドが変わります。「$a$ は $b$ と同程度(オーダー評価)」「確率変数が分布に従う」を表す波線は \sim です。

$$ X \sim N(\mu, \sigma^2), \quad f(n) \sim n^2 $$

~(生のチルダ)はLaTeXでは「改行しない空白」という別の意味を持つ特殊文字なので、記号として出したいときに直接タイプしてはいけません。地の文でチルダ文字を出すなら \textasciitilde を使います。近似記号の使い分けは近似記号(≒・≈・〜)の書き方で詳しく解説しています。

ここまでで「どう書くか」は一通り揃いました。しかしアクセント記号は「どういう意味で使うか」を知っておくと、論文を読むときも書くときも迷いません。次は統計・物理での慣用的な意味を見ていきます。

統計・物理でのアクセント記号の意味

ハットの意味:推定量・予測値(θ̂・ŷ)

統計学・機械学習でハットが活躍する最大の場面は、「本当は知りたいが直接は見えない真の量」と「データから計算して得た推定量」を区別するときです。真のパラメータを $\theta$ とすると、それをデータから推定した値を $\hat{\theta}$(シータハット)と書きます。同じ文字に帽子をかぶせるだけで、「これは生の真値ではなく、推定によって得たものだ」という但し書きを付けられるわけです。

推定量を表すハット記号

図のように、左の $\theta$(未知の真値)から推定を通して右の $\hat{\theta}$(データから得た値)が得られる、という関係をハット1つで表します。回帰分析の予測値 $\hat{y}$、最小二乗推定量 $\hat{\beta}$、分散の推定値 $\hat{\sigma}^2$ もすべてこの慣習です。単回帰の予測式を書くと、ハットだらけになります。

$$ \hat{y}_i = \hat{\beta}_0 + \hat{\beta}_1 x_i $$

$\hat{y}_i = \hat{\beta}_0 + \hat{\beta}_1 x_i$

「データから計算したものにはすべてハットが付き、真値・観測値そのもの($x_i$)には付かない」というルールが徹底されているのが分かります。推定量の一致性(サンプルが増えるほど真値に近づく性質)は、ハット付きの記号で次のように簡潔に書けます。

$$ \hat{\theta}_n \xrightarrow{P} \theta \quad (n \to \infty) $$

$\hat{\theta}_n \xrightarrow{P} \theta \quad (n \to \infty)$

$\hat{\theta}_n$ と $\theta$ が同じ文字で書かれているからこそ、「推定値が真値に近づく」という主張が一目で伝わるのです。

バーとチルダの意味:平均・中央値・近似

統計でよく見るアクセントの意味を1つの表にまとめます。

表記 LaTeX 読み方 意味
$\bar{x}$ \bar{x} エックスバー 標本平均
$\hat{\theta}$ \hat{\theta} シータハット パラメータの推定値
$\hat{y}$ \hat{y} ワイハット 予測値
$\hat{p}$ \hat{p} ピーハット 標本比率
$\tilde{x}$ \tilde{x} エックスチルダ 中央値(流儀による)、変換後の値
$\overline{z}$ / $\bar{z}$ \overline{z} ゼットバー 共役複素数

「バー=データをならした平均、ハット=データから作った推定値、チルダ=元の変数の親戚(中央値・近似・変換後)」という対応を頭に入れておくと、統計の教科書や論文がぐっと読みやすくなります。ただし $\tilde{x}$ を中央値とするのは絶対的な規約ではなく分野・著者によるので、初出時に定義を確認する(自分が書くときは定義を明記する)のが安全です。

ギリシャ文字へのアクセント

アクセントは英字だけでなく、ギリシャ文字にもそのまま付けられます。\hat{\theta} のように、中身にギリシャ文字のコマンドを書くだけです。

$$ \hat{\theta}, \quad \tilde{\mu}, \quad \bar{\lambda}, \quad \dot{\phi}, \quad \hat{\sigma}^2, \quad \widehat{\Theta} $$

$\hat{\theta}$   % パラメータ推定値
$\hat{\sigma}^2$ % 分散の推定値
$\hat{\mu}$      % 平均の推定値
$\dot{\phi}$     % 角度の時間微分(角速度)

アクセントの仕組みは「中身が何であっても上に記号を乗せる」だけなので、英字・ギリシャ文字・太字を問わず同じ書き方で通用します。\widehat{\Theta} のように大文字ギリシャ文字に幅広ハットを付けることもできます。

分野別チートシート:信号処理・複素解析・力学

統計以外の分野の慣用もまとめておきます。フーリエ解析・信号処理では、変換後の関数をハットやチルダで表します。

表記 LaTeX 意味
$\hat{f}(\omega)$ \hat{f}(\omega) フーリエ変換
$\tilde{f}(k)$ \tilde{f}(k) 離散フーリエ変換
$\bar{f}$ \bar{f} 時間平均
$\bar{z}$ / $\overline{z}$ \bar{z} / \overline{z} 共役複素数
$\dot{\phi}$ \dot{\phi} 角速度
$\hat{\bm{n}}$ \hat{\bm{n}} 単位法線ベクトル
$\hat{\bm{e}}_r$ \hat{\bm{e}}_r 動径方向の単位ベクトル
$\bar{v}$ \bar{v} 平均速度

たとえばフーリエ変換の定義と、複素共役の基本性質は次のように書けます。

$$ \hat{f}(\omega) = \int_{-\infty}^{\infty} f(t) e^{-i\omega t} \, dt, \qquad z \bar{z} = |z|^2 $$

同じハットでも、統計では「推定量」、信号処理では「フーリエ変換」と分野で意味が変わります。論文を読むときは、その分野の慣用を前提に読み解いてください。

ハットの意味その2:単位ベクトル(物理学・幾何)

物理や幾何では、ハットは「長さ1のベクトル(単位ベクトル)」を表す約束でも使われます。あるベクトル $\vec{v}$ を、その大きさ $|\vec{v}|$ で割って向きだけを取り出したものが単位ベクトル $\hat{v}$ です。

$$ \hat{v} = \frac{\vec{v}}{|\vec{v}|} $$

$$
\hat{v} = \frac{\vec{v}}{|\vec{v}|}
$$

単位ベクトルを表すハット記号

図の青い矢印が元のベクトル $\vec{v}$、赤い矢印が単位ベクトル $\hat{v}$ で、破線の円は半径1を示します。$\hat{v}$ の先端がちょうど円周上に乗っており、「向きは同じで長さだけ1にそろえた」ことが見て取れます。座標系の基底ベクトルを $\hat{x}, \hat{y}, \hat{z}$ や $\hat{e}_r$(動径方向の単位ベクトル)と書くのもこの慣習です。統計の「推定値のハット」と物理の「単位ベクトルのハット」は同じ記号の別の意味なので、文脈で読み分けてください。

ドットの意味:時間微分(力学・制御)

力学では、時間微分をドットで表すニュートン記法が定番です。位置 $x$ に対して、ドット1つの $\dot{x}$ が速度、ドット2つの $\ddot{x}$ が加速度です。

$$ \dot{x} = \frac{dx}{dt}, \quad \ddot{x} = \frac{d^2x}{dt^2} $$

ドット記法による時間微分

図は位置 $x=\sin t$ とその速度 $\dot{x}=\cos t$、加速度 $\ddot{x}=-\sin t$ を重ねたものです。位置の山の傾きが最大になる点で速度がピークになり、さらにその速度の傾きから加速度が決まる、という微分の連鎖が3本の曲線として可視化されています。ドットの個数がそのまま微分の階数に対応しているので、$\frac{d^2x}{dt^2}$ と書くより $\ddot{x}$ のほうがはるかにコンパクトです。

表記 LaTeX 意味
$\dot{x}$ \dot{x} 速度(1階時間微分)
$\ddot{x}$ \ddot{x} 加速度(2階時間微分)
$\dddot{x}$ \dddot{x} 加加速度・ジャーク(3階時間微分)

ニュートンの運動方程式もドット記法で簡潔に書けます。

$$ m\ddot{\bm{r}} = \bm{F} $$

$$
m\ddot{\bm{r}} = \bm{F}
$$

$\ddot{\bm{r}}$ は位置ベクトル $\bm{r}$ の2階時間微分、すなわち加速度です。意味の整理ができたところで、実際の論文で頻出する「太字ベクトルとの組み合わせ」に進みましょう。上の運動方程式にも、すでに \ddot と太字 \bm の合わせ技が登場しています。

太字ベクトル・矢印との組み合わせ

アクセント × 太字(\bm)

ベクトルを太字で書く流儀では、アクセントは太字コマンド \bm(または \mathbf)の外側に付けます。内側から「文字 → 太字 → アクセント」の順に包む、と覚えてください。

$$ \hat{\bm{n}}, \quad \bar{\bm{x}}, \quad \ddot{\bm{r}}, \quad \widehat{\bm{\theta}} $$

$\hat{\bm{n}}$      % 単位法線ベクトル
$\bar{\bm{x}}$      % ベクトルの平均
$\ddot{\bm{r}}$     % 位置ベクトルの2階時間微分(加速度)
$\widehat{\bm{\theta}}$  % パラメータベクトルの推定量

推定量がベクトルの場合は $\hat{\bm{\theta}}$ または $\widehat{\bm{\theta}}$、単位法線ベクトルは $\hat{\bm{n}}$、と組み合わせは自由です。太字の書き分け自体はベクトルの太字・矢印記号をLaTeXで書く数式・文字を太字にする方法を参照してください。

i・j にアクセントを付けるときは点なし文字(\imath・\jmath)

細かいですが仕上がりに効くのが、$i$ や $j$ にアクセントを付けるときの扱いです。\hat{i} と書くと、$i$ の点とハットが縦に重なって窮屈になります。点なしの \imath\jmath を使うのが組版の作法です。

$$ \hat{\imath}, \quad \hat{\jmath} \quad \text{vs} \quad \hat{i}, \quad \hat{j} $$

$\hat{\imath}$, $\hat{\jmath}$   % 点なし(推奨)
$\hat{i}$, $\hat{j}$             % 点とハットが重なる

座標の単位ベクトルを $\hat{\imath}, \hat{\jmath}, \hat{k}$ と書く教科書流儀では必須のテクニックです($k$ にはもともと点がないのでそのままで構いません)。

\vec と \overrightarrow:矢印系のアクセント

矢印でベクトルを表す流儀では、1文字用の \vec と、複数文字を覆う \overrightarrow を使い分けます。関係はちょうど \hat\widehat と同じです。

出力 コマンド 用途
$\vec{a}$ \vec{a} 1文字のベクトル
$\overrightarrow{AB}$ \overrightarrow{AB} 始点Aから終点Bへの線分ベクトル
$\overleftarrow{AB}$ \overleftarrow{AB} 左向き矢印
$\overleftrightarrow{AB}$ \overleftrightarrow{AB} 直線(両方向)
$\overbrace{abc}$ \overbrace{abc} 上波括弧(注釈用)

矢印や上線などの上下修飾記号一覧

この図から、用途の違いが読み取れます。1文字のベクトルなら \vec{a}、始点と終点を持つ「線分ベクトル $\overrightarrow{AB}$」なら \overrightarrow、という幾何での使い分けが典型です。直線 $\overleftrightarrow{AB}$ と線分 $\overline{AB}$ もこの仲間で、図形を文字列の上の記号で表す慣習になっています。

下側の修飾記号:\underline と \underbrace

文字や式の「下」に記号を置くコマンドもあります。

出力 コマンド 用途
$\underline{abc}$ \underline{abc} 下線(強調・特定の量にマーク)
$\underbrace{abc}$ \underbrace{abc} 下波括弧(注釈付き)
$\underleftarrow{AB}$ \underleftarrow{AB} 下の左向き矢印

\underbrace は、式の一部に「これは○○の項だ」と注釈を付けるのに便利で、添字で説明文を添えられます。

$$ \underbrace{a^2 + 2ab + b^2}_{(a+b)^2} $$

$$
\underbrace{a^2 + 2ab + b^2}_{(a+b)^2}
$$

詳しくは波括弧の注釈(underbrace・overbrace)で解説しています。

組み合わせの最後のピースは「アクセント同士の重ね合わせ」です。制御工学の式で必ず出てくるので押さえておきましょう。

アクセントの重ね合わせ

1つの文字に2つのアクセントを重ねることも可能です。アクセントは外側のコマンドが上に配置されます。

$$ \hat{\dot{x}}, \quad \dot{\hat{x}}, \quad \bar{\hat{x}} $$

$\dot{\hat{x}}$   % ハットの上にドット =「推定値の時間微分」
$\hat{\dot{x}}$   % ドットの上にハット =「微分値の推定」

\dot{\hat{x}}\hat{\dot{x}} は記号の上下だけでなく意味も変わる(推定してから微分するのか、微分値を推定するのか)ので、順序に気を付けてください。実戦例として、制御工学のカルマンフィルタでは「状態推定値の時間微分」が登場します。

$$ \dot{\hat{\bm{x}}} = \bm{A}\hat{\bm{x}} + \bm{K}(\bm{y} – \bm{C}\hat{\bm{x}}) $$

$$
\dot{\hat{\bm{x}}} = \bm{A}\hat{\bm{x}} + \bm{K}(\bm{y} - \bm{C}\hat{\bm{x}})
$$

ここでは \dot{\hat{\bm{x}}} のように3重のコマンドを重ねています。太字(\bm)、ハット(\hat)、ドット(\dot)の順で内側から適用しています。なお、アクセントを3つ以上重ねると表示が崩れる場合があるため、重ねるのは2つまでに留めるのが実用的です。

重ね合わせと並んでつまずきやすいのが「添字との順序」です。書き方を間違えると見た目がはっきり崩れるポイントなので、次で確認します。

添字との順序:\hat{\theta}_n と \hat{\theta_n} は別物

アクセントを付けた文字に添字を付ける場合、アクセントは「素の1文字」に付け、添字はその外側に書くのがコツです。

$$ \hat{\theta}_n, \quad \bar{x}_i, \quad \dot{q}_k $$

$\hat{\theta}_n$   % 推奨:ハットはθだけ、添字は外
$\hat{\theta_n}$   % 非推奨:添字までハットの下に入る

なぜ順序が大事なのか、良い例と悪い例を図で比べてみましょう。

アクセント文字に添字を付ける順序

左(緑)が推奨の \hat{\theta}_n、右(赤)が \hat{\theta_n} です。添字までハットの中括弧に入れてしまうと、$\theta$ と $n$ の両方の上にハットが広がり、添字の $n$ までハットの下に押し込まれて不格好になります。「アクセントは本体の1文字に、添字はアクセントの外に」と覚えておけば安全です。上付き・下付きの基本は上付き・下付き文字の書き方も参照してください。

実戦コピペ集:アクセント記号を使う定番の式

ここまでの内容を組み合わせた、実際のレポート・論文で使う形の式をまとめてコピペできるようにしておきます。まず統計の定番、平均の信頼区間です。

$$ \bar{x} – z_{\alpha/2}\frac{\hat{\sigma}}{\sqrt{n}} \;\leq\; \mu \;\leq\; \bar{x} + z_{\alpha/2}\frac{\hat{\sigma}}{\sqrt{n}} $$

$$
\bar{x} - z_{\alpha/2}\frac{\hat{\sigma}}{\sqrt{n}} \;\leq\; \mu \;\leq\; \bar{x} + z_{\alpha/2}\frac{\hat{\sigma}}{\sqrt{n}}
$$

標本平均 $\bar{x}$(バー)と標準偏差の推定値 $\hat{\sigma}$(ハット)で、未知の母平均 $\mu$(アクセントなし=真値)を挟み込む——「観測から計算したものにアクセント、真値は素のまま」という約束が1本の式に凝縮されています。次に物理の定番、ベクトルの基底分解です。

$$ \bm{v} = v_x \hat{\bm{x}} + v_y \hat{\bm{y}} + v_z \hat{\bm{z}} $$

$$
\bm{v} = v_x \hat{\bm{x}} + v_y \hat{\bm{y}} + v_z \hat{\bm{z}}
$$

任意のベクトルを、ハット付きの単位ベクトル $\hat{\bm{x}}, \hat{\bm{y}}, \hat{\bm{z}}$ の重ね合わせで表す書き方です。成分 $v_x$ は数(スカラー)なのでアクセントも太字も付かない、という区別に注目してください。

ここまではLaTeXが使える環境の話でした。WordやSlackなどLaTeXが使えない場所のために、記号そのもののコピペ一覧も用意しておきます。

記号そのものをコピペしたいとき(x̄・x̂・x̃)

LaTeXが使えない場所——Word、Googleドキュメント、Slack、メールなど——では、Unicodeの合成文字を直接貼り付けるのが早道です。よく使うものを一覧にしました。

記号 読み方 意味 LaTeXで書くなら
エックスバー 標本平均 \bar{x}
ȳ ワイバー yの平均 \bar{y}
エックスハット xの推定値 \hat{x}
ŷ ワイハット 予測値 \hat{y}
ピーハット 標本比率 \hat{p}
θ̂ シータハット パラメータ推定値 \hat{\theta}
μ̂ ミューハット 平均の推定値 \hat{\mu}
σ̂ シグマハット 標準偏差の推定値 \hat{\sigma}
β̂ ベータハット 回帰係数の推定値 \hat{\beta}
ゼットバー 共役複素数 \bar{z}
エックスチルダ 中央値・近似値 \tilde{x}
エックスドット 速度(時間微分) \dot{x}
エックスダブルドット 加速度 \ddot{x}

これらはUnicodeの結合文字(合成用マクロンU+0304、合成用サーカムフレックスU+0302など)を使ったもので、フォントや環境によっては記号の位置がずれて表示されることがあります。レポートや論文ではLaTeXで組む方が確実です。

最後に、本ブログでも使っているKaTeXでの対応状況と、よくある間違いをまとめておきます。

KaTeXとの互換性

コマンド KaTeX対応 備考
\hat 対応
\widehat 対応
\tilde 対応
\widetilde 対応
\bar 対応
\overline 対応 \widebar は存在しない
\vec 対応
\overrightarrow 対応 \overleftarrow \overleftrightarrow も対応
\dot / \ddot 対応
\dddot / \ddddot 対応 amsmath由来だがKaTeXで使える
\check / \breve 対応
\mathring 対応
\acute / \grave 対応
\overbrace / \underbrace 対応 mathtext(matplotlib)は\underbrace非対応
\underline 対応 mathtext(matplotlib)は非対応
\stackrel / \overset / \underset 対応

KaTeXでは本記事のアクセント記号がすべてサポートされています。注意が必要なのはブログ用の図をmatplotlibで作るときで、mathtextは \underbrace\underline に対応していません。記事に図を作る際の落とし穴です。

よくある間違いとTips

間違い1:\hat や \bar を複数文字に使う

% 見た目が崩れる
$\hat{xy}$, $\bar{AB}$

% 正しい
$\widehat{xy}$, $\overline{AB}$

2文字以上には wide系(\widehat\widetilde\overline)を使いましょう。逆に1文字に \overline を使うと線が長すぎて間延びすることがあるので、1文字には \bar が無難です。

間違い2:ドット記法の階数の欲張りすぎ

ドット記法は実用上は2階(加速度)まで、せいぜい3階までです。\dddot(3点)は amsmath/KaTeX で使えますが、4階以上はドットの数が読み取りにくくなるので、ライプニッツ記法に切り替えるのが読みやすくなります。

$\dot{x}$    % 1階微分
$\ddot{x}$   % 2階微分
$\dddot{x}$  % 3階微分(amsmath / KaTeX なら可)
$\frac{d^4 x}{dt^4}$  % 4階以上はライプニッツ記法が読みやすい

間違い3:添字をアクセントの中に入れる

前述のとおり、\hat{\theta_n} ではなく \hat{\theta}_n と書きます。アクセントは素の1文字に、添字は外側に。

Tips:\stackrel と \overset で記号の上に注釈を置く

アクセントの親戚として、任意の記号の上に文字を置くコマンドも覚えておくと便利です。「定義により等しい」の $\stackrel{\text{def}}{=}$ が代表例です。

$$ \bm{A} \stackrel{\text{def}}{=} \bm{B}^\mathrm{T}\bm{B}, \quad X \overset{d}{\sim} N(\mu, \sigma^2) $$

$\bm{A} \stackrel{\text{def}}{=} \bm{B}^\mathrm{T}\bm{B}$
$X \overset{d}{\sim} N(\mu, \sigma^2)$

\overset{上}{本体}\underset{下}{本体} はより汎用的に、任意の記号の上下に注釈を配置できます。

よくある質問(FAQ)

最後に、アクセント記号まわりで検索されることの多い疑問に短く答えておきます。

Q. LaTeXで文字の上にバーを付けるには?

A. 1文字なら \bar{x}($\bar{x}$)、複数文字や式全体なら \overline{AB}($\overline{AB}$)です。\widebar というコマンドは存在しません。

Q. xバー($\bar{x}$)とはどういう意味?

A. 統計学では標本平均を表します。$n$ 個のデータの合計を $n$ で割った値です。複素解析で $\bar{z}$ と書けば共役複素数、集合論で $\bar{A}$ と書けば補集合と、分野によって意味が変わります。

Q. ハット記号($\hat{x}$)の意味は?

A. 統計・機械学習では「データから推定した値」($\hat{\theta}$=推定量、$\hat{y}$=予測値)、物理では「長さ1の単位ベクトル」($\hat{v} = \vec{v}/|\vec{v}|$)を表すのが慣例です。

Q. \hat{xy} の表示が崩れるのはなぜ?

A. \hat は1文字専用だからです。2文字以上を覆いたいときは \widehat{xy} を使ってください。チルダなら \widetilde、バーなら \overline が幅広版です。

Q. バーが短すぎる/長すぎるときは?

A. 短すぎる(複数文字を覆えない)なら \bar\overline に、逆に1文字の上の線が長すぎるなら \overline\bar に替えます。中身の幅に応じて自動で伸びるのは \overline だけです。

Q. $\dot{x}$(エックスドット)の意味は?

A. 時間 $t$ による微分 $\frac{dx}{dt}$ を表すニュートン記法です。$\dot{x}$ が速度、$\ddot{x}$ が加速度で、力学・制御工学で頻出します。LaTeXでは \dot{x}\ddot{x} と書きます。

Q. チルダ記号「~」そのものを数式に出すには?

A. 「同程度・分布に従う」の意味なら \sim($\sim$)です。生の ~ はLaTeXでは改行しない空白という別の意味になるので、記号としては使えません。地の文では \textasciitilde を使います。

Q. WordやSlackで x̄ や θ̂ を入力するには?

A. LaTeXが使えない環境では、Unicodeの合成文字をコピペするのが早道です。前述の「記号そのものをコピペしたいとき」の一覧から x̄・ŷ・θ̂・x̃ などをそのまま貼り付けてください。

まとめ

本記事では、LaTeXのアクセント記号(ハット・チルダ・バーほか)の書き方を一覧で解説しました。

  • バー: \bar{x}(1文字・平均 $\bar{x}$)、\overline{AB}(複数文字・線分・共役・否定)——\widebar は存在しない
  • ハット: \hat{x}(1文字)、\widehat{xyz}(複数文字)——推定値 $\hat{\theta}$、単位ベクトル $\hat{v}$
  • チルダ: \tilde{x}(1文字)、\widetilde{xyz}(複数文字)——近似・中央値・変換後。記号単体は \sim
  • ドット: \dot{x}(速度)、\ddot{x}(加速度)——ニュートン記法の時間微分
  • ベクトル: \vec{a}(1文字)、\overrightarrow{AB}(線分ベクトル)、太字とは $\hat{\bm{n}}$ のように外側から重ねる
  • 統計での意味: $\bar{x}$=標本平均、$\hat{\theta}$=推定量、$\hat{y}$=予測値、$\tilde{x}$=中央値
  • 使い分けの基準: 覆う対象が1文字なら短い版、2文字以上なら幅広(wide)版
  • 添字の順序: アクセントは素の1文字に、添字はその外側に(\hat{\theta}_n
  • 重ね合わせ: 太字 → ハット → ドットの順に内側から重ねる(\dot{\hat{\bm{x}}})。3重までが実用限界

アクセント記号を適切に使うことで、少ない文字数で豊富な意味を表現できます。コマンドが似ていて迷いがちですが、「1文字か複数文字か」「どの意味で使うか」で整理すれば、冒頭の早見表を逆引きするだけで適切なコマンドを選べるはずです。

次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。

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