LaTeXでギリシャ文字を書く方法 — 小文字・大文字・変体の一覧【コピペ可】

ギリシャ文字は数学・物理学・工学の数式において欠かせない存在です。角度の $\theta$、円周率の $\pi$、学習率の $\alpha$、波長の $\lambda$ など、ギリシャ文字にはそれぞれ分野ごとの慣習的な意味があります。

LaTeXでは、ギリシャ文字はバックスラッシュに続けて文字の英語名を書くだけで出力できます。しかし、大文字と小文字、通常体と変体(バリアント)の使い分けなど、知っておくべきポイントがいくつかあります。

本記事の内容

  • 小文字ギリシャ文字の一覧と書き方
  • 大文字ギリシャ文字の一覧と書き方
  • 変体(バリアント)ギリシャ文字
  • 分野ごとの慣用的な使い方
  • KaTeXでの互換性

小文字ギリシャ文字の一覧

まずは最も頻繁に使う小文字ギリシャ文字の一覧です。コマンド名はギリシャ文字の英語名をそのまま使います。直感的に覚えやすいのがLaTeXの良いところです。

文字 LaTeX 読み 主な用途
$\alpha$ \alpha アルファ 角度、学習率、有意水準
$\beta$ \beta ベータ 角度、回帰係数、逆温度
$\gamma$ \gamma ガンマ オイラー定数、ローレンツ因子
$\delta$ \delta デルタ 微小変化、クロネッカーのデルタ
$\epsilon$ \epsilon イプシロン 微小量、誘電率
$\zeta$ \zeta ゼータ ゼータ関数、減衰比
$\eta$ \eta イータ 学習率、粘性係数、効率
$\theta$ \theta シータ 角度、パラメータ
$\iota$ \iota イオタ (使用頻度は低い)
$\kappa$ \kappa カッパ 曲率、条件数
$\lambda$ \lambda ラムダ 波長、固有値、ポアソンパラメータ
$\mu$ \mu ミュー 平均、摩擦係数、透磁率
$\nu$ \nu ニュー 周波数、ポアソン比、自由度
$\xi$ \xi クサイ/グザイ 乱数変数、座標変数
$\pi$ \pi パイ 円周率、利益関数
$\rho$ \rho ロー 密度、相関係数
$\sigma$ \sigma シグマ 標準偏差、応力、シグマ関数
$\tau$ \tau タウ 時定数、せん断応力、遅延
$\upsilon$ \upsilon ウプシロン (使用頻度は低い)
$\phi$ \phi ファイ 角度、ポテンシャル、位相
$\chi$ \chi カイ カイ二乗分布
$\psi$ \psi プサイ 波動関数、角度
$\omega$ \omega オメガ 角周波数、角速度

使用例

いくつかの典型的な使用例を見てみましょう。

$$ E = mc^2, \quad F = ma, \quad \omega = 2\pi f $$

$$ \sigma^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (x_i – \mu)^2 $$

$$
\sigma^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (x_i - \mu)^2
$$

この式では $\sigma$(標準偏差)、$\mu$(平均)というギリシャ文字を使って分散を定義しています。

小文字ギリシャ文字の一覧を確認しました。次に、大文字ギリシャ文字を見ていきましょう。

大文字ギリシャ文字の一覧

大文字ギリシャ文字はコマンドの頭文字を大文字にして書きます。ただし、ラテン文字と同じ形をしている大文字(A, B, E, H, I, K, M, N, O, P, T, X, Z)は専用のコマンドがなく、通常のアルファベットで代用します。

文字 LaTeX 読み 主な用途
$\Gamma$ \Gamma ガンマ ガンマ関数、グラフ
$\Delta$ \Delta デルタ 差分、変化量、ラプラシアン
$\Theta$ \Theta シータ 計算量のオーダー
$\Lambda$ \Lambda ラムダ 対角行列、宇宙定数
$\Xi$ \Xi クサイ/グザイ (使用頻度は低い)
$\Pi$ \Pi パイ 総乗記号
$\Sigma$ \Sigma シグマ 総和記号、共分散行列
$\Upsilon$ \Upsilon ウプシロン (使用頻度は低い)
$\Phi$ \Phi ファイ 累積分布関数、磁束
$\Psi$ \Psi プサイ 波動関数(全体系)
$\Omega$ \Omega オメガ 標本空間、立体角、オーム

ラテン文字と同形の大文字

以下の大文字ギリシャ文字はラテン文字と同じ形をしているため、LaTeX上では通常のアルファベットとして入力します。

ギリシャ文字 LaTeX上での入力
A(アルファ) A そのまま $A$
B(ベータ) B そのまま $B$
E(イプシロン) E 期待値 $E[X]$
H(イータ) H エンタルピー $H$
I(イオタ) I 電流 $I$
K(カッパ) K そのまま $K$
M(ミュー) M 質量 $M$
N(ニュー) N 個数 $N$
O(オミクロン) O そのまま $O$
P(パイ/ロー) P 確率 $P$
T(タウ) T 周期 $T$
X(カイ) X 確率変数 $X$
Z(ゼータ) Z 分配関数 $Z$

使用例

$$ \Delta x = x_2 – x_1 $$

$$ \Sigma = \begin{pmatrix} \sigma_{11} & \sigma_{12} \\ \sigma_{21} & \sigma_{22} \end{pmatrix} $$

$$ \Phi(z) = \frac{1}{\sqrt{2\pi}} \int_{-\infty}^{z} e^{-t^2/2} \, dt $$

大文字ギリシャ文字の中でも、$\Sigma$(共分散行列)や $\Delta$(変化量)は特に頻出します。

大文字ギリシャ文字を押さえました。次に、同じ文字の「変体」(バリアント)について解説します。

変体(バリアント)ギリシャ文字

いくつかのギリシャ文字には、通常の形とは異なる変体(variant)が存在します。分野によって使い分けることがあるため、両方知っておくと便利です。

通常 コマンド 変体 コマンド 使い分けの例
$\epsilon$ \epsilon $\varepsilon$ \varepsilon $\varepsilon$ が工学で多用
$\theta$ \theta $\vartheta$ \vartheta 文脈で区別が必要なとき
$\pi$ \pi $\varpi$ \varpi $\varpi$ は使用頻度低い
$\rho$ \rho $\varrho$ \varrho $\varrho$ は使用頻度低い
$\sigma$ \sigma $\varsigma$ \varsigma $\varsigma$ は語末のシグマ
$\phi$ \phi $\varphi$ \varphi $\varphi$ が物理で多用
$\kappa$ \kappa $\varkappa$ \varkappa $\varkappa$ は使用頻度低い

$\epsilon$ と $\varepsilon$

最もよく使い分けられるのが $\epsilon$ と $\varepsilon$ です。

  • $\epsilon$(\epsilon): ルネチン体のイプシロン。集合論の元の記号 $\in$ に似た形
  • $\varepsilon$(\varepsilon): 筆記体のイプシロン。工学・物理で微小量として多用

多くの教科書では微小量を $\varepsilon$ で書くため、こちらを使うことをおすすめします。

% 微小量(推奨)
$\varepsilon > 0$

% 集合論的な文脈
$x \in A$  % こちらは \in を使う

$\phi$ と $\varphi$

もう一つよく使い分けられるのが $\phi$ と $\varphi$ です。

  • $\phi$(\phi): 縦線が入った形
  • $\varphi$(\varphi): 丸みのある筆記体

物理学ではオイラー関数やポテンシャルに $\varphi$ を使い、角度には $\phi$ を使うなど、同じ文書内で2つの異なる量を区別するために使い分けることがあります。

$$ \phi = 30°, \quad \varphi(x) = e^{-x^2} $$

変体ギリシャ文字の使い分けを理解しました。次に、各分野でのギリシャ文字の慣用的な使い方をまとめます。

分野ごとの慣用的な使い方

数学

ギリシャ文字 慣用的な意味
$\alpha, \beta, \gamma$ 角度、定数
$\delta, \varepsilon$ 微小量($\varepsilon$-$\delta$ 論法)
$\lambda$ 固有値
$\pi$ 円周率
$\sigma$ 置換
$\phi, \psi$ 関数、写像
$\omega$ $n$ 乗根
$\Gamma$ ガンマ関数
$\Delta$ 差分演算子
$\Sigma$ 総和

$\varepsilon$-$\delta$ 論法の典型的な表記を見てみましょう。

$$ \forall \varepsilon > 0, \; \exists \delta > 0 \; \text{s.t.} \; |x – a| < \delta \Rightarrow |f(x) - f(a)| < \varepsilon $$

$$
\forall \varepsilon > 0, \; \exists \delta > 0 \; \text{s.t.} \;
|x - a| < \delta \Rightarrow |f(x) - f(a)| < \varepsilon
$$

物理学

ギリシャ文字 慣用的な意味
$\alpha$ 微細構造定数、角加速度
$\beta$ $v/c$(相対論)、逆温度
$\gamma$ ローレンツ因子
$\varepsilon$ 誘電率
$\theta, \varphi$ 極座標の角度
$\lambda$ 波長
$\mu$ 透磁率、換算質量
$\nu$ 周波数
$\rho$ 密度、電荷密度
$\sigma$ 断面積、導電率
$\tau$ 固有時
$\omega$ 角周波数
$\psi, \Psi$ 波動関数

マクスウェル方程式を例に見てみましょう。

$$ \nabla \cdot \bm{E} = \frac{\rho}{\varepsilon_0} $$

$$ \nabla \times \bm{B} = \mu_0 \bm{J} + \mu_0 \varepsilon_0 \frac{\partial \bm{E}}{\partial t} $$

統計学・機械学習

ギリシャ文字 慣用的な意味
$\alpha$ 学習率、有意水準
$\beta$ 回帰係数
$\eta$ 学習率
$\theta$ パラメータ(一般)
$\lambda$ 正則化パラメータ、ポアソンの平均
$\mu$ 平均
$\sigma$ 標準偏差
$\Sigma$ 共分散行列
$\Phi$ 正規分布の累積分布関数

損失関数の典型的な表記です。

$$ \mathcal{L}(\theta) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} \ell(y_i, f_\theta(x_i)) + \lambda \|\theta\|^2 $$

工学

ギリシャ文字 慣用的な意味
$\varepsilon$ ひずみ
$\sigma$ 応力
$\tau$ せん断応力、時定数
$\nu$ ポアソン比
$\omega$ 角速度
$\zeta$ 減衰比
$\Omega$ オーム(電気抵抗の単位)

フックの法則の基本式です。

$$ \sigma = E \varepsilon $$

$\sigma$ が応力、$E$ がヤング率、$\varepsilon$ がひずみです。

分野ごとの慣用的な使い方を整理しました。次に、KaTeXでの互換性について確認します。

LaTeX vs KaTeX の注意点

コマンド KaTeX対応 備考
小文字ギリシャ文字全般 対応 \alpha\omega
大文字ギリシャ文字全般 対応 \Gamma\Omega
\varepsilon 対応 推奨
\varphi 対応 推奨
\vartheta 対応
\varrho 対応
\varsigma 対応
\varkappa 対応
\varpi 対応

KaTeXではすべてのギリシャ文字コマンドがサポートされています。LaTeXとKaTeXの間で互換性の問題は基本的にありません。

よくある間違いとTips

間違い1:大文字アルファをコマンドで書こうとする

% NG: \Alpha というコマンドは存在しない
$\Alpha$

% OK: 通常のアルファベット A を使う
$A$

ラテン文字と同形の大文字ギリシャ文字には専用コマンドがないことを覚えておきましょう。

間違い2:$o$(オミクロン)を特別扱いする

小文字のオミクロンはラテン文字の $o$ と同じ形をしているため、LaTeXには \omicron コマンドがありません。そのまま $o$ と入力します。

% NG: \omicron は存在しない(KaTeXでは使える場合もある)
$\omicron$

% OK: 通常の o を使う
$o$

間違い3:太字ギリシャ文字の書き方

ギリシャ文字を太字にするには \bm を使います。\mathbf はギリシャ文字には効きません。

% NG: 太字にならない
$\mathbf{\alpha}$

% OK: \bm を使う
$\bm{\alpha}$

Tips1:ギリシャ文字の覚え方

ギリシャ文字のコマンドは英語の綴りそのままなので、英語名を覚えれば自動的にLaTeXコマンドもわかります。よく使うものから順に覚えていくとよいでしょう。

頻出度の高いものベスト10: 1. $\alpha$, $\beta$, $\theta$ — 角度やパラメータ 2. $\mu$, $\sigma$ — 平均と標準偏差 3. $\lambda$, $\pi$ — 固有値と円周率 4. $\phi$, $\omega$ — 角度と角周波数 5. $\varepsilon$, $\delta$ — 微小量

Tips2:ギリシャ文字に添字をつける

ギリシャ文字にも通常の添字が使えます。

$$ \theta_1, \quad \sigma_i^2, \quad \lambda_{\max}, \quad \omega_{n} $$

$$
\theta_1, \quad \sigma_i^2, \quad \lambda_{\max}, \quad \omega_{n}
$$

\max は演算子コマンドなので、添字として使う場合は _{\max} のように波括弧で囲みます。

まとめ

本記事では、LaTeXでギリシャ文字を書く方法を一覧表とともに解説しました。

  • 小文字ギリシャ文字: \alpha\omega の24文字。バックスラッシュ+英語名で出力
  • 大文字ギリシャ文字: コマンドの頭文字を大文字に。ラテン文字と同形のものは通常のアルファベットで代用
  • 変体文字: \varepsilon, \varphi など。分野の慣習に応じて使い分ける
  • 分野ごとの慣用: 同じギリシャ文字でも分野によって意味が異なる

ギリシャ文字は理工系の文書で最も基本的な記号です。よく使うものから覚えていきましょう。

次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。

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