数式の一部を色で強調したい場面は意外と多くあります。プレゼンテーションで変形のポイントを赤で示す、教育資料で符号の変化を色分けする、ブログ記事で重要な項を目立たせるなど、色は数式の理解を助ける強力なツールです。
LaTeXでは \color コマンドを使って数式中の文字や記号に色をつけることができます。本記事では、基本的な色付けからハイライト、取り消し線まで、数式の視覚的な修飾方法を解説します。
本記事の内容
\colorコマンドの基本\textcolorで特定の部分だけ色をつける\colorboxで背景色をつける\boxedで数式を枠で囲む\cancelで取り消し線を引く- 色の指定方法
前提知識
この記事を読む前に、以下の記事を読んでおくと理解が深まります。
- 数式を揃える・整列する — 複数行の数式での色付け
- 分数をLaTeXで書く — 分数の一部に色をつける例
\color:基本の色付けコマンド
色をつけるとは
数式中の文字を赤や青にすることで、「この部分に注目してほしい」という意図を視覚的に伝えることができます。白黒の数式では見落とされがちな変形のポイントも、色があれば一目でわかります。
基本的な使い方
\color{色名} で、それ以降の文字をすべて指定した色に変えます。
$$ {\color{red} x^2} + {\color{blue} 2x} + {\color{green} 1} = 0 $$
$$
{\color{red} x^2} + {\color{blue} 2x} + {\color{green} 1} = 0
$$
波括弧 {} で囲むことで、色の適用範囲を限定しています。波括弧を忘れると、それ以降のすべての文字が色付きになってしまうので注意しましょう。
使える色名
LaTeX標準で使える基本的な色名は以下のとおりです。
| 色名 | 出力 | コマンド |
|---|---|---|
| 赤 | $\color{red}{\text{Red}}$ | \color{red} |
| 青 | $\color{blue}{\text{Blue}}$ | \color{blue} |
| 緑 | $\color{green}{\text{Green}}$ | \color{green} |
| オレンジ | $\color{orange}{\text{Orange}}$ | \color{orange} |
| 紫 | $\color{purple}{\text{Purple}}$ | \color{purple} |
| 茶 | $\color{brown}{\text{Brown}}$ | \color{brown} |
| シアン | $\color{cyan}{\text{Cyan}}$ | \color{cyan} |
| マゼンタ | $\color{magenta}{\text{Magenta}}$ | \color{magenta} |
| 黒 | $\color{black}{\text{Black}}$ | \color{black} |
| 灰色 | $\color{gray}{\text{Gray}}$ | \color{gray} |
| 白 | (白背景では見えない) | \color{white} |
RGB指定
色名の代わりに、RGBの16進コードで色を指定することもできます。
$$ {\color{#e74c3c} \text{カスタムレッド}}, \quad {\color{#3498db} \text{カスタムブルー}} $$
$$
{\color{#e74c3c} \text{カスタムレッド}}, \quad
{\color{#3498db} \text{カスタムブルー}}
$$
KaTeXでは #RRGGBB 形式のカラーコードが使用できます。
\color の基本を理解しました。次に、色付けの実践的な使用例を見ていきましょう。
色付けの実践的な使用例
式変形のポイントを示す
数式の変形過程で、操作のポイントを色で示すと理解しやすくなります。
$$ \begin{align} (a + b)^2 &= (a + b)(a + b) \\ &= a \cdot a + a \cdot b + b \cdot a + b \cdot b \\ &= a^2 + {\color{red} 2ab} + b^2 \end{align} $$
$$
\begin{align}
(a + b)^2 &= (a + b)(a + b) \\
&= a \cdot a + a \cdot b + b \cdot a + b \cdot b \\
&= a^2 + {\color{red} 2ab} + b^2
\end{align}
$$
$ab$ と $ba$ がまとめられて ${\color{red} 2ab}$ になることを赤で強調しています。
正負の色分け
符号を色で区別すると、正の項と負の項が一目でわかります。
$$ f(x) = {\color{blue} x^2} {\color{red} – 3x} {\color{blue} + 2} $$
$$
f(x) = {\color{blue} x^2} {\color{red} - 3x} {\color{blue} + 2}
$$
ベクトルの成分の色分け
$$ \bm{v} = {\color{red} v_x} \hat{\bm{e}}_x + {\color{blue} v_y} \hat{\bm{e}}_y + {\color{green} v_z} \hat{\bm{e}}_z $$
$$
\bm{v} = {\color{red} v_x} \hat{\bm{e}}_x
+ {\color{blue} v_y} \hat{\bm{e}}_y
+ {\color{green} v_z} \hat{\bm{e}}_z
$$
各成分を色で区別すると、3次元ベクトルの構造が視覚的にわかりやすくなります。
分数の分子・分母を色分け
$$ \frac{{\color{red} \text{分子}}}{{\color{blue} \text{分母}}} = \frac{{\color{red} a + b}}{{\color{blue} c – d}} $$
$$
\frac{{\color{red} a + b}}{{\color{blue} c - d}}
$$
色付けの実践例を見てきました。次に、枠線や背景色で数式を強調する方法を紹介します。
\boxed:数式を枠で囲む
基本的な使い方
重要な結果を枠で囲んで強調するには \boxed を使います。
$$ \boxed{E = mc^2} $$
$$
\boxed{E = mc^2}
$$
\boxed は数式全体を四角い枠で囲みます。導出の最終結果を強調する際によく使います。
複雑な数式を囲む
$$ \boxed{x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4ac}}{2a}} $$
$$
\boxed{x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 - 4ac}}{2a}}
$$
\boxed と色の組み合わせ
枠の中の数式に色をつけることもできます。
$$ \boxed{{\color{red} F} = m{\color{blue} a}} $$
$$
\boxed{{\color{red} F} = m{\color{blue} a}}
$$
枠と色を組み合わせた強調方法を理解しました。次に、背景色をつける \colorbox を見ていきましょう。
\colorbox:背景色
基本的な使い方
\colorbox で数式に背景色をつけることができます。
$$ \colorbox{yellow}{$E = mc^2$} $$
$$
\colorbox{yellow}{$E = mc^2$}
$$
\colorbox{色名}{内容} で、指定した色の背景を付けます。\colorbox の中身はテキストモードなので、数式を入れる場合は $...$ で囲む必要があります。
注意点
\colorbox はKaTeXでサポートされていますが、レンダリングの見た目がブラウザによって異なる場合があります。ブログでの使用時は実際の表示を確認しましょう。
\fcolorbox:枠線付き背景色
$$
\fcolorbox{red}{yellow}{$E = mc^2$}
$$
\fcolorbox{枠色}{背景色}{内容} で、枠線と背景色の両方を指定できます。ただし、KaTeXでのサポート状況はバージョンにより異なります。
背景色の使い方を理解しました。次に、取り消し線を使った表現を見ていきましょう。
\cancel:取り消し線
なぜ取り消し線が必要か
数式の導出で「この項は打ち消し合う」ことを示すとき、取り消し線を引くと視覚的にわかりやすくなります。
基本的な使い方
$$ \frac{\cancel{a} \cdot b}{\cancel{a} \cdot c} = \frac{b}{c} $$
$$
\frac{\cancel{a} \cdot b}{\cancel{a} \cdot c} = \frac{b}{c}
$$
\cancel{...} で斜めの取り消し線を引きます。分数の約分を示すときに便利です。
取り消し線のバリエーション
| コマンド | 出力 | 説明 |
|---|---|---|
\cancel{x} |
$\cancel{x}$ | 右上がりの斜線 |
\bcancel{x} |
$\bcancel{x}$ | 右下がりの斜線 |
\xcancel{x} |
$\xcancel{x}$ | X字の取り消し |
$$
\cancel{x}, \quad \bcancel{x}, \quad \xcancel{x}
$$
取り消し線を使った導出の例
$$ \begin{align} \frac{x^2 – 1}{x – 1} &= \frac{(x+1)\cancel{(x-1)}}{\cancel{(x-1)}} \\ &= x + 1 \end{align} $$
$$
\begin{align}
\frac{x^2 - 1}{x - 1} &= \frac{(x+1)\cancel{(x-1)}}{\cancel{(x-1)}} \\
&= x + 1
\end{align}
$$
因数分解後に共通因子を約分する過程を、取り消し線で明確に示しています。
色付き取り消し線
取り消し線と色を組み合わせることもできます。
$$ \frac{{\color{red}\cancel{\color{black}a}} \cdot b}{{\color{red}\cancel{\color{black}a}} \cdot c} = \frac{b}{c} $$
$$
\frac{{\color{red}\cancel{\color{black}a}} \cdot b}{{\color{red}\cancel{\color{black}a}} \cdot c} = \frac{b}{c}
$$
取り消し線を赤、元の文字を黒にすると、何が消されたかが明確になります。
取り消し線の使い方を理解しました。次に、KaTeXでの互換性を確認しましょう。
LaTeX vs KaTeX の注意点
| コマンド | KaTeX対応 | 備考 |
|---|---|---|
\color{red} |
対応 | 基本色名 |
\color{#RRGGBB} |
対応 | 16進カラーコード |
\textcolor{red}{...} |
対応 | 範囲指定の色付け |
\colorbox{yellow}{...} |
対応 | 背景色 |
\fcolorbox |
バージョンによる | 枠付き背景色 |
\boxed |
対応 | 枠囲み |
\cancel |
対応 | 斜線の取り消し |
\bcancel |
対応 | 逆斜線の取り消し |
\xcancel |
対応 | X字の取り消し |
KaTeXでは色付けと取り消し線のコマンドが広くサポートされています。
よくある間違いとTips
間違い1:\color の範囲を限定し忘れる
% NG: 以降すべてが赤になる
$\color{red} x^2 + y^2 = r^2$
% OK: 波括弧で範囲を限定
${\color{red} x^2} + y^2 = r^2$
\color はグループ(波括弧)内でのみ有効にすることを忘れないようにしましょう。
間違い2:色の名前を間違える
% NG: grey は認識されないことがある
$\color{grey}$
% OK: gray を使う
$\color{gray}$
色名の綴りはLaTeX/KaTeXの仕様に従ってください。
間違い3:色を使いすぎる
数式中の色は「強調」のために使うものです。すべての変数に異なる色をつけると、かえって読みにくくなります。1つの数式で使う色は2〜3色に抑えましょう。
Tips:教育資料での効果的な色使い
| 目的 | 推奨する色 |
|---|---|
| 変化・操作のポイント | 赤 |
| 既知の項・結果 | 青 |
| 新しく導入された項 | 緑 |
| 打ち消される項 | 灰色 + 取り消し線 |
Tips:\textcolor による範囲指定
\color の代わりに \textcolor を使うと、引数として範囲を指定できます。
$$ \textcolor{red}{x^2} + \textcolor{blue}{y^2} = r^2 $$
$$
\textcolor{red}{x^2} + \textcolor{blue}{y^2} = r^2
$$
\textcolor{色}{内容} は波括弧を使った {\color{色} 内容} と同じ結果ですが、引数が明示的で読みやすい場合があります。
まとめ
本記事では、LaTeXで数式に色をつける方法を解説しました。
\color{色名}: 基本の色付けコマンド。波括弧で範囲を限定する\textcolor{色}{内容}: 範囲を引数で指定する色付け\colorbox{色}{内容}: 背景色をつける\boxed{数式}: 四角い枠で囲む\cancel{数式}: 取り消し線を引く- RGB指定:
\color{#RRGGBB}でカスタム色を使える
色と枠を効果的に使うことで、数式の可読性と教育効果を大きく高めることができます。ただし、使いすぎには注意しましょう。
次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。
- 数式に波括弧の注釈をつける — 数式への注釈
- 数式中にテキストを入れる — テキストと色の組み合わせ
- 数式を揃える・整列する — 複数行数式での色付け