【LaTeX】括弧のサイズ調整(left・right・big)

数式の中で括弧を使うとき、中身が大きい(分数や行列など)と、普通の括弧では小さすぎて不格好になります。たとえば、分数を丸括弧で囲むと括弧が分数よりも小さくなり、数式全体のバランスが崩れてしまいます。

LaTeXには、括弧のサイズを自動で中身に合わせる \left / \right コマンドと、手動でサイズを指定する \big 系のコマンドが用意されています。これらを使いこなすことで、美しくバランスの取れた数式が書けるようになります。

本記事の内容

  • \left / \right による自動サイズ調整
  • \big, \Big, \bigg, \Bigg による手動サイズ指定
  • さまざまな括弧の種類
  • 括弧の片側だけを使う方法
  • よくある間違いとTips

前提知識

この記事を読む前に、以下の記事を読んでおくと理解が深まります。

サイズ調整なしの括弧の問題

なぜサイズ調整が必要か

数式モードで普通に括弧を書くと、括弧のサイズは常に一定です。中身が小さければ問題ありませんが、分数や総和のように背の高い要素が入ると、括弧が不釣り合いに小さくなります。

サイズ調整なしの例:

$$ (\frac{a}{b})^2 \quad \text{vs} \quad \left(\frac{a}{b}\right)^2 $$

左が調整なし、右が \left/\right による調整ありです。右のほうが明らかに読みやすいことがわかります。

このような見た目の問題を解決するために、LaTeXでは2種類のサイズ調整方法が用意されています。次にそれぞれを見ていきましょう。

\left / \right:自動サイズ調整

基本的な使い方

\left\right は、中身のサイズに合わせて括弧のサイズを自動的に調整するコマンドです。

$$ \left(\frac{a}{b}\right) $$

$$
\left(\frac{a}{b}\right)
$$

\left( で開き括弧、\right) で閉じ括弧を指定するだけで、中身の高さに合わせて括弧が自動的に大きくなります。

さまざまな括弧への適用

\left / \right は丸括弧以外にも使えます。

$$ \left[\frac{a}{b}\right], \quad \left\{\frac{a}{b}\right\}, \quad \left|\frac{a}{b}\right|, \quad \left\|\frac{a}{b}\right\| $$

$$
\left[\frac{a}{b}\right], \quad
\left\{\frac{a}{b}\right\}, \quad
\left|\frac{a}{b}\right|, \quad
\left\|\frac{a}{b}\right\|
$$

波括弧 \{ \} はLaTeXの特殊文字なので、\left\{ \right\} のようにエスケープが必要です。

角括弧と山括弧

$$ \left\langle \frac{a}{b} \right\rangle, \quad \left\lfloor \frac{a}{b} \right\rfloor, \quad \left\lceil \frac{a}{b} \right\rceil $$

$$
\left\langle \frac{a}{b} \right\rangle, \quad
\left\lfloor \frac{a}{b} \right\rfloor, \quad
\left\lceil \frac{a}{b} \right\rceil
$$
括弧 開き 閉じ 用途
丸括弧 \left( \right) 一般的なグルーピング
角括弧 \left[ \right] 行列、区間、期待値
波括弧 \left\{ \right\} 集合、場合分け
縦線 \left\| \right\| 絶対値、ノルム
山括弧 \left\langle \right\rangle 内積、ブラケット
床関数 \left\lfloor \right\rfloor 切り捨て(floor)
天井関数 \left\lceil \right\rceil 切り上げ(ceil)

片側だけの括弧:\left.\right.

括弧を片側だけ表示したい場合があります。たとえば、定積分の評価記号では右側の角括弧だけが必要です。このとき、もう一方にはピリオド . を使って「見えない括弧」を指定します。

$$ \left. \frac{x^2}{2} \right|_0^1 = \frac{1}{2} $$

$$
\left. \frac{x^2}{2} \right|_0^1 = \frac{1}{2}
$$

\left. は「見えない左括弧」です。\left\right はペアで使う必要があるため、片側を表示しないときでもピリオドで省略します。

場合分けの波括弧も同様です。

$$ f(x) = \left\{\begin{aligned} 1 &\quad (x > 0) \\ 0 &\quad (x = 0) \\ -1 &\quad (x < 0) \end{aligned}\right. $$

\right. で右側の括弧を「見えない」状態にしています。

\left / \right の使い方を一通り紹介しました。次に、手動でサイズを指定する方法を見ていきましょう。

\big 系コマンド:手動サイズ指定

なぜ手動指定が必要か

\left / \right は便利ですが、自動調整の結果が期待通りにならない場合があります。たとえば、入れ子の括弧でサイズに差をつけたいときや、\left / \right が改行をまたげないときなどです。

そのような場合は \big 系のコマンドで手動でサイズを指定します。

4段階のサイズ

$$ ( ) \quad \big( \big) \quad \Big( \Big) \quad \bigg( \bigg) \quad \Bigg( \Bigg) $$

$$
( ) \quad \big( \big) \quad \Big( \Big) \quad \bigg( \bigg) \quad \Bigg( \Bigg)
$$
コマンド サイズ 使いどころ
なし 最小 通常の括弧
\big やや大きい括弧
\Big 分数を含む式
\bigg 大きな分数、入れ子の括弧
\Bigg 最大 行列サイズの要素

入れ子の括弧

入れ子の括弧では、外側を大きく、内側を小さくするとわかりやすくなります。

$$ \Bigg(\bigg(\Big(\big(x\big)\Big)\bigg)\Bigg) $$

$$
\Bigg(\bigg(\Big(\big(x\big)\Big)\bigg)\Bigg)
$$

これは極端な例ですが、実際の数式でも入れ子の括弧にサイズ差をつけるのは読みやすさのために有効です。

実例:条件付き確率

$$ P\big(A \mid B\big) = \frac{P(B \mid A) \, P(A)}{P(B)} $$

$$
P\big(A \mid B\big) = \frac{P(B \mid A) \, P(A)}{P(B)}
$$

条件付き確率の括弧を \big で少し大きくすると、\mid(条件の縦線)とのバランスが良くなります。

\bigl / \bigr\bigm

\big 系には開き括弧用の l 付き、閉じ括弧用の r 付き、中間区切り用の m 付きのバリアントがあります。

コマンド 用途
\bigl( 開き括弧 正しいスペーシング
\bigr) 閉じ括弧 正しいスペーシング
\bigm\| 中間区切り 条件の区切り線

$$ \bigl\{ x \in \mathbb{R} \bigm| x > 0 \bigr\} $$

$$
\bigl\{ x \in \mathbb{R} \bigm| x > 0 \bigr\}
$$

\bigm| は集合の条件区切り(「〜を満たす」の縦線)に使います。通常の \big| だとスペーシングが不正確になることがあります。

手動サイズ指定の方法を理解しました。次に、\left/\right\big 系の使い分けについて整理します。

\left/\right vs \big 系の使い分け

\left/\right を使うべき場合

  • 中身のサイズが事前にわからない場合
  • 分数や行列など、背の高い要素を囲む場合
  • 簡単に正しいサイズが得られる場合

\big 系を使うべき場合

  • \left/\right のサイズが不適切な場合
  • 入れ子の括弧にサイズ差をつけたい場合
  • align 環境で改行をまたぐ括弧を書く場合
  • 微調整が必要な場合

実例比較

$$ \text{left/right: } \left(\sum_{i=1}^n x_i\right) \qquad \text{big: } \Big(\sum_{i=1}^n x_i\Big) $$

\left/\right は $\sum$ の上下限まで含めた高さに合わせるため、やや大きくなりすぎることがあります。\Big を使えば適度なサイズに手動で調整できます。

使い分けの指針を整理しました。次に、KaTeXでの互換性について確認しましょう。

LaTeX vs KaTeX の注意点

コマンド KaTeX対応 備考
\left/\right 対応
\left./\right. 対応 見えない括弧
\big, \Big, \bigg, \Bigg 対応
\bigl, \bigr, \bigm 対応
\langle, \rangle 対応 山括弧
\lfloor, \rfloor 対応 床関数
\lceil, \rceil 対応 天井関数

KaTeXでは括弧関連のコマンドがすべてサポートされています。

よくある間違いとTips

間違い1:\left\right のペア不一致

\left\right は必ずペアで使う必要があります。

% NG: \right が抜けている
$\left(\frac{a}{b}$

% OK
$\left(\frac{a}{b}\right)$

間違い2:波括弧のエスケープ忘れ

% NG: エスケープなし(グルーピングと解釈される)
$\left{ a \right}$

% OK: バックスラッシュ付き
$\left\{ a \right\}$

間違い3:\left/\right が改行をまたぐ

align 環境で \left\right を異なる行に置くことはできません。

% NG: 改行をまたいでいる
\begin{align}
\left( a + b \\
+ c \right)
\end{align}

% OK: \big 系を使う
\begin{align}
\bigl( a + b \\
+ c \bigr)
\end{align}

Tips1:括弧のサイズの目安

中身 推奨サイズ
単純な変数 通常の括弧 (x)
添字付き変数 通常の括弧 (x_i)
分数 \left/\right または \Big
二重の分数 \left/\right または \bigg
行列 pmatrix等の専用環境を使う

Tips2:括弧を使った関数記法

$$ f\!\left(\frac{x}{y}\right), \quad \sin\left(\frac{\pi}{4}\right), \quad \exp\left(-\frac{x^2}{2}\right) $$

$$
f\!\left(\frac{x}{y}\right), \quad
\sin\left(\frac{\pi}{4}\right), \quad
\exp\left(-\frac{x^2}{2}\right)
$$

関数名の後に \left( を使う場合、\!(負のスペース)を入れると関数名と括弧の間が詰まって自然な見た目になります。

Tips3:二重括弧の表現

量子力学のブラ・ケット記法などで使う二重の山括弧は、\langle\langle で書きます。

$$ \langle\langle a \rangle\rangle $$

$$
\langle\langle a \rangle\rangle
$$

まとめ

本記事では、LaTeXで括弧のサイズを調整する方法を解説しました。

  • \left/\right: 中身に合わせて自動でサイズ調整される便利なコマンド
  • \big: \big, \Big, \bigg, \Bigg の4段階で手動サイズ指定
  • さまざまな括弧: 丸括弧、角括弧、波括弧、絶対値、山括弧、床/天井関数
  • 片側の括弧: \left. / \right. で見えない括弧を指定
  • 使い分け: 通常は \left/\right、微調整が必要なら \big

正しい括弧のサイズは数式の美しさと可読性に直結します。

次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。

関連タグ: big KaTeX left right 括弧 数式