数式の導出を書いていると、等号で揃えて複数行にわたる式変形を見せたくなる場面が頻繁にあります。たとえば二次方程式を一行ずつ平方完成していく過程を読者に追わせるとき、各行の等号が縦に揃っていれば「どこをどう変形したのか」が一目でわかります。逆に等号の位置がバラバラだと、それだけで読む気が削がれてしまいます。
数式の揃え・複数行表示は、レポートや論文、ブログ記事のどれにも欠かせない基本スキルです。具体的には、(1) 長い導出を等号で揃えて並べる、(2) 連立方程式を縦に並べる、(3) 場合分け(piecewise)の定義を波括弧つきで書く、(4) 1行に収まらない長い式を折り返す、といった場面で必ず登場します。
LaTeX には、これらをきれいに扱うための専用環境が一通り用意されています。本記事では align を軸に、gather / split / multline / cases / aligned までを「どんなときにどれを使うか」が判断できるレベルで総ざらいします。

左の「揃えない」例では、3行の等号がてんでバラバラの位置にあり、行どうしのつながりが追いにくくなっています。右の align を使った例では、等号が破線の上で一直線にそろい、「左辺 $f(x)$ をこう変形していった」という流れがすっと頭に入ります。これがこの記事を通して身につける一番大事な感覚です。
本記事の内容
align/align*環境の基本(&と\\の役割)- 複数の整列ポイントを持つ数式
- 数式番号の制御(
align*/\nonumber/\notag/\tag) equationとgather:1行の式・中央揃えの複数行splitとmultline:1つの式を複数行に分けるcases環境による場合分けaligned/gathered環境と\left\{の併用amsmathの読み込みと KaTeX での注意点
前提知識
この記事を読む前に、以下の記事を読んでおくと理解が深まります。
- 分数をLaTeXで書く — 分数を含む複数行数式
- 偏微分・全微分をLaTeXで書く — 導出で多用
まず amsmath を読み込む
本記事で扱う align / align* / gather / split / multline / cases などは、すべて amsmath パッケージが提供する環境です。LaTeX 文書(.tex)でこれらを使う前に、プリアンブル(\documentclass と \begin{document} の間)に次の1行を必ず書いておきましょう。
\usepackage{amsmath}

この1行を忘れると「Environment align undefined」のようなエラーが出て、整列環境がまったく動きません。逆に言えば、amsmath さえ読み込めば、この記事のほぼすべての機能が使えるようになります。なお、ブログでよく使う KaTeX / MathJax では amsmath 相当のコマンドが標準で読み込まれているため、\usepackage を書く必要はありません(後述の KaTeX 注意点を参照)。
amsmath の準備ができたところで、整列の主役である align 環境の基本から見ていきましょう。
align 環境の基本
なぜ整列が必要か
数式の導出を書くとき、各行の等号を揃えないと次のようになってしまいます。
$$ f(x) = (x + 1)^2 $$
$$ = x^2 + 2x + 1 $$
$$ = (x + 1)(x + 1) $$
等号の位置がバラバラで、読者は各行のつながりを把握しにくくなります。align 環境を使えば、等号の位置を縦に揃えて見やすく表示できます。
基本構文
align 環境では、& で整列ポイントを指定し、\\ で改行します。
$$ \begin{align} f(x) &= (x + 1)^2 \\ &= x^2 + 2x + 1 \\ &= (x + 1)(x + 1) \end{align} $$
$$
\begin{align}
f(x) &= (x + 1)^2 \\
&= x^2 + 2x + 1 \\
&= (x + 1)(x + 1)
\end{align}
$$
& を等号の直前に置くことで、すべての等号が縦に揃います。これが align 環境の最も基本的な使い方です。覚えるべき記号はたった2つ、&(揃える位置)と \\(改行)だけです。

左のソースコードを見ると、各行の &(オレンジ)がすべて同じ列にあり、行末の \\(シアン)で次の行へ送っています。右の表示結果では、その & の位置にあたる等号が破線の上にぴったり整列しています。ソースで & を縦にそろえて書くと、結果でもその位置が縦にそろう — これが align の動作のすべてです。
仕組みの理解:& は「揃える位置」、\\ は「改行」
align 環境の & は「この位置で揃えてください」というマーカーです。表(tabular)の列区切りとまったく同じ原理で、すべての行の & の位置が縦に揃えられます。\\ は行末に置いて「ここで次の行へ移る」という改行を表します。
% & の位置が揃う
f(x) &= ... % 1行目の & の位置
&= ... % 2行目の & の位置(1行目と揃う)
&= ... % 3行目の & の位置(同上)
ソースコード上で & を縦にそろえてインデントしておくと、人間にとっても読みやすく、結果との対応も取りやすくなります(揃えなくても結果は同じですが、可読性のために推奨します)。
ここで気になるのが「& の左右で揃え方はどう決まるのか」です。これを押さえると、連立方程式のような2列以上のレイアウトも自在に組めるようになります。
& の前は右揃え、後ろは左揃え
align 環境では、& を境にして 前(左側)が右揃え、後ろ(右側)が左揃えになります。等号の直前に & を置く定番スタイルだと、左辺が右に詰められ、等号から右の部分が左に詰められるので、ちょうど等号で「く」の字に折り返したような整った見た目になります。

図のように、& より前の f(x) は右端を破線に合わせて右揃え、& より後ろの = (x+1)^2 は左端を破線に合わせて左揃えになります。さらに & を1行に複数個置くと、奇数番目が右揃え境界・偶数番目が左揃え境界として扱われ、列が右に増えていきます。この性質を使うと、複数の式を横に並べることもできます(次節で具体例を示します)。
実例:二次方程式の解の導出
具体的な導出例を見てみましょう。
$$ \begin{align} ax^2 + bx + c &= 0 \\ x^2 + \frac{b}{a}x &= -\frac{c}{a} \\ x^2 + \frac{b}{a}x + \frac{b^2}{4a^2} &= \frac{b^2}{4a^2} – \frac{c}{a} \\ \left(x + \frac{b}{2a}\right)^2 &= \frac{b^2 – 4ac}{4a^2} \\ x &= \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4ac}}{2a} \end{align} $$
$$
\begin{align}
ax^2 + bx + c &= 0 \\
x^2 + \frac{b}{a}x &= -\frac{c}{a} \\
x^2 + \frac{b}{a}x + \frac{b^2}{4a^2} &= \frac{b^2}{4a^2} - \frac{c}{a} \\
\left(x + \frac{b}{2a}\right)^2 &= \frac{b^2 - 4ac}{4a^2} \\
x &= \frac{-b \pm \sqrt{b^2 - 4ac}}{2a}
\end{align}
$$
各行の等号がきれいに揃っているため、導出の流れが一目でわかります。
align 環境の基本を理解しました。次に、複数の整列ポイントを使う方法を見ていきましょう。
複数の整列ポイント
2列の整列
連立方程式のように、左辺と右辺をそれぞれ揃えたい場合は、& を複数使います。align 環境では & が奇数個目は右揃え、偶数個目は左揃えの境界になります。
$$ \begin{align} x + y &= 5 & \quad 2x – y &= 1 \end{align} $$
$$
\begin{align}
x + y &= 5 & \quad 2x - y &= 1
\end{align}
$$
連立方程式の縦並び
連立方程式を縦に並べて揃える場合は、次のように書きます。
$$ \begin{align} 3x + 2y &= 7 \\ x – y &= 1 \end{align} $$
$$
\begin{align}
3x + 2y &= 7 \\
x - y &= 1
\end{align}
$$
条件と本体を揃える
導出の各行に理由(条件)を添える場合にも、複数の整列ポイントが便利です。
$$ \begin{align} \|\bm{x} + \bm{y}\|^2 &= (\bm{x} + \bm{y})^\mathrm{T}(\bm{x} + \bm{y}) & &\text{(ノルムの定義)} \\ &= \bm{x}^\mathrm{T}\bm{x} + 2\bm{x}^\mathrm{T}\bm{y} + \bm{y}^\mathrm{T}\bm{y} & &\text{(展開)} \\ &= \|\bm{x}\|^2 + 2\langle \bm{x}, \bm{y} \rangle + \|\bm{y}\|^2 & &\text{(内積の定義)} \end{align} $$
$$
\begin{align}
\|\bm{x} + \bm{y}\|^2 &= (\bm{x} + \bm{y})^\mathrm{T}(\bm{x} + \bm{y})
& &\text{(ノルムの定義)} \\
&= \bm{x}^\mathrm{T}\bm{x} + 2\bm{x}^\mathrm{T}\bm{y} + \bm{y}^\mathrm{T}\bm{y}
& &\text{(展開)} \\
&= \|\bm{x}\|^2 + 2\langle \bm{x}, \bm{y} \rangle + \|\bm{y}\|^2
& &\text{(内積の定義)}
\end{align}
$$
右端に \text{...} で日本語の説明を添えることで、各変形の意図が明確になります。
複数の整列ポイントの使い方がわかりました。次に、数式番号の制御方法を解説します。
数式番号の制御
LaTeX 文書(論文・レポート)では、数式に通し番号が付くかどうかが地味に重要です。本文中で「式 (3) より」と参照したい式には番号が必要ですし、逆に途中式には番号を付けたくないことも多いものです。align 系には、番号を全部出す・全部消す・特定の行だけ消す・任意の番号を付ける、という4通りの制御が用意されています。

図はこの4パターンを並べたものです。左上が全行に番号が付く align、右上が番号を一切出さない align*、左下が一部の行だけ \nonumber で消したもの、右下が \tag{...} で任意のラベル(ここでは ★)を付けたものです。以下、それぞれを順に見ていきます。
align と align*
align 環境は各行に自動で数式番号を付けます。数式番号が不要な場合は align*(アスタリスク付き)を使います。アスタリスク付きの環境はどれも「番号なし版」だと覚えておくと、gather* や equation* にもそのまま応用できます。
% 数式番号あり(各行に (1), (2) が付く)
\begin{align}
E &= mc^2 \\
F &= ma
\end{align}
% 数式番号なし
\begin{align*}
E &= mc^2 \\
F &= ma
\end{align*}
1つ目は右端に (1)、(2) が付き、2つ目はどちらの式にも番号が付きません。本文で参照する予定がまったくない一連の式なら、最初から align* にしておくのがすっきりします。
特定の行の番号を消す:\nonumber / \notag
align 環境で一部の行だけ番号を消したい場合は、その行の \\ の前に \nonumber を置きます。途中の変形には番号を付けず、最終結果だけに番号を付けたい、という典型的な使い方ができます。
\begin{align}
f(x) &= x^2 + 2x + 1 \nonumber \\
&= (x + 1)^2
\end{align}
1行目には番号が付かず、2行目にだけ番号が付きます。amsmath では \nonumber の別名として \notag も使え、まったく同じ働きをします。\notag のほうが「タグ(番号)を付けない」という意味が直感的なので、好みで使い分けて構いません。
任意の番号を付ける:\tag{...}
自動の通し番号ではなく、自分で決めたラベルを付けたいときは \tag{...} を使います。(\ast) や (\text{主}) のように、記号や文字も入れられます。
\begin{align}
E &= mc^2 \tag{$\ast$} \\
F &= ma
\end{align}
1行目には (∗) という自分で指定したラベルが付き、2行目には通常の自動番号 (2) が付きます。重要な式を本文から「式 (∗)」と呼びたいときなどに便利です。\tag*{...} とアスタリスクを付けると、括弧なしのラベルになります。
KaTeXでの番号
KaTeXでは数式番号の扱いがLaTeXとは異なります。ブログで使う場合は $$..$$ の中に align を書くスタイルが一般的で、この場合は数式番号は表示されません。
$$ \begin{align} E &= mc^2 \\ F &= ma \end{align} $$
KaTeXのブログ環境では、番号の有無を気にする必要はほとんどありません。
数式番号の制御を理解したところで、align と並んでよく使う「中央揃え」の equation / gather、そして「1つの式を複数行に分ける」split / multline を見ていきましょう。整列環境はこの4つを押さえれば一通りそろいます。
equation と gather:1行の式・中央揃えの複数行
equation:番号付きの1行の式
複数行ではなく、番号を付けたい1行の式には equation 環境を使います。$$...$$ でもブロック数式は書けますが、equation を使うと自動で式番号が付く点が違います。
\begin{equation}
e^{i\pi} + 1 = 0
\end{equation}
番号が不要なら equation*(または素朴な \[...\] / $$...$$)を使います。equation は「1行・1番号」、align は「複数行・等号で揃える」と役割を分けて覚えましょう。
gather:中央揃えで複数行
複数行を並べたいけれど、align のように等号で揃える必要はなく、各行を中央揃えで縦に並べたい――そんなときは gather 環境を使います。& は使わず、\\ で改行するだけです。
$$ \begin{gathered} x + y = 5 \\ 2x – y = 1 \end{gathered} $$
\begin{gather}
x + y = 5 \\
2x - y = 1
\end{gather}
align が「等号で縦線をそろえる」のに対し、gather は「各行をそれぞれの中央に置く」点が違います。番号が不要なら gather* です。align と gather の見た目の違い、そして次に説明する split との違いを1枚にまとめると次のようになります。

左の align は等号(破線)で揃い各行に番号、中央の gather は各行が中央にそろい各行に番号、右の split は等号で揃うものの全体で番号が1つだけ付きます。「揃え方(等号 or 中央)」と「番号の数(行ごと or 全体で1つ)」の2軸で整理すると、使い分けがクリアになります。
gather で複数行を中央に並べる方法がわかりました。次は、その右側の split のように「1つの式が長くて1行に入らない」場合の分け方を見ていきます。
split と multline:1つの式を複数行に分ける
split:等号で揃えて分割し、番号は1つ
長い式変形を複数行に分けたいけれど、align だと各行に番号が付いてしまう――「これは1つの式なのだから番号は1つにしたい」という場面があります。そんなときは split 環境を equation の中に入れて使います。split の中では align と同じく & で揃え、\\ で改行できますが、番号は外側の equation がまとめて1つだけ付けます。
$$ \begin{aligned} S &= a_0 + a_1 + a_2 \\ &\quad + a_3 + a_4 + a_5 \end{aligned} $$
\begin{equation}
\begin{split}
S &= a_0 + a_1 + a_2 \\
&\quad + a_3 + a_4 + a_5
\end{split}
\end{equation}
(上の表示は KaTeX で aligned を使って同じ見た目を再現したものです。LaTeX 文書では equation+split で右端に番号が1つだけ付きます。)

図の左が split です。等号の位置を & で揃えつつ、式全体には (1) という番号が1つだけ付きます。2行目の先頭を \quad で字下げし、演算子 + の前で折り返すのが読みやすさのコツです。
multline:とても長い式を「左→右」に折り返す
揃える位置すら指定したくないほど長い1つの式は、multline 環境(綴りは “multline”、multiline ではない点に注意)が向いています。multline は 1行目を左寄せ、最終行を右寄せ、中間行を中央に置き、ページ幅をめいっぱい使って折り返します。
\begin{multline}
S = a_0 + a_1 + a_2 \\
+ a_3 + a_4 + a_5
\end{multline}
図の右が multline です。1行目の S = a_0 + a_1 + a_2 が左に寄り、続きの + a_3 + a_4 + a_5 が右に寄っています。等号での整列はしない代わりに、横幅を有効に使えるのが特徴です。「導出のように等号で揃えたい」なら split、「単に長すぎて入らないだけ」なら multline、と使い分けます。
長い式を複数行に分ける2つの方法がわかりました。次は、条件によって値が変わる「場合分け」を波括弧つきで書く cases 環境です。
cases 環境:場合分け
場合分けとは
関数や式の値が条件によって変わる場合、場合分け(piecewise definition)を使います。たとえば、絶対値関数は「$x$ が0以上なら $x$、負なら $-x$」という場合分けで定義されます。
基本構文
$$ |x| = \begin{cases} x & (x \geq 0) \\ -x & (x < 0) \end{cases} $$
$$
|x| = \begin{cases}
x & (x \geq 0) \\
-x & (x < 0)
\end{cases}
$$
cases 環境は左側に大きな波括弧を自動で付け、各行を \\ で区切ります。& の左側が値、右側が条件です。

図の左がソース、右が表示結果です。\begin{cases} と \end{cases} で囲み、各行で「値 & 条件」と書くだけで、左端に高さの合った大きな波括弧が自動で付きます。波括弧を自分で \left\{ などと書く必要がないのが cases の便利なところです。3行でも4行でも、行数に合わせて波括弧の高さが自動調整されます。
実例:ReLU関数
機械学習でよく使われるReLU(Rectified Linear Unit)関数を場合分けで書くと次のようになります。
$$ \text{ReLU}(x) = \begin{cases} x & (x > 0) \\ 0 & (x \leq 0) \end{cases} $$
$$
\text{ReLU}(x) = \begin{cases}
x & (x > 0) \\
0 & (x \leq 0)
\end{cases}
$$
実例:クロネッカーのデルタ
$$ \delta_{ij} = \begin{cases} 1 & (i = j) \\ 0 & (i \neq j) \end{cases} $$
$$
\delta_{ij} = \begin{cases}
1 & (i = j) \\
0 & (i \neq j)
\end{cases}
$$
3つ以上の場合分け
3つ以上の条件に分ける場合も同様です。
$$ \text{sgn}(x) = \begin{cases} 1 & (x > 0) \\ 0 & (x = 0) \\ -1 & (x < 0) \end{cases} $$
$$
\text{sgn}(x) = \begin{cases}
1 & (x > 0) \\
0 & (x = 0) \\
-1 & (x < 0)
\end{cases}
$$
cases 環境は条件分岐のある定義を書くときに非常に便利です。次に、数式のグルーピングに使える gathered と aligned 環境を紹介します。
gathered と aligned 環境
gathered:中央揃えのグループ
gathered 環境は、複数行の数式を中央揃えでグループ化します。大きな数式の中に複数行の式を埋め込みたいときに使います。
$$ \left.\begin{gathered} x + y = 5 \\ 2x - y = 1 \end{gathered}\right\} \quad \text{連立方程式} $$
$$
\left.\begin{gathered}
x + y = 5 \\
2x - y = 1
\end{gathered}\right\} \quad \text{連立方程式}
$$
\left. は見えない左括弧、\right\} は右波括弧です。この組み合わせで、連立方程式の右側に波括弧を付けて「これらをまとめて解く」ことを表しています。
aligned:整列されたグループ
aligned 環境は、align と同じ整列機能を持ちつつ、他の数式の中に埋め込むことができます。
$$ f(x) = \left\{\begin{aligned} x^2 &\quad (x \geq 0) \\ -x^2 &\quad (x < 0) \end{aligned}\right. $$
$$
f(x) = \left\{\begin{aligned}
x^2 &\quad (x \geq 0) \\
-x^2 &\quad (x < 0)
\end{aligned}\right.
$$
cases 環境との違いは、aligned のほうが整列のカスタマイズ性が高い点です。

図のように、\left\{ で大きな波括弧を出し、その中身を aligned で揃えると、cases に似た見た目を自分で組み立てられます。ポイントは、aligned や gathered が 「他の式の中に埋め込める部品」だという点です。align や gather は文書のトップレベルにしか置けませんが、aligned / gathered は $$...$$ や \left\{ ... \right. の内側に入れられます。波括弧を片方だけ出したいときは、反対側を \right.(ドット)で「見えない括弧」にするのが定石です。
align vs aligned vs cases の使い分け
| 環境 | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
align |
独立した複数行数式 | トップレベルで使用 |
aligned |
他の式に埋め込む複数行数式 | $$...$$ の中で使用 |
gathered |
中央揃えの複数行グループ | 整列なし |
cases |
場合分け定義 | 左に波括弧が付く |
gathered と aligned の使い方を理解しました。次に、数式間にテキストを挿入する方法を紹介します。
数式間にテキストを挿入する
\text コマンド
align 環境の中で日本語や英語のテキストを挿入するには \text{} を使います。
$$ \begin{align} x^2 - 1 &= (x + 1)(x - 1) \\ &= 0 \\ \text{したがって} \quad x &= 1 \quad \text{または} \quad x = -1 \end{align} $$
$$
\begin{align}
x^2 - 1 &= (x + 1)(x - 1) \\
&= 0 \\
\text{したがって} \quad x &= 1 \quad \text{または} \quad x = -1
\end{align}
$$
\intertext:行間にテキスト
式と式の間に説明文を入れたい場合は \intertext が便利です(LaTeXのみ)。
\begin{align}
f(x) &= x^2 + 2x + 1 \\
\intertext{ここで平方完成すると、}
&= (x + 1)^2
\end{align}
ただし、KaTeXでは \intertext がサポートされていない場合があります。その場合は align 環境をいったん閉じて、テキストを挟んでから新しい align 環境を始めましょう。
テキストの挿入方法を学んだところで、KaTeXとの互換性を確認します。
LaTeX vs KaTeX の注意点
| 環境/コマンド | KaTeX対応 | 備考 |
|---|---|---|
align / align* |
対応 | `$$` 内で使用 | | `gather` / `gather*` | 対応 | 中央揃え | | `equation` / `equation*` | 対応 | 1行の式 | | `aligned` | 対応 | 埋め込み用 | | `gathered` | 対応 | 埋め込み用 | | `split` | 対応 | `equation` 等の中で | | `multline` | 対応 | — | | `cases` | 対応 | — | | `\nonumber` / `\notag` | 対応 | — | | `\tag{...}` / `\tag*{...}` | 対応 | — | | `\text` | 対応 | — | | `\intertext` | 非対応の場合あり | 代替方法を使用 | KaTeXでブログに数式を書く場合、`align` と `cases` は問題なく使えます。`\intertext` が使えない場合は、環境をいったん閉じてテキストを入れる方法で対応できます。 ## よくある間違いとTips ### 間違い1:`&` を忘れる `align` 環境で `&` を入れ忘れると、整列されません。 ```latex % NG: & がない \begin{align} f(x) = x^2 \\ = (x)(x) \end{align} % OK: & で整列 \begin{align} f(x) &= x^2 \\ &= (x)(x) \end{align} ``` ### 間違い2:`\\` の後にスペースがない `\\` の直後に `&` を書く場合、間にスペースがなくてもエラーにはなりませんが、ソースコードの可読性のために改行することを推奨します。 ### 間違い3:`equation` と `align` の混同 1行だけの数式には `equation` 環境(`$$...$$`)を使い、複数行の数式には `align` 環境を使います。1行の式に `align` を使うことは可能ですが、無駄です。 ### Tips1:行間の調整 `\\` の後に `[長さ]` を付けると、行間を調整できます。 ```latex \begin{align} f(x) &= x^2 \\[10pt] g(x) &= x^3 \end{align} ``` `[10pt]` で10ポイント分の余白を追加しています。数式が詰まりすぎる場合に使いましょう。 ### Tips2:長い式の改行 1行に収まらない長い式を途中で改行する場合は、演算子($+$, $-$, $=$など)の前で改行するのが慣例です。 $$ |
| \begin{align} | ||
| f(x) &= a_0 + a_1 x + a_2 x^2 + a_3 x^3 \ | ||
| &\quad + a_4 x^4 + a_5 x^5 + \cdots | ||
| \end{align} | ||
| $$ ```latex $$ | ||
| \begin{align} | ||
| f(x) &= a_0 + a_1 x + a_2 x^2 + a_3 x^3 \ | ||
| &\quad + a_4 x^4 + a_5 x^5 + \cdots | ||
| \end{align} | ||
| $$ ``` 2行目の先頭に `\quad` でインデントを入れると、「1行目の続きである」ことが視覚的にわかります。 なお、長い式の折り返しを「等号で揃えたい」なら `split`、「単に幅いっぱい使って折り返したい」なら `multline` を使うほうが、目的が明確になります。 ## 行列環境との関係 ここまでの整列環境は、実は行列を書く環境とも兄弟関係にあります。`pmatrix`(丸括弧の行列)、`bmatrix`(角括弧の行列)、`matrix`(括弧なし)なども、内部では `&` で列を区切り、`\\` で行を改行します。 $$ | ||
| A = \begin{pmatrix} | ||
| a & b \ | ||
| c & d | ||
| \end{pmatrix} | ||
| $$ ```latex $$ | ||
| A = \begin{pmatrix} | ||
| a & b \ | ||
| c & d | ||
| \end{pmatrix} | ||
| $$ | ||
| ``` |
align では & が「揃える位置」を表したのに対し、行列環境では & が「列の区切り」を表します。意味は少し違いますが、& で横方向、\\ で縦方向を区切るという基本構造はまったく同じです。1つ覚えれば他にも応用が利く、というわけです。行列のより詳しい書き方は専用記事に譲りますが、「& と \\ は数式レイアウト全般の共通言語」と捉えておくと理解が早まります。
整列環境を一通り見てきました。最後に、どの環境をいつ使うかを1枚の早見表にまとめておきます。
早見表:環境の使い分け

迷ったときはこの表に立ち返りましょう。判断の軸は2つだけです。1つ目は 「揃え方」――等号などの位置で揃えたいなら align 系(align / split / aligned / cases)、各行を中央に置きたいなら gather 系(gather / gathered)。2つ目は 「番号の数」――行ごとに番号がほしいなら align / gather、式全体で1つにしたいなら equation+split、番号を消したいならアスタリスク付きや \nonumber。この2軸さえ意識すれば、初見の場面でも適切な環境をすぐ選べます。
まとめ
本記事では、LaTeXで数式を揃え、複数行に並べる方法を一通り解説しました。
- 準備: 整列環境は
amsmathパッケージ(\usepackage{amsmath})が前提。KaTeX/MathJax では標準で利用可 align/align*:&で揃え位置(前が右揃え・後が左揃え)、\\で改行。*付きは番号なし- 複数の整列ポイント:
&を複数使って左辺・右辺や条件列を独立に揃える - 番号の制御:
\nonumber/\notagで行ごとに消す、\tag{...}で任意の番号を付ける equation/gather: 1行の式・中央揃えの複数行(*で番号なし)split/multline: 1つの式を複数行に分ける(split=等号で揃え番号1つ、multline=左→右に折り返し)cases: 場合分け定義を、左の波括弧自動つきで書くaligned/gathered: 他の式(\left\{など)に埋め込める整列・中央揃えの部品
ポイントは「& で横方向、\\ で縦方向」という共通構造と、「揃え方(等号 or 中央)×番号の数(行ごと or 1つ)」という使い分けの2軸です。これさえ押さえれば、導出・連立方程式・場合分け・長い式の折り返しまで、ほとんどの場面に対応できます。align を中心に使いこなして、読みやすい数式を書きましょう。
次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。
- 括弧のサイズ調整 — align内での括弧の使い方
- 数式に波括弧の注釈をつける — 導出に注釈を付ける
- 偏微分・全微分をLaTeXで書く — 導出で頻出する偏微分
関連記事:LaTeX数式記法シリーズ
