バイスタティックレーダーとは?幾何と距離和楕円から理解する

第二次世界大戦中、ドイツ軍は「クライン・ハイデルベルク」と呼ばれる受信専用のレーダーを英仏海峡沿いに配備していました。このレーダーは自分では電波を出しません。イギリス側が運用していた早期警戒レーダー「チェーン・ホーム」の電波を借りて、その反射波だけを受信して爆撃機隊を探知していたのです。送信機と受信機が数百キロも離れた場所にある — これがバイスタティックレーダーの原型です。

現代でも同じ発想は生きています。FM放送やデジタルテレビ、携帯基地局、さらには衛星コンステレーションの電波を「照射源」として借り、受信機だけを設置して航空機やドローンを探知するパッシブレーダー(PCL: Passive Coherent Location)が実用化されています。送信しないので相手に気づかれず、周波数免許も不要で、装置も安価です。

もう一つ、バイスタティック配置には強力な理由があります。ステルス機の形状設計は「電波を来た方向に返さない」ことを狙っているという点です。機体表面は入射波を別の方向へ弾き飛ばすように傾けられています。しかし電波はどこかへ行くのであって、消えてなくなるわけではありません。弾き飛ばされた先に受信機を置けば、モノスタティック(送受信同一地点)では見えなかった機体が見えてきます。極端な場合、標的が送信機と受信機を結ぶ直線上を横切る「フォワードスキャッタ」では、レーダー断面積が形状にほとんど関係なく巨大な値に跳ね上がります。

ただし、送信機と受信機を離した瞬間、レーダーの見え方の幾何がまるごと変わります。モノスタティックレーダーでは「遅延 → 距離」「距離が同じ点 → 円」という単純な対応が成り立ちますが、バイスタティックではそうはいきません。遅延が教えてくれるのは距離の和であり、距離和が同じ点の集合は送受信機を焦点とする楕円になります。この一点から、距離分解能の劣化、ドップラーの消失、検出範囲が円ではなく卵形線になること、といった性質がすべて芋づる式に導かれます。

本記事の内容

  • バイスタティックレーダーの幾何とバイスタティック角 $\beta$ の定義
  • 遅延が与えるのは距離和であり、等距離和曲線が楕円(3次元では回転楕円体)になることの導出
  • 楕円の法線がバイスタティック角の二等分線(バイセクタ)に一致することの証明
  • 距離分解能が $\Delta R = c\tau / (2\cos(\beta/2))$ と劣化することの導出
  • バイスタティックドップラーの一般式と、モノスタティックへの帰着
  • バイスタティックRCS、フォワードスキャッタとバビネの原理
  • フリスの式から組み立てるバイスタティックレーダー方程式と、カッシーニの卵形線で表される検出範囲
  • Pythonによる等距離和楕円族・等ドップラー曲線・分解能劣化・卵形線の可視化

前提知識

この記事を読む前に、以下の記事を読んでおくと理解が深まります。

バイスタティックレーダーとは

野球のナイターを思い浮かべてください。照明塔が一つ、観客席が一つ。照明塔の真下から選手を見ると、選手はまぶしい光に照らされて明るく見えます。ところが照明塔から離れた観客席から見ると、同じ選手でも影の付き方がまるで違って見えます。ボールの縫い目の光り方、ユニフォームのしわの陰影 — 光源と観測点が離れているからこそ見える情報があります。

レーダーもまったく同じです。「照明」にあたるのが送信機、「目」にあたるのが受信機です。両者が同じ場所にあるのがモノスタティックレーダー、離れた場所にあるのがバイスタティックレーダーです。さらに受信機を複数配置したものをマルチスタティックレーダーと呼びます。

まず、この記事で扱う幾何の全体像を1枚の絵にしておきましょう。以降のすべての式は、この図に描かれた三角形と楕円から出てきます。

送信機・標的・受信機がつくるバイスタティック三角形と、距離和が一定の楕円、バイスタティック角βとバイセクタを示した概念図

この図で押さえるべきは3点です。第一に、電波は送信機から標的を経て受信機へ「行きと帰りで違う道」を通るので、測れるのは片道距離ではなく $R_t + R_r$ という和になります。第二に、その和が一定の点を集めると送受信機を焦点とする楕円になり、標的は必ずその楕円上のどこかにいます。第三に、標的から送信機・受信機を見込む角がバイスタティック角 $\beta$ で、その二等分線(バイセクタ)が楕円の法線と一致します — この最後の性質が、後で距離分解能とドップラーの式を同時に説明してくれます。

幾何の記号を決める

まず記号を固定しましょう。2次元平面で考え、必要に応じて3次元に拡張します。

  • 送信機の位置を $\bm{r}_T$、受信機の位置を $\bm{r}_R$ とします
  • 両者を結ぶ線分をベースライン(基線)と呼び、その長さを $L = |\bm{r}_R – \bm{r}_T|$ とします
  • 標的の位置を $\bm{r}$ とし、送信機から標的までの距離を $R_t = |\bm{r} – \bm{r}_T|$、標的から受信機までの距離を $R_r = |\bm{r} – \bm{r}_R|$ とします
  • 標的の位置から送信機を見る方向と、受信機を見る方向がなす角をバイスタティック角 $\beta$ と呼びます

送信機・受信機・標的の3点が作る三角形をバイスタティック三角形と呼びます。この三角形の3辺が $R_t$、$R_r$、$L$ であり、標的の位置にある頂角が $\beta$ です。したがって余弦定理から、この3量の間には次の関係が常に成り立ちます。

$$ \begin{equation} L^2 = R_t^2 + R_r^2 – 2 R_t R_r \cos\beta \end{equation} $$

$\beta = 0$ のとき、この式は $L^2 = (R_t – R_r)^2$ となります。つまり標的が送受信機を結ぶ直線の「外側の延長線上」にある場合です。特に $L \to 0$ の極限、すなわち送信機と受信機が同じ場所にある場合は $R_t = R_r$、$\beta = 0$ となり、モノスタティックレーダーに帰着します。モノスタティックはバイスタティックの $\beta = 0$ の特殊ケースである、という視点を最初に持っておくと、以降の導出がすべて見通しよくなります。

反対に $\beta = 180^\circ$ のとき、式(1)は $L^2 = R_t^2 + R_r^2 + 2R_tR_r = (R_t + R_r)^2$、つまり $L = R_t + R_r$ となります。これは標的がベースライン上(送信機と受信機のあいだ)に乗っている状況で、フォワードスキャッタ(前方散乱)と呼ばれる特別な領域です。

3つの状況を並べて描くと、余弦定理の式(1)が両端でどう退化するかが目で見て確認できます。

β≈0の擬似モノスタティック、中間のβ、β=180°のフォワードスキャッタという3つのバイスタティック三角形を並べた図

左のパネルでは標的がベースラインの延長線上の遠方にあり、三角形がほとんど潰れて $\beta = 3^\circ$ しかありません。この状態では送信機と受信機は標的から見て「ほぼ同じ方向」にあり、モノスタティックとの区別がつきません。右のパネルは標的がベースライン上に乗った極限で、三角形が完全に線分に潰れて $\beta = 180^\circ$ になります。中央のような一般の配置では三角形がきちんと開き、$R_t$、$R_r$、$L$ の3辺が式(1)で結ばれます。

バイスタティック角による3つの動作領域

実務では、バイスタティック角 $\beta$ の大きさによって振る舞いが質的に変わるため、おおむね3つの領域に分けて考えます。

領域 $\beta$ の目安 特徴
擬似モノスタティック領域 $\beta \lesssim 5^\circ$ モノスタティックの理論がほぼそのまま使える。RCSも近似的に同じ
本来のバイスタティック領域 $5^\circ \lesssim \beta \lesssim 165^\circ$ 距離分解能の劣化・ドップラーの縮小・RCSの変化が本格的に効く
フォワードスキャッタ領域 $\beta \gtrsim 165^\circ$ 距離分解能もドップラーもほぼ失われる代わりに、RCSが桁違いに増大する

この3領域が平面上のどこに広がっているのかを、$L = 100$ km の配置で塗り分けてみます。

擬似モノスタティック領域・本来のバイスタティック領域・フォワードスキャッタ領域を色分けした平面図

意外なことに、平面の大部分(オレンジ)は「本来のバイスタティック領域」で占められ、フォワードスキャッタ領域(赤)はベースラインを挟むレンズ状の細い帯にすぎません。擬似モノスタティック領域(水色)はベースラインの外側の延長方向に、遠ざかるほど広がる形で伸びています。つまり受信機の近くを見張るか、はるか遠方を見張るかで、同じシステムでも性質のまったく違う3つのレーダーになるわけです。

この分類は、これから導く「$\cos(\beta/2)$ が至るところに現れる」という事実の裏返しです。$\beta$ が小さいうちは $\cos(\beta/2) \approx 1$ でモノスタティックとほとんど変わりませんが、$\beta$ が $180^\circ$ に近づくと $\cos(\beta/2) \to 0$ となり、この因子が分母に来る量(距離分解能)は発散し、分子に来る量(ドップラー)は消滅します。

バイスタティックならではの難しさ

バイスタティックには嬉しい性質だけでなく、モノスタティックには存在しない難しさもあります。

第一に、時刻同期と位相同期です。モノスタティックでは送信と受信が同じ装置なので、パルスを出した時刻は自明にわかります。バイスタティックでは、受信機は「送信機がいつ電波を出したか」を知らなければ遅延を測れません。GPS規律発振器や、送信機からの直接波(ダイレクトパス)を基準に使うといった工夫が必要になります。

第二に、直接波干渉です。受信機には標的からの微弱な反射波だけでなく、送信機からの強力な直接波も入ってきます。両者のパワー差は 80〜100 dB に達することもあり、これを分離するアダプティブキャンセラが不可欠です。

第三に、標的位置の推定が一発では決まらないことです。モノスタティックなら遅延から距離が直接わかりますが、バイスタティックで遅延から得られるのは距離の「和」だけです。受信機の指向角と組み合わせて初めて位置が決まります。

この第三の点こそが本記事の中心テーマです。「遅延が与えるのは距離の和」という事実から、バイスタティックレーダーの幾何のほぼすべてが導かれます。次節でその出発点を丁寧に組み立てましょう。

遅延が測るのは距離の「和」

モノスタティックレーダーでは、パルスを出してからエコーが戻るまでの時間 $\Delta t$ に対して $R = c\Delta t / 2$ と、距離が一発で決まります。往復するので2で割る、というおなじみの関係です。バイスタティックではこの「2で割る」がそもそも成り立ちません。電波は送信機 → 標的 → 受信機と、行きと帰りで違う道を通るからです。

直接波を基準にした遅延

受信機で実際に測れる量を丁寧に考えます。送信機が時刻 $t = 0$ にパルスを出したとしましょう。受信機には2種類の信号が届きます。

一つは送信機から直接届く直接波で、その到達時刻は $t_{\text{direct}} = L/c$ です。もう一つは標的で散乱されたエコーで、こちらは $R_t + R_r$ の距離を進むので、到達時刻は $t_{\text{echo}} = (R_t + R_r)/c$ です。

受信機が測るのは、この2つの時間差です。

$$ \begin{equation} \Delta t = t_{\text{echo}} – t_{\text{direct}} = \frac{R_t + R_r – L}{c} \end{equation} $$

三角不等式から $R_t + R_r \geq L$ なので $\Delta t \geq 0$ です。等号は標的がベースライン上に乗っているときに成立します。この $R_t + R_r – L$ をバイスタティックレンジと呼び、$\Delta t$ から直接得られる観測量です。

以降の議論を簡潔にするため、距離和を

$$ \begin{equation} R_\Sigma \equiv R_t + R_r = c\,\Delta t + L \end{equation} $$

と定義します。ベースライン長 $L$ は既知(送受信機の位置は測量済み)なので、遅延 $\Delta t$ の測定は $R_\Sigma$ の測定と等価です。

受信機での時間軸に3つのイベントを並べると、この関係が一目で見て取れます。

送信パルス・直接波の到達・標的エコーの到達を時間軸上に並べ、その差Δtから距離和を求める模式図

直接波は $L/c = 333.3\ \mu$s で到達し、標的エコーはそれより 200 $\mu$s 遅れて 533.3 $\mu$s に到達します。受信機が測るのはこの差だけで、そこから求まるのは $c\Delta t = 60$ km というバイスタティックレンジです。ここに既知の $L = 100$ km を足して初めて距離和 $R_\Sigma = 160$ km が確定する、という2段構えになっている点に注意してください。もし送信タイミングが未知なら、直接波が「時刻の基準」を代わりに供給してくれます。

ここが決定的なポイントです。バイスタティックレーダーの遅延測定が教えてくれるのは、標的の「位置」ではなく、2つの既知点からの距離の和という1つのスカラー量だけです。この1つの数値が、標的の可能な位置をどんな曲線に制約するのか — それが次の主題です。

等距離和曲線は楕円になる

「2つの定点からの距離の和が一定である点の集合」— この言い回しには聞き覚えがあるはずです。それは楕円の定義そのものです。画鋲を2本刺して糸をかけ、鉛筆で糸をピンと張りながら一周させると楕円が描ける、というあの作図法。画鋲が焦点、糸の長さが距離和です。

つまり、バイスタティックレーダーで1回の遅延測定をすると、標的は送信機と受信機を焦点とする楕円の上のどこかにいる、ということまでが確定します。これを等距離和曲線(iso-range contour)と呼びます。モノスタティックでは2つの焦点が重なるので楕円は円に退化し、おなじみの「距離が同じ点は円周上」に戻ります。

この「円 → 楕円」の変化こそ、送受信機を離したことで起きる最大の変化です。

モノスタティックの同心円とバイスタティックの楕円族を左右に並べて比較した図

左のモノスタティックでは、遅延が1つ決まれば標的は1つの円周上に載り、アンテナの向きを1つ足すだけで位置が決まります。右のバイスタティックでは同じ1回の測定が楕円しか与えず、しかも楕円は送受信機の位置に応じて向きと扁平さが変わります。地図の目盛りが円から楕円に置き換わった、と考えるとイメージしやすいでしょう。

念のため、この楕円が本当に標準形の楕円方程式を満たすことを、代数的に確認しておきましょう。座標系を、ベースラインの中点を原点、ベースライン方向を $x$ 軸にとります。送信機は $(-L/2, 0)$、受信機は $(L/2, 0)$ です。半長軸を先取りして $a \equiv R_\Sigma / 2$、半焦点距離を $f \equiv L/2$ と書きます。定義式は次の通りです。

$$ \sqrt{(x + f)^2 + y^2} + \sqrt{(x – f)^2 + y^2} = 2a $$

平方根が2つあるので、片方を右辺に移してから2乗します。

$$ \sqrt{(x + f)^2 + y^2} = 2a – \sqrt{(x – f)^2 + y^2} $$

両辺を2乗すると、右辺には交差項が現れます。

$$ (x+f)^2 + y^2 = 4a^2 – 4a\sqrt{(x-f)^2 + y^2} + (x-f)^2 + y^2 $$

ここで $(x+f)^2 – (x-f)^2 = 4fx$ を使って左辺と右辺の共通項を消すと、式が一気に整理されます。

$$ 4fx = 4a^2 – 4a\sqrt{(x-f)^2 + y^2} $$

両辺を $4a$ で割り、平方根の項だけを残す形に移項します。

$$ \sqrt{(x-f)^2 + y^2} = a – \frac{f}{a}x $$

もう一度2乗して、左辺を展開します。

$$ x^2 – 2fx + f^2 + y^2 = a^2 – 2fx + \frac{f^2}{a^2}x^2 $$

両辺の $-2fx$ が打ち消し合うのが気持ちよいところです。残った項を $x$ と $y$ について整理すると、

$$ x^2\left(1 – \frac{f^2}{a^2}\right) + y^2 = a^2 – f^2 $$

となります。ここで $b^2 \equiv a^2 – f^2$ と置き、左辺第1項の括弧を $b^2/a^2$ と書き直してから両辺を $b^2$ で割ると、標準形が得られます。

$$ \begin{equation} \frac{x^2}{a^2} + \frac{y^2}{b^2} = 1, \qquad a = \frac{R_\Sigma}{2}, \quad f = \frac{L}{2}, \quad b = \sqrt{\left(\frac{R_\Sigma}{2}\right)^2 – \left(\frac{L}{2}\right)^2} \end{equation} $$

この標準形が意味するところを、作図と楕円族の2枚で確かめておきましょう。

画鋲と糸による楕円の作図と、距離和が大きいほど離心率が下がって円に近づく楕円族を並べた図

左のパネルでは、同じ楕円上の3点でそれぞれ $R_t + R_r$ を計算しており、$55+105$、$121+39$、$63+97$ とどれも 160 km に揃っています。内訳はまったく違うのに和だけが同じ — 遅延測定が「内訳を知らない」ことの図解です。右のパネルは距離和を 110、140、200、300 km と変えた楕円族で、離心率 $e = L/R_\Sigma$ が 0.91 から 0.33 へ下がるにつれて形が円に近づいていきます。

離心率は $e = f/a = L / R_\Sigma$ です。$R_\Sigma \geq L$ なので $e \leq 1$ が保証され、$R_\Sigma = L$(ベースライン上)で $e = 1$、$b = 0$ となって楕円は線分に潰れます。逆に $R_\Sigma \gg L$ では $e \to 0$ となり、楕円はほとんど円に近づきます。遠くの標的ほど楕円は円に近く、モノスタティックとの差が小さくなるというのは物理的にも納得のいく話です。

3次元では回転楕円体になる

実際のレーダーは3次元空間で動作します。3次元では、$R_\Sigma$ 一定の条件を満たす点の集合は、楕円をベースライン軸まわりに回転させてできる長球(prolate spheroid、回転楕円体)になります。ベースラインを回転軸とする軸対称性は、$R_t$ も $R_r$ もベースラインまわりの回転で不変であることから直ちに従います。

$$ \begin{equation} \frac{x^2}{a^2} + \frac{y^2 + z^2}{b^2} = 1 \end{equation} $$

距離和140kmと260kmの回転楕円体(長球)を同じ縮尺で並べた3次元図

同じ縮尺で並べると、距離和が小さい左($R_\Sigma = 140$ km)はベースライン方向に伸びたラグビーボール状で、距離和が大きい右($R_\Sigma = 260$ km)はほとんど球です。焦点である送受信機は左では表面のすぐ内側にありますが、右では中心付近に埋もれています。2次元の楕円で見た「遠方ほど円に近い」という性質が、そのまま3次元の「遠方ほど球に近い」に対応していることが確認できます。

したがって、3次元での1回の遅延測定は標的を「ある長球面の上」に制約します。位置を確定するには、受信機のアンテナ指向(方位角と仰角)を併用するか、複数の受信機を使ってマルチスタティックにするしかありません。

遅延と受信機指向角から標的位置を解く

実用上もっとも使う公式を導いておきましょう。受信機のアンテナが標的を捉えており、ベースライン方向(受信機から送信機を見る向き)から測った受信機の見込み角 $\theta_R$ がわかっているとします。このとき、受信機から標的までの距離 $R_r$ を $R_\Sigma$ と $\theta_R$ で表したいわけです。

バイスタティック三角形に、受信機の頂点まわりで余弦定理を当てます。$R_r$ と $L$ が挟む角が $\theta_R$ で、その対辺が $R_t$ です。

$$ R_t^2 = R_r^2 + L^2 – 2 R_r L \cos\theta_R $$

ここに $R_t = R_\Sigma – R_r$ を代入します。左辺を展開すると $R_r^2$ が現れ、右辺の $R_r^2$ と打ち消し合うのがポイントです。

$$ R_\Sigma^2 – 2 R_\Sigma R_r + R_r^2 = R_r^2 + L^2 – 2 R_r L \cos\theta_R $$

$R_r^2$ を両辺から消し、$R_r$ を含む項を左辺、定数項を右辺に集めます。

$$ 2 R_r (L\cos\theta_R – R_\Sigma) = L^2 – R_\Sigma^2 $$

両辺の符号を揃えて $R_r$ について解くと、バイスタティック距離方程式が得られます。

$$ \begin{equation} R_r = \frac{R_\Sigma^2 – L^2}{2\left(R_\Sigma – L\cos\theta_R\right)} \end{equation} $$

楕円と受信アンテナ指向線の交点で標的位置が決まる幾何と、見込み角に対するR_rの曲線を並べた図

左のパネルが式(6)の幾何的な意味です。遅延が与える楕円(水色)と受信アンテナの指向線(緑)はちょうど1点で交わり、そこが標的位置になります。右のパネルは同じ式を $\theta_R$ の関数として描いたもので、$\theta_R$ が大きい(標的がベースラインから外れて受信機の横に来る)ほど $R_r$ は単調に小さくなります。本文の数値例($\theta_R = 60^\circ$、$R_\Sigma = 160$ km)は紫の点で、$R_r = 70.9$ km と読み取れます。

$R_\Sigma > L$ なら分子は正、分母も $R_\Sigma > L \geq L\cos\theta_R$ より正なので、$R_r$ は常に正の一意な値に決まります。$L \to 0$ の極限では $R_\Sigma = 2R$ を代入して $R_r = 4R^2/(4R) = R$ となり、モノスタティックに正しく帰着します。

これで、遅延と角度から標的位置を求める道具が揃いました。次に問うべきは、「その位置をどれくらいの細かさで区別できるか」— 距離分解能の問題です。

距離分解能はバイスタティック角で劣化する

モノスタティックレーダーの距離分解能は $\Delta R = c\tau/2$ です($\tau$ はパルス圧縮後の実効パルス幅、あるいは帯域幅 $B$ を使って $\tau = 1/B$)。バイスタティックではこの公式がどう変わるのか。結論から言うと、$\cos(\beta/2)$ で割った分だけ悪化します。この事実を、勾配ベクトルの言葉できれいに導きましょう。

距離和の勾配を計算する

分解能とは「観測量を1目盛り変えるのに、標的が空間的にどれだけ動かなければならないか」です。観測量は $R_\Sigma$、その空間的な変化率は勾配 $\nabla_{\bm{r}} R_\Sigma$ で与えられます。

まず1項ずつ計算します。$R_t = |\bm{r} – \bm{r}_T|$ の勾配は、原点からの距離関数の勾配が単位動径ベクトルになるという基本公式から、

$$ \nabla_{\bm{r}} R_t = \frac{\bm{r} – \bm{r}_T}{|\bm{r} – \bm{r}_T|} \equiv \hat{\bm{u}}_t $$

です。$\hat{\bm{u}}_t$ は送信機から標的へ向かう単位ベクトルです。同様に、

$$ \nabla_{\bm{r}} R_r = \frac{\bm{r} – \bm{r}_R}{|\bm{r} – \bm{r}_R|} \equiv \hat{\bm{u}}_r $$

が受信機から標的へ向かう単位ベクトルです。両者を足すと距離和の勾配になります。

$$ \begin{equation} \nabla_{\bm{r}} R_\Sigma = \hat{\bm{u}}_t + \hat{\bm{u}}_r \end{equation} $$

この勾配の大きさを求めましょう。ここでバイスタティック角の定義が効いてきます。$\beta$ は「標的から送信機を見る方向 $-\hat{\bm{u}}_t$ と、標的から受信機を見る方向 $-\hat{\bm{u}}_r$ のなす角」でした。2つのベクトルを両方とも反転させても角度は変わらないので、$\hat{\bm{u}}_t$ と $\hat{\bm{u}}_r$ のなす角もまた $\beta$ です。したがって内積は $\hat{\bm{u}}_t \cdot \hat{\bm{u}}_r = \cos\beta$ であり、

$$ \left|\hat{\bm{u}}_t + \hat{\bm{u}}_r\right|^2 = |\hat{\bm{u}}_t|^2 + 2\,\hat{\bm{u}}_t\cdot\hat{\bm{u}}_r + |\hat{\bm{u}}_r|^2 = 1 + 2\cos\beta + 1 = 2(1 + \cos\beta) $$

となります。ここで半角公式 $1 + \cos\beta = 2\cos^2(\beta/2)$ を使うと、$2(1+\cos\beta) = 4\cos^2(\beta/2)$ です。$\beta \in [0, \pi]$ の範囲では $\cos(\beta/2) \geq 0$ なので、平方根を取って絶対値記号を外せます。

$$ \begin{equation} \left|\nabla_{\bm{r}} R_\Sigma\right| = 2\cos\frac{\beta}{2} \end{equation} $$

この計算をベクトルの絵にすると、なぜ半角の $\cos(\beta/2)$ が出てくるのかが直感的に納得できます。

単位ベクトルの和がバイセクタ方向を向くことと、楕円とビームで切られた分解能セルの形を示した図

左のパネルは、長さ1の2本のベクトル $\hat{\bm{u}}_t$ と $\hat{\bm{u}}_r$ が作る菱形(点線)の対角線が和ベクトルであることを示しています。菱形の対角線は頂角を二等分するので、和は必ずバイセクタ方向を向き、その長さは $\beta$ が開くほど短くなって $2\cos(\beta/2) = 1.57$ になっています。右のパネルは、この幾何が実際の分解能セルをどんな形にするかを誇張表示したものです。セルは等距離和楕円2本と受信ビームの端2本で切り取られた平行四辺形で、バイセクタ方向の厚みが距離分解能に相当します。

シンプルで美しい結果です。距離和は、標的が空間を1メートル動くごとに最大 $2\cos(\beta/2)$ メートル変化します。モノスタティック($\beta = 0$)では係数が 2 になり、これはまさに「往復するから2倍」の正体です。バイスタティックでは $\cos(\beta/2)$ の分だけ「往復の効き」が目減りします。

分解能の式

遅延測定の分解能を $\delta t = \tau$ とすると、距離和の分解能は $\delta R_\Sigma = c\tau$ です。これを空間距離に翻訳するには勾配の大きさで割ればよく、

$$ \begin{equation} \Delta R = \frac{\delta R_\Sigma}{|\nabla R_\Sigma|} = \frac{c\tau}{2\cos(\beta/2)} \end{equation} $$

が得られます。帯域幅 $B$ で書けば $\Delta R = c/(2B\cos(\beta/2))$ です。

この式の読み方を整理しましょう。

  • $\beta = 0$(モノスタティック): $\Delta R = c\tau/2$。おなじみの式に一致します
  • $\beta = 60^\circ$: $\cos 30^\circ = 0.866$ なので、分解能は約 1.15 倍に悪化します
  • $\beta = 120^\circ$: $\cos 60^\circ = 0.5$ なので、ちょうど 2 倍に悪化します
  • $\beta = 170^\circ$: $\cos 85^\circ = 0.087$ なので、約 11.5 倍に悪化します
  • $\beta \to 180^\circ$(フォワードスキャッタ): $\Delta R \to \infty$。距離分解能が完全に失われます

$\beta \to 180^\circ$ で発散する理由は幾何的にも明快です。標的がベースライン上にあるとき、標的をベースラインに沿ってどちらに動かしても $R_t + R_r = L$ は変わりません。距離和がまったく反応しないのですから、遅延測定では位置を区別しようがないのです。フォワードスキャッタレーダーが「距離を測れないバリア型センサ」として使われるのは、この幾何的な必然によります。

分解能セルの形と向き

分解能の劣化は「どの方向に」起きるのかも押さえておきましょう。勾配ベクトル $\hat{\bm{u}}_t + \hat{\bm{u}}_r$ の向きは、2本の単位ベクトルの和なので、両者がなす角を二等分する方向 — すなわちバイセクタ(二等分線)です。分解能セルが薄くなるのはこのバイセクタ方向であり、それに垂直な方向(等距離和楕円の接線方向)には遅延測定は何の情報も与えません。

さらに、勾配は等値面の法線でもあります。したがって次の事実が成り立ちます。

等距離和楕円の法線は、標的から見たバイスタティック角 $\beta$ の二等分線に一致する。

これは楕円の有名な光学的性質、すなわち「一方の焦点から出た光は楕円面で反射して他方の焦点に集まる」の言い換えです。反射の法則が成り立つには入射角と反射角が法線に対して等しくなければならず、それはまさに法線が2本の焦点方向のなす角を二等分することを意味します。囁きの回廊(ウィスパリング・ギャラリー)で音が焦点から焦点へ届く現象と同じ幾何が、レーダーの分解能セルの向きを決めているわけです。

実務上は、この「バイセクタに垂直な方向へ細長く伸びた分解能セル」が、バイスタティックSAR(合成開口レーダー)の画像分解能や、クラッタセルの面積計算に直結します。モノスタティックのように「距離方向とクロスレンジ方向が直交する長方形セル」ではなく、幾何によって向きも大きさも変わる平行四辺形状のセルになるのです。

分解能の話が済んだところで、次はもう一つの基本観測量であるドップラー周波数が、バイスタティックでどう表されるかを見ていきましょう。ここでも $\cos(\beta/2)$ が主役になります。

バイスタティックドップラーの一般式

ドップラー効果とは、要するに「電波が伝わる経路長が時間とともに変わることによる位相の巻き取り」です。救急車のサイレンが近づくとき高く聞こえるのは、音源が近づく分だけ音波の経路が毎秒短くなり、決まった数の山が短い時間に押し込まれるからです。レーダーでも本質は同じで、経路長の時間変化率が周波数シフトを生みます。モノスタティックでは経路長が $2R$ なので $\dot{(2R)} = 2\dot{R}$ となり、おなじみの「2倍」が出てきます。バイスタティックでは経路長が $R_\Sigma = R_t + R_r$ ですから、この $R_\Sigma$ の時間微分がすべてを決めます。

位相からドップラーを導く

送信信号を $s(t) = \exp(j2\pi f_0 t)$ とします。標的で散乱されて受信機に届く信号は、経路長 $R_\Sigma(t)$ を伝わる分だけ遅れます。

$$ s_r(t) \propto \exp\left[j 2\pi f_0 \left(t – \frac{R_\Sigma(t)}{c}\right)\right] $$

受信信号の瞬時位相は $\phi(t) = 2\pi f_0 \left(t – R_\Sigma(t)/c\right)$ です。瞬時周波数は位相の時間微分を $2\pi$ で割ったものですから、

$$ f_{\text{inst}} = \frac{1}{2\pi}\frac{d\phi}{dt} = f_0\left(1 – \frac{1}{c}\frac{dR_\Sigma}{dt}\right) $$

となります。搬送波周波数 $f_0$ からのずれがドップラー周波数です。$\lambda = c/f_0$ を使って書き直すと、

$$ \begin{equation} f_d = f_{\text{inst}} – f_0 = -\frac{f_0}{c}\frac{dR_\Sigma}{dt} = -\frac{1}{\lambda}\frac{d}{dt}\left(R_t + R_r\right) \end{equation} $$

が得られます。符号は「経路が縮む(標的が近づく)と正のドップラー」という慣習に合わせたものです。教科書によっては符号を逆に定義し $f_d = \frac{1}{\lambda}\frac{d}{dt}(R_t + R_r)$ と書くこともありますが、大きさは同じで、どちらの向きの運動を正とするかの約束の違いにすぎません。

速度ベクトルで表す

標的が速度 $\bm{v}$ で運動し、送受信機は静止しているとします。距離の時間微分は、前節で計算した勾配と速度ベクトルの内積として書けます(連鎖律 $\dot{R} = \nabla_{\bm r} R \cdot \dot{\bm r}$)。

$$ \dot{R}_t = \hat{\bm{u}}_t \cdot \bm{v}, \qquad \dot{R}_r = \hat{\bm{u}}_r \cdot \bm{v} $$

したがって距離和の変化率は次のようになります。

$$ \dot{R}_\Sigma = \left(\hat{\bm{u}}_t + \hat{\bm{u}}_r\right)\cdot \bm{v} $$

ここで前節の結果を思い出しましょう。$\hat{\bm{u}}_t + \hat{\bm{u}}_r$ は、大きさが $2\cos(\beta/2)$ でバイセクタ方向を向くベクトルでした。バイセクタ方向の単位ベクトルを $\hat{\bm{b}}$ と書けば $\hat{\bm{u}}_t + \hat{\bm{u}}_r = 2\cos(\beta/2)\,\hat{\bm{b}}$ です。これを代入すると、

$$ \dot{R}_\Sigma = 2\cos\frac{\beta}{2}\,\left(\hat{\bm{b}} \cdot \bm{v}\right) = 2 v \cos\frac{\beta}{2}\cos\delta $$

となります。ここで $v = |\bm{v}|$、$\delta$ は速度ベクトルとバイセクタのなす角です。これをドップラーの式(10)に代入すれば、バイスタティックドップラーの一般式が完成します。

$$ \begin{equation} f_d = -\frac{2v}{\lambda}\cos\frac{\beta}{2}\cos\delta \end{equation} $$

速度ベクトルとバイセクタのなす角δの幾何と、βに対するドップラー周波数の減少曲線を並べた図

左のパネルが式(11)の幾何です。標的の速度のうち、ドップラーとして現れるのはバイセクタ方向の成分 $v\cos\delta$ だけで、それに直交する成分は経路長を変えないので何も生みません。右のパネルは $\delta$ を固定して $\beta$ を掃引したもので、$\beta = 0$ でモノスタティックの上限 1333 Hz、$\beta = 120^\circ$ でその半分の 667 Hz、$\beta = 170^\circ$ では 116 Hz(9%)まで落ち、$\beta = 180^\circ$ でゼロに達します。$\delta = 60^\circ$ の破線はさらに半分になっており、2つの余弦が独立に効くことがわかります。

この式は驚くほど示唆に富んでいます。順に読み解きましょう。

モノスタティックへの帰着。 $\beta = 0$ とすると $\cos(\beta/2) = 1$、バイセクタは視線方向そのものになるので $\delta$ は速度と視線のなす角です。すると $f_d = -2v\cos\delta/\lambda$ となり、標的が近づく($\cos\delta < 0$ となる向き)とき正のドップラーが出る、おなじみのモノスタティックの式に一致します。

ドップラーは $\cos(\beta/2)$ 倍に縮む。 バイスタティック配置では、同じ速度の標的でもドップラー周波数がモノスタティックより小さくなります。$\beta = 120^\circ$ なら半分、$\beta = 170^\circ$ なら約 8.7% しか出ません。ドップラーで移動目標を検出するレーダーにとって、これは検出能力の直接的な低下を意味します。クラッタのドップラー幅に埋もれてしまい、MTI(移動目標指示)フィルタで抜けなくなるのです。

フォワードスキャッタではドップラーが消える。 $\beta = 180^\circ$ では $\cos(\beta/2) = 0$ なので、標的がどんなに速く動いていても $f_d = 0$ です。これは幾何的には当たり前で、ベースライン上を動く標的は $R_t + R_r = L$ を保ったまま動くため、経路長が変化しないからです。フォワードスキャッタレーダーが「巨大なRCSが得られるのにドップラー処理が使えない」という悩ましい性質を持つのは、このためです(実際には標的がベースラインを横切る瞬間にドップラーがゼロを高速に横切るので、その特徴的な波形自体を検出に使います)。

ドップラーがゼロになる方向は楕円の接線方向。 $\cos\delta = 0$、すなわち速度がバイセクタに垂直なとき $f_d = 0$ です。バイセクタは等距離和楕円の法線でしたから、その垂直方向とは楕円の接線方向にほかなりません。等距離和楕円に沿って動く標的はドップラーを出さない — これは「経路長が変わらないから位相も巻き取らない」ことの幾何的表現です。

等ドップラー曲線

一定の速度ベクトル $\bm{v}$ を仮定して、平面上の各点で $f_d$ を計算すると等ドップラー曲線(iso-Doppler contour)が描けます。等距離和楕円と等ドップラー曲線を重ねると、「遅延とドップラーの同時測定が標的位置をどう制約するか」が一目でわかります。両者が直交に近く交わる領域では2つの測定が独立で位置決定精度が高く、平行に近く交わる領域では測定が縮退して精度が落ちます。この可視化は後ほどPythonで行います。

ここまでで、幾何(距離和)と運動(ドップラー)の記述が揃いました。次は電力の側面 — 標的がどれだけ強く電波を返すか(バイスタティックRCS)と、どこまで届くか(バイスタティックレーダー方程式)を扱います。

バイスタティックRCSとフォワードスキャッタ

バイスタティックRCSの定義

レーダー断面積(RCS)は「標的がどれだけ電波を跳ね返すか」を面積の次元で表した量です。モノスタティックRCS $\sigma$ は、入射方向と同じ方向に戻ってくる散乱を測ります。バイスタティックでは入射方向と観測方向が別なので、RCSは2つの方向の関数になります。

$$ \begin{equation} \sigma_B(\hat{\bm{k}}_i, \hat{\bm{k}}_s) = \lim_{R_r \to \infty} 4\pi R_r^2 \frac{\left|\bm{E}_s\right|^2}{\left|\bm{E}_i\right|^2} \end{equation} $$

ここで $\hat{\bm{k}}_i$ は入射方向、$\hat{\bm{k}}_s$ は散乱(観測)方向、$\bm{E}_i$ は標的位置での入射電界、$\bm{E}_s$ は受信機位置での散乱電界です。$\hat{\bm{k}}_s = -\hat{\bm{k}}_i$(後方散乱)とすればモノスタティックRCSに一致します。偏波を考慮する場合は $\sigma_{HH}, \sigma_{HV}, \dots$ と行列(散乱行列)に拡張されます。

小さな $\beta$ でのモノスタティック・バイスタティック等価定理

$\beta$ が小さいとき、バイスタティックRCSはモノスタティックRCSから予測できるでしょうか。クリスピンとシーゲルによるモノスタティック・バイスタティック等価定理は、滑らかで完全導体の物体について、次の近似が成り立つと述べています。

十分小さい $\beta$ に対し、バイスタティックRCS $\sigma_B$ は、バイセクタ方向で測ったモノスタティックRCSに等しい。ただし周波数は $\cos(\beta/2)$ 倍に下げて測る。

直感的には、標的から見て送信機と受信機が「だいたい同じ方向」にあるなら、バイセクタ方向から照らして同じ方向で見ているのとほぼ同じだ、という話です。周波数を下げる補正が入るのは、実効的な位相の進みがバイセクタ方向に射影されて $\cos(\beta/2)$ 倍になるためです。

ただしこの定理には強い前提があります。標的が滑らかであること、鏡面反射が支配的であること、そして $\beta$ が小さいこと。実際の航空機のようにエッジや多重反射やキャビティ(エンジンインテークなど)を持つ物体では、$\beta$ が数十度になった時点で成り立たなくなり、バイスタティックRCSはモノスタティックとまったく違う振る舞いを示します。この「違う振る舞い」こそがバイスタティック配置でステルス機を見つけられる可能性の源泉です。ステルス設計は限られた方向(主に前方の後方散乱方向)でRCSを下げることに最適化されており、すべての方向を同時に低くすることは物理的に不可能だからです。

フォワードスキャッタとバビネの原理

$\beta \to 180^\circ$ の極限、すなわち標的が送信機と受信機を結ぶ直線をちょうど遮る配置では、劇的なことが起こります。

日食を思い浮かべてください。月が太陽を隠すとき、月の縁のまわりから光が回り込んで見えます。物体が波を「遮る」とは、その物体がなければあったはずの波を打ち消す波を、物体が新たに放射しているのと等価です。これがバビネの原理の中身です。不透明な物体による影は、同じ形の穴(相補開口)を開けた遮蔽板を通る波の回折と、数学的に同じ構造を持ちます。

不透明な標的が作る影と、同じ面積の相補開口から放射される波が等価であることを示すバビネの原理の模式図

左は標的が波を遮って影を作る状況、右は同じ形の穴だけを開けた遮蔽板です。影とは「そこにあったはずの波が欠けた領域」であり、その欠けをつくるために標的は元の波と逆位相の波を放射している、と読み替えられます。その放射は右の穴からの回折とまったく同じ形になるので、前方散乱の強さは開口の放射利得 $G = 4\pi A/\lambda^2$ で決まります。標的の中身(形・材質・塗料)は影の輪郭にしか効かないという点が、この等価性の核心です。

具体的に言えば、シルエット面積 $A$ の不透明物体の前方散乱は、面積 $A$ の開口から放射される波と等価です。面積 $A$ の一様励振開口の最大利得は $G = 4\pi A/\lambda^2$ ですから、これを使ってRCSの定義に当てはめると、前方散乱方向でのRCSは次のように評価されます。

$$ \begin{equation} \sigma_{FS} = \frac{4\pi A^2}{\lambda^2} \end{equation} $$

この式が凄まじいのは、標的の形状にも材質にも依存しないという点です。効くのはシルエット面積 $A$ と波長 $\lambda$ だけ。ステルス塗料を塗ろうが、機体を多面体に切り込もうが、太陽を隠す月と同じで「影を作る」という事実だけは消せません。

数値を入れてみましょう。シルエット面積 $A = 10\ \mathrm{m}^2$ の航空機を、$f = 1$ GHz($\lambda = 0.3$ m)で観測する場合、

$$ \sigma_{FS} = \frac{4\pi \times 10^2}{0.3^2} = \frac{1256.6}{0.09} \approx 1.40 \times 10^4\ \mathrm{m^2} = 41.4\ \mathrm{dBsm} $$

となります。ステルス機のモノスタティックRCSが $0.01\ \mathrm{m}^2$($-20$ dBsm)程度だとすると、その差は実に 61 dB、電力比にして 100万倍以上です。これがフォワードスキャッタレーダーが「ステルス対策の切り札」と言われる理由です。

フォワードスキャッタローブは驚くほど狭い

いいことずくめに聞こえますが、大きな制約があります。この巨大なRCSは、厳密な前方方向のごく狭い角度範囲でしか得られません。相補開口の放射パターンがそのまま前方散乱パターンになるので、幅 $D$ のシルエットに対する前方散乱パターンは開口のパターン、すなわち

$$ \begin{equation} \sigma_{FS}(\beta) \approx \frac{4\pi A^2}{\lambda^2}\,\mathrm{sinc}^2\!\left(\frac{\pi D \sin(\pi – \beta)}{\lambda}\right), \qquad \mathrm{sinc}(x) = \frac{\sin x}{x} \end{equation} $$

の形になります($\pi – \beta$ は厳密前方からのずれ角)。第1ヌルは $D\sin(\pi-\beta) = \lambda$、つまり前方から約 $\lambda/D$ ラジアン離れたところに現れます。

先ほどの数値例で $D = 10$ m、$\lambda = 0.3$ m なら、$\lambda/D = 0.03$ rad $\approx 1.7^\circ$ です。わずか1.7度。標的がベースラインを横切る瞬間に、ほんの一瞬だけ巨大なエコーが返ってくる、という使い方しかできません。しかも先ほど見たようにこの領域では距離分解能もドップラーも失われています。フォワードスキャッタレーダーが「侵入検知フェンス」のような、位置測定ではなく通過検知に特化した用途で使われるのは、こうした事情によります。

なお、波長を長くすると($D/\lambda$ を小さくすると)ローブは広がります。VHF帯のような低い周波数を使うパッシブレーダーがステルス探知に有利とされるのは、RCSの絶対値こそ $1/\lambda^2$ の分だけ下がるものの、有効な角度範囲が広がって実用性が増すためです。

散乱の強さが決まったので、いよいよ「どこまで届くか」を計算しましょう。フリスの式から出発してバイスタティックレーダー方程式を組み立てます。

バイスタティックレーダー方程式と検出範囲

フリスの式から組み立てる

フリスの伝達公式は、送信電力 $P_t$、送信アンテナ利得 $G_t$、受信アンテナ利得 $G_r$、距離 $R$ の自由空間リンクで受信電力を与えます。レーダー方程式は、これを「送信機 → 標的」「標的 → 受信機」の2段のリンクとして組み立てることで導けます。

第1段: 送信機から距離 $R_t$ 離れた標的の位置での電力密度は、等方放射なら $P_t/(4\pi R_t^2)$、指向性アンテナなら利得倍して次のようになります。

$$ S_t = \frac{P_t G_t}{4\pi R_t^2} \quad [\mathrm{W/m^2}] $$

第2段: 標的はこの電力密度を受け、RCS $\sigma_B$ の定義に従って「実効的に $S_t \sigma_B$ ワットを等方再放射する」と扱えます。距離 $R_r$ の受信機位置での電力密度は、

$$ S_r = \frac{S_t \sigma_B}{4\pi R_r^2} = \frac{P_t G_t \sigma_B}{(4\pi)^2 R_t^2 R_r^2} $$

第3段: 受信アンテナの実効開口面積は $A_e = G_r\lambda^2/(4\pi)$ ですから、受信電力は電力密度に実効開口を掛けたものです。

$$ \begin{equation} P_r = S_r A_e = \frac{P_t G_t G_r \lambda^2 \sigma_B}{(4\pi)^3 R_t^2 R_r^2 L_{\text{sys}}} \end{equation} $$

$L_{\text{sys}}$ は系統損失(伝送線路損、大気減衰、処理損など、$\geq 1$)です。

モノスタティックのレーダー方程式は $R_t = R_r = R$ とした場合で、分母に $R^4$ が現れる形になります。バイスタティックでは $R^4$ の代わりに距離の積の2乗 $R_t^2 R_r^2$ が現れるところが本質的な違いです。

検出範囲は「距離の積」で決まる

受信機が検出できる最小電力を $P_{\min}$ とすると、検出条件は $P_r \geq P_{\min}$ です。式(15)を距離について整理すると、

$$ R_t^2 R_r^2 \leq \frac{P_t G_t G_r \lambda^2 \sigma_B}{(4\pi)^3 P_{\min} L_{\text{sys}}} \equiv \kappa $$

となります。ここで右辺の定数をまとめて $\kappa$ と置きました。両辺の平方根を取ると、検出条件は極めてシンプルな形になります。

$$ \begin{equation} R_t R_r \leq \sqrt{\kappa} \equiv \Pi_{\max} \end{equation} $$

$\Pi_{\max}$ は最大距離積と呼ばれ、面積の次元を持ちます。モノスタティックなら $R^2 \leq \Pi_{\max}$、すなわち $R \leq \sqrt{\Pi_{\max}}$ となり、検出範囲は半径 $\sqrt{\Pi_{\max}}$ の円になります。

バイスタティックの検出範囲の境界は $R_t R_r = \Pi_{\max}$、すなわち「2つの定点からの距離の積が一定」という条件です。距離の「和」が一定なら楕円でしたが、「積」が一定だとどうなるでしょうか。答えはカッシーニの卵形線(ovals of Cassini)です。17世紀の天文学者ジョヴァンニ・カッシーニが土星の軌道を記述しようとして考えた曲線が、300年後にバイスタティックレーダーの覆域図として復活したのは面白い巡り合わせです。

カッシーニの卵形線の形

具体的な方程式を書き下しましょう。ベースラインの中点を原点、ベースライン方向を $x$ 軸とし、送受信機を $(\pm L/2, 0)$ に置きます。距離積の条件は次の通りです。

$$ \sqrt{\left(x + \tfrac{L}{2}\right)^2 + y^2}\;\cdot\;\sqrt{\left(x – \tfrac{L}{2}\right)^2 + y^2} = \Pi_{\max} $$

両辺を2乗し、左辺の2つの因子を展開します。共通部分をまとめるために $\rho^2 = x^2 + y^2$、$f = L/2$ と置くと、各因子は $\rho^2 + f^2 \pm 2fx$ と書けるので、積は和と差の積の形になります。

$$ \left(\rho^2 + f^2 + 2fx\right)\left(\rho^2 + f^2 – 2fx\right) = \left(\rho^2 + f^2\right)^2 – 4f^2x^2 = \Pi_{\max}^2 $$

これがカッシーニの卵形線の陰関数表示です。$f = 0$(モノスタティック極限)とすると $\rho^4 = \Pi_{\max}^2$、すなわち $\rho = \sqrt{\Pi_{\max}}$ となり、正しく円に戻ります。

この曲線は、$\Pi_{\max}$ と $f = L/2$ の大小関係で質的に形が変わります。カッシーニ曲線の古典的な分類をレーダーの記号で書き直すと次のようになります。

条件 曲線の形 レーダー的な意味
$\Pi_{\max} > L^2/2$ 凸な単一の卵形 ベースライン全体を含む一体の覆域。実用上もっとも望ましい
$L^2/4 < \Pi_{\max} < L^2/2$ くびれた単一の卵形(ピーナッツ形) 一体だがベースライン中央付近が細くなる
$\Pi_{\max} = L^2/4$ ベルヌーイのレムニスケート(8の字) 覆域が分裂する臨界条件
$\Pi_{\max} < L^2/4$ 2つの分離した卵形 送信機まわりと受信機まわりに覆域が分断され、ベースライン中央に穴が開く

最後の行が運用上もっとも重要です。ベースライン上の点では $R_t + R_r = L$ が成り立ち、和が一定なら積は中点で最大 $\left(L/2\right)^2 = L^2/4$ になります(相加相乗平均の関係)。したがって $\Pi_{\max} < L^2/4$ だと、ベースライン中点は検出条件 $R_tR_r \leq \Pi_{\max}$ を満たしません。送受信機を離しすぎると、ちょうどその真ん中が見えなくなるのです。

これを避ける設計指針は明快です。

$$ \begin{equation} \Pi_{\max} = \sqrt{\frac{P_t G_t G_r \lambda^2 \sigma_B}{(4\pi)^3 P_{\min} L_{\text{sys}}}} \;>\; \frac{L^2}{4} \end{equation} $$

これを $L$ について解けば、覆域を分断させないベースライン長の上限 $L < 2\sqrt{\Pi_{\max}}$ が得られます。パッシブレーダーで照射源(放送局など)を選ぶとき、送信電力と受信機感度からこの上限を計算し、設置候補地を絞り込む、というのが実際のシステム設計の第一歩になります。

覆域面積の比較

もう一つ重要な視点があります。同じ電力予算(同じ $\Pi_{\max}$)で比べたとき、バイスタティックの覆域面積はモノスタティックの円より常に小さいという事実です。

数値で確認しましょう。$L = 100$ km として、いくつかの $\Pi_{\max}$ について卵形線の内部面積を数値積分すると、次のような結果になります(本記事末尾のPythonコードで再現できます)。

$\Pi_{\max}\ [\mathrm{km^2}]$ 曲線の形 卵形線の面積 $[\mathrm{km^2}]$ 円 $\pi\Pi_{\max}\ [\mathrm{km^2}]$ 比
1500 2つに分離 1484 4712 0.31
2500 レムニスケート 4993 7854 0.64
4000 くびれた卵形 11227 12566 0.89
8000 凸な卵形 24509 25133 0.98

この表を連続的に描くと、設計上の「効きどころ」がはっきりします。

最大距離積に対する覆域面積比の曲線と、L²/4・L²/2という2つの境目を示した図

面積比の曲線は $\Pi_{\max} = L^2/4$(赤破線)の前後で傾きが最も急になり、そこを下回ると一気に痩せていきます。逆に $\Pi_{\max} = L^2/2$(オレンジ破線)を超えたあたりから曲線は寝てしまい、いくら電力を増やしても比は 1 に漸近するだけです。電力を増やす価値があるのは $\Pi_{\max}$ が $L^2/2$ に届くまでで、それ以降はベースラインを伸ばすか受信機を増やす方が効く、という判断ができます。

$\Pi_{\max}$ がベースライン長に比べて十分大きいとき(表の最下行)、卵形線の面積は等価な円の 98% とほぼ変わりません。逆にベースラインが相対的に長くなると、覆域は急速に痩せていきます。「バイスタティックにするとタダで覆域が広がる」わけではなく、幾何的なペナルティを払っていることを忘れてはいけません。バイスタティックの利点はあくまで、パッシブ運用による秘匿性、照射源の共用によるコスト、そしてバイスタティックRCSによるステルス探知能力にあります。

理論が一通り揃いました。ここからはPythonで、これまで導いた式を実際に絵にしていきましょう。

Pythonによる可視化

数値例の検証

まず、これまで導いた公式が数値的に整合していることを確認します。ベースライン $L = 100$ km、測定された遅延 $\Delta t = 200\ \mu$s、受信機の見込み角 $\theta_R = 60^\circ$ という設定で、標的位置・バイスタティック角・距離分解能を計算します。

import numpy as np

c0 = 3.0e8          # 光速 [m/s]
L = 100e3           # ベースライン長 [m]
dt = 200e-6         # 直接波からの遅延 [s]
theta_R = np.deg2rad(60.0)   # 受信機の見込み角(ベースライン基準)

# 距離和(式3)
R_sum = c0 * dt + L
# バイスタティック距離方程式(式6)
R_r = (R_sum**2 - L**2) / (2.0 * (R_sum - L * np.cos(theta_R)))
R_t = R_sum - R_r

# バイスタティック角(式1の余弦定理を beta について解く)
cos_beta = (R_t**2 + R_r**2 - L**2) / (2.0 * R_t * R_r)
beta = np.arccos(np.clip(cos_beta, -1.0, 1.0))

print(f"バイスタティックレンジ R_t+R_r-L = {c0*dt/1e3:.1f} km")
print(f"距離和 R_sum = {R_sum/1e3:.1f} km")
print(f"R_t = {R_t/1e3:.2f} km,  R_r = {R_r/1e3:.2f} km")
print(f"バイスタティック角 beta = {np.rad2deg(beta):.2f} deg")

# 楕円パラメータ(式4)
a_e = R_sum / 2.0
f_e = L / 2.0
b_e = np.sqrt(a_e**2 - f_e**2)
print(f"楕円: 半長軸 a = {a_e/1e3:.1f} km, 半短軸 b = {b_e/1e3:.2f} km, 離心率 e = {L/R_sum:.3f}")

# 距離分解能(式9)
tau = 1e-6   # パルス圧縮後の実効パルス幅 [s]
dR_mono = c0 * tau / 2.0
dR_bi = c0 * tau / (2.0 * np.cos(beta / 2.0))
print(f"分解能: モノスタティック {dR_mono:.1f} m -> バイスタティック {dR_bi:.1f} m "
      f"(劣化 {dR_bi/dR_mono:.2f} 倍)")

実行すると、距離和 160.0 km、$R_t = 89.09$ km、$R_r = 70.91$ km、バイスタティック角 $\beta = 76.43^\circ$ が得られます。楕円は半長軸 80 km・半短軸 62.45 km・離心率 0.625 で、$L \to 0$ の円から明確にひしゃげた形です。距離分解能は 150 m から 190.9 m へ約 1.27 倍に劣化しました。$\cos(\beta/2) = \cos 38.21^\circ = 0.786$ で割った値と一致しており、式(9)が正しく効いていることが確認できます。この程度の $\beta$ ならペナルティは 3 割弱で済む、というのが読み取れる実務的な感覚です。

等距離和楕円族とバイスタティック角の分布

次に、平面全体で等距離和曲線(楕円族)とバイスタティック角の分布を描きます。この2枚が、バイスタティック幾何のもっとも基本的な地図になります。

import numpy as np
import matplotlib, matplotlib.pyplot as plt

for cand in ["Hiragino Sans", "Yu Gothic", "Noto Sans CJK JP", "IPAexGothic", "Meiryo"]:
    if any(cand == f.name for f in matplotlib.font_manager.fontManager.ttflist):
        plt.rcParams["font.family"] = cand
        break
plt.rcParams["axes.unicode_minus"] = False

L_km = 100.0
Tx = np.array([-L_km / 2, 0.0])   # 送信機 [km]
Rx = np.array([+L_km / 2, 0.0])   # 受信機 [km]

x = np.linspace(-160, 160, 601)
y = np.linspace(-120, 120, 501)
X, Y = np.meshgrid(x, y)
eps = 1e-9
Rt = np.hypot(X - Tx[0], Y - Tx[1]) + eps   # 送信機→標的
Rr = np.hypot(X - Rx[0], Y - Rx[1]) + eps   # 標的→受信機
Rsum = Rt + Rr
beta_deg = np.degrees(np.arccos(np.clip((Rt**2 + Rr**2 - L_km**2) / (2 * Rt * Rr), -1, 1)))

グリッド上で $R_t$、$R_r$、$R_\Sigma$、$\beta$ をまとめて計算しました。焦点(送受信機の位置)で距離がゼロになって割り算が破綻するのを防ぐため、微小量 eps を足しています。続いて描画します。

fig, axes = plt.subplots(1, 2, figsize=(14, 5.5))

# (a) 等距離和曲線(楕円族)
ax = axes[0]
levels = np.arange(110, 340, 20)
cs = ax.contour(X, Y, Rsum, levels=levels, colors="tab:blue", linewidths=1.2)
ax.clabel(cs, inline=True, fmt="%.0f km", fontsize=8)
ax.plot(*Tx, "r^", ms=12, label="送信機")
ax.plot(*Rx, "gv", ms=12, label="受信機")
ax.plot([Tx[0], Rx[0]], [0, 0], "k--", lw=1, label="ベースライン L=100 km")
ax.set_title("(a) 等距離和曲線 = 送受信機を焦点とする楕円族", fontsize=12)
ax.set_xlabel("x [km]"); ax.set_ylabel("y [km]")
ax.legend(loc="upper right", fontsize=9); ax.set_aspect("equal"); ax.grid(alpha=0.3)

# (b) バイスタティック角の分布
ax = axes[1]
pm = ax.pcolormesh(X, Y, beta_deg, cmap="magma", shading="auto", vmin=0, vmax=180)
cb = plt.colorbar(pm, ax=ax); cb.set_label("バイスタティック角 β [度]")
cs2 = ax.contour(X, Y, beta_deg, levels=[5, 30, 60, 90, 120, 165],
                 colors="w", linewidths=0.9)
ax.clabel(cs2, inline=True, fmt="%.0f°", fontsize=8)
ax.plot(*Tx, "r^", ms=12); ax.plot(*Rx, "gv", ms=12)
ax.set_title("(b) バイスタティック角 β の分布(白線は等 β 曲線)", fontsize=12)
ax.set_xlabel("x [km]"); ax.set_ylabel("y [km]")
ax.set_aspect("equal")

plt.tight_layout()
plt.show()

等距離和曲線の楕円族とバイスタティック角βの分布を並べた出力図

左のパネル(a)から、遅延測定が標的を制約する曲線が確かに楕円族であることが読み取れます。ベースラインに近い(距離和が小さい)楕円ほど細長くひしゃげており、遠方(距離和が大きい)ほど円に近づいていきます。これは離心率 $e = L/R_\Sigma$ が距離和とともに減少するという式(4)の帰結そのものです。

右のパネル(b)は、$\beta$ がどこで大きくなるかの地図です。ベースラインの真上(送受信機のあいだ)で $\beta$ は $180^\circ$ に達し、ベースラインの外側の延長線上では $\beta = 0$ になります。そしてベースラインから遠く離れた領域では $\beta$ が急速に小さくなり、白い $5^\circ$ 線の外側は擬似モノスタティック領域と呼べる範囲です。バイスタティックの「困難な領域」はベースライン近傍に局在していることが視覚的にわかります。

距離分解能の劣化マップ

導いた $\Delta R = c\tau/(2\cos(\beta/2))$ を、平面上の劣化係数として描いてみましょう。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

# 劣化係数 = 1/cos(β/2)(モノスタティックを 1 とした比)
degrade = 1.0 / np.cos(np.radians(beta_deg) / 2.0)

fig, axes = plt.subplots(1, 2, figsize=(14, 5))

# (a) 平面上の劣化マップ
ax = axes[0]
pm = ax.pcolormesh(X, Y, np.clip(degrade, 1, 6), cmap="YlOrRd", shading="auto")
cb = plt.colorbar(pm, ax=ax); cb.set_label("距離分解能の劣化係数 1/cos(β/2)")
cs = ax.contour(X, Y, degrade, levels=[1.1, 1.5, 2.0, 3.0], colors="k", linewidths=1.0)
ax.clabel(cs, inline=True, fmt="%.1f 倍", fontsize=8)
ax.plot(*Tx, "b^", ms=11); ax.plot(*Rx, "gv", ms=11)
ax.set_title("(a) 距離分解能はベースライン近傍で急激に悪化", fontsize=12)
ax.set_xlabel("x [km]"); ax.set_ylabel("y [km]"); ax.set_aspect("equal")

# (b) β を掃引したときの分解能
ax = axes[1]
c0, tau = 3.0e8, 1e-6
b_sweep = np.linspace(0, 179.5, 500)
dR = c0 * tau / (2 * np.cos(np.radians(b_sweep) / 2))
ax.plot(b_sweep, dR, lw=2.2, color="tab:red", label="バイスタティック ΔR")
ax.axhline(c0 * tau / 2, ls="--", color="k", label="モノスタティック ΔR = cτ/2")
for bb, txt in [(60, "β=60°\n1.15倍"), (120, "β=120°\n2倍"), (170, "β=170°\n11.5倍")]:
    ax.plot(bb, c0 * tau / (2 * np.cos(np.radians(bb) / 2)), "o", color="tab:blue")
    ax.annotate(txt, (bb, c0 * tau / (2 * np.cos(np.radians(bb) / 2))),
                textcoords="offset points", xytext=(-45, 8), fontsize=9)
ax.set_yscale("log"); ax.set_xlim(0, 180); ax.set_ylim(100, 2e4)
ax.set_xlabel("バイスタティック角 β [度]"); ax.set_ylabel("距離分解能 ΔR [m](対数軸)")
ax.set_title("(b) 分解能劣化は β=120° を境に急加速する", fontsize=12)
ax.legend(fontsize=9); ax.grid(alpha=0.3, which="both")

plt.tight_layout()
plt.show()

距離分解能の劣化係数の平面マップと、βに対する分解能の対数プロットを並べた出力図

左のマップから、劣化が 1.1 倍に収まる領域(黒い等高線の外側)が空間の大部分を占めることがわかります。つまり実用的には、ベースライン近傍を避けて運用すればモノスタティックとほぼ同等の分解能が得られます。逆にベースライン上では劣化係数が発散し、色が振り切れています。

右のグラフは劣化の非線形性を対数軸で示したものです。$\beta = 90^\circ$ でもまだ 1.41 倍にすぎませんが、$\beta = 120^\circ$ でちょうど 2 倍、$170^\circ$ では 11.5 倍と急激に悪化します。$1/\cos(\beta/2)$ という関数は $\beta$ が $180^\circ$ に近づくところで初めて牙をむくタイプの発散で、「かなり大きな $\beta$ までは意外と粘る」というのが実務的に重要な感覚です。

等ドップラー曲線

次にドップラーです。標的が一定速度 $\bm{v}$ で東向きに飛んでいると仮定して、平面上の各点でのドップラー周波数を式(11)から計算し、等距離和楕円と重ねます。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

lam = 0.3               # 波長 [m](1 GHz)
v_vec = np.array([200.0, 0.0])   # 標的速度ベクトル [m/s](+x 方向)

# 単位ベクトル(km 単位のグリッドだが方向だけ使うので無次元)
utx, uty = (X - Tx[0]) / Rt, (Y - Tx[1]) / Rt
urx, ury = (X - Rx[0]) / Rr, (Y - Rx[1]) / Rr

# 距離和の変化率 [m/s](式: Ṙ_Σ = (û_t+û_r)·v)
Rdot = (utx + urx) * v_vec[0] + (uty + ury) * v_vec[1]
fd = -Rdot / lam         # ドップラー周波数 [Hz](近づく側を正)

fig, ax = plt.subplots(figsize=(8.5, 6.5))
pm = ax.pcolormesh(X, Y, fd, cmap="coolwarm", shading="auto", vmin=-1400, vmax=1400)
cb = plt.colorbar(pm, ax=ax); cb.set_label("ドップラー周波数 $f_d$ [Hz]")
csd = ax.contour(X, Y, fd, levels=np.arange(-1200, 1400, 300),
                 colors="k", linewidths=0.9)
ax.clabel(csd, inline=True, fmt="%.0f Hz", fontsize=8)
cse = ax.contour(X, Y, Rsum, levels=np.arange(120, 340, 40),
                 colors="lime", linewidths=1.3, linestyles="--")
ax.plot(*Tx, "b^", ms=12, label="送信機"); ax.plot(*Rx, "gv", ms=12, label="受信機")
ax.set_title("等ドップラー曲線(黒・カラー)と等距離和楕円(緑破線)\n"
             "標的速度 200 m/s (+x 方向), λ=0.3 m", fontsize=12)
ax.set_xlabel("x [km]"); ax.set_ylabel("y [km]")
ax.set_aspect("equal"); ax.legend(loc="upper right", fontsize=9)
plt.tight_layout()
plt.show()

等ドップラー曲線と等距離和楕円を重ねた出力図

この図からは3つのことが読み取れます。第一に、ドップラーの最大値は $\pm 2v/\lambda = \pm 1333$ Hz で、これはベースラインの外側延長線上($\beta = 0$、擬似モノスタティック)でのみ達成されます。第二に、ベースライン上(送受信機のあいだ)では色が白 = $f_d \approx 0$ になっており、フォワードスキャッタでドップラーが消えるという予測が視覚的に確認できます。第三に、黒い等ドップラー曲線と緑の等距離和楕円は多くの領域で斜めに交差していますが、ベースラインに近づくほど平行に近づきます。遅延とドップラーという2つの測定が独立でなくなる領域であり、位置推定の幾何学的精度低下(GDOP)が悪化する場所を示しています。

フォワードスキャッタでのRCS増大

バビネの原理による前方散乱RCSの増大を、角度の関数として描きます。シルエット面積 $A = 10\ \mathrm{m}^2$、幅 $D = 10$ m の標的を仮定します。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

lam = 0.3          # 波長 [m](1 GHz)
A_sil = 10.0       # シルエット面積 [m^2]
D_w = 10.0         # シルエット幅 [m]
sigma_mono = 0.01  # ステルス機のモノスタティックRCS [m^2] (-20 dBsm)

beta_s = np.linspace(90.0, 180.0, 4000)
theta_s = np.radians(180.0 - beta_s)          # 厳密前方からのずれ角
u = np.pi * D_w * np.sin(theta_s) / lam
sinc2 = np.where(np.abs(u) < 1e-12, 1.0, (np.sin(u) / np.where(u == 0, 1, u))**2)
sigma_fs = 4 * np.pi * A_sil**2 / lam**2 * sinc2   # 式(14)
sigma_total = sigma_mono + sigma_fs                 # 背景 + 前方散乱の簡易合成モデル

fig, axes = plt.subplots(1, 2, figsize=(14, 5))
for ax, xlim, ttl in [(axes[0], (90, 180), "(a) 広い角度範囲"),
                      (axes[1], (172, 180), "(b) 前方付近の拡大")]:
    ax.plot(beta_s, 10 * np.log10(sigma_total), lw=2, color="tab:red",
            label="バイスタティックRCS(簡易モデル)")
    ax.axhline(10 * np.log10(sigma_mono), ls="--", color="k",
               label="モノスタティックRCS (-20 dBsm)")
    ax.axhline(10 * np.log10(4 * np.pi * A_sil**2 / lam**2), ls=":", color="tab:blue",
               label="バビネ極限 $4\\pi A^2/\\lambda^2$")
    ax.set_xlim(*xlim); ax.set_ylim(-30, 50)
    ax.set_xlabel("バイスタティック角 β [度]"); ax.set_ylabel("RCS [dBsm]")
    ax.set_title(ttl + ":前方散乱ローブは非常に狭い", fontsize=12)
    ax.grid(alpha=0.3); ax.legend(fontsize=8, loc="upper left")
plt.tight_layout()
plt.show()

print(f"バビネ極限 = {4*np.pi*A_sil**2/lam**2:.0f} m^2 "
      f"= {10*np.log10(4*np.pi*A_sil**2/lam**2):.1f} dBsm")
print(f"モノスタティックとの差 = "
      f"{10*np.log10(4*np.pi*A_sil**2/lam**2) - 10*np.log10(sigma_mono):.1f} dB")
print(f"第1ヌルの角度幅 ≈ λ/D = {np.degrees(lam/D_w):.2f} 度")

バイスタティック角に対する前方散乱RCSを広角と拡大の2パネルで示した出力図

出力から、バビネ極限は 13963 m²(41.4 dBsm)で、ステルス機のモノスタティックRCS($-20$ dBsm)との差は 61.4 dB に達することが確認できます。しかし右の拡大図を見ると、この巨大な値が得られるのは厳密前方から $\pm 1.7^\circ$ ほどのごく狭いローブの中だけです。少しでも外れると sinc の第1ヌルに落ち込み、その先はサイドローブとして急速に減衰します。「ステルス機でも前方散乱なら丸見え」は正しいが、その「丸見え」の窓は非常に狭い — この両面性がフォワードスキャッタレーダーの設計を難しくしています。

なお、ここで使ったモデルは「一様な背景RCS + バビネの前方散乱ローブ」という教育目的の簡易合成であり、実機のバイスタティックRCSは形状に依存して複雑に変動します。定量設計には電磁界解析や実測が必要です。

検出範囲:カッシーニの卵形線

最後に、バイスタティックレーダー方程式が定める検出範囲を描きます。$L = 100$ km に対して最大距離積 $\Pi_{\max}$ を変えると、覆域が凸な卵形からレムニスケートを経て2つに分裂する様子が見られます。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

L_km = 100.0
Tx = np.array([-L_km / 2, 0.0]); Rx = np.array([+L_km / 2, 0.0])
gx = np.linspace(-200, 200, 1201); gy = np.linspace(-200, 200, 1201)
GX, GY = np.meshgrid(gx, gy)
d1 = np.hypot(GX - Tx[0], GY - Tx[1])
d2 = np.hypot(GX - Rx[0], GY - Rx[1])
prod = d1 * d2                      # 距離積 R_t * R_r
cell = (gx[1] - gx[0]) * (gy[1] - gy[0])

cases = [(1500., "2つに分離", "tab:purple"),
         (2500., "レムニスケート(臨界)", "tab:red"),
         (4000., "くびれた卵形", "tab:orange"),
         (8000., "凸な卵形", "tab:green")]

fig, ax = plt.subplots(figsize=(8.5, 8))
for Pi, label, col in cases:
    ax.contour(GX, GY, prod, levels=[Pi], colors=[col], linewidths=2.2)
    # 等価な電力予算のモノスタティック覆域(半径 sqrt(Pi) の円)
    th = np.linspace(0, 2 * np.pi, 400)
    ax.plot(np.sqrt(Pi) * np.cos(th), np.sqrt(Pi) * np.sin(th),
            ls=":", color=col, lw=1.3)
    area = (prod <= Pi).sum() * cell
    print(f"Π={Pi:6.0f} km^2 ({label}): 卵形線面積={area:8.0f} km^2, "
          f"等価円面積={np.pi*Pi:8.0f} km^2, 比={area/(np.pi*Pi):.2f}")
    ax.plot([], [], color=col, lw=2.2, label=f"Π={Pi:.0f} km²:{label}")

ax.plot(*Tx, "b^", ms=13, label="送信機"); ax.plot(*Rx, "gv", ms=13, label="受信機")
ax.plot([Tx[0], Rx[0]], [0, 0], "k--", lw=1)
ax.set_title("バイスタティック覆域=カッシーニの卵形線(実線)\n"
             "同じ電力予算のモノスタティック円(点線)と比較, L=100 km", fontsize=12)
ax.set_xlabel("x [km]"); ax.set_ylabel("y [km]")
ax.set_aspect("equal"); ax.grid(alpha=0.3); ax.legend(fontsize=9, loc="upper right")
plt.tight_layout()
plt.show()

最大距離積を変えたときのカッシーニの卵形線と等価なモノスタティック円を重ねた出力図

この図はバイスタティックレーダー設計の要点を1枚に凝縮しています。緑の $\Pi_{\max} = 8000\ \mathrm{km^2}$ では卵形線が点線の円とほぼ重なり、ベースラインを離しても覆域はほとんど損なわれていません(面積比 0.98)。ところが $\Pi_{\max}$ を下げていくと卵形線は中央がくびれ、$\Pi_{\max} = L^2/4 = 2500\ \mathrm{km^2}$ でレムニスケートになって面積比は 0.64 まで落ちます。さらに小さい $\Pi_{\max} = 1500\ \mathrm{km^2}$ では覆域が送信機まわりと受信機まわりの2つに分裂し、面積比はわずか 0.31 です。

数値出力からも、ベースライン長 $L$ に対して $\Pi_{\max} > L^2/2$ を確保できていれば覆域のペナルティはほぼ無視できるという設計指針が定量的に裏付けられます。逆に言えば、パッシブレーダーで弱い照射源しか使えない場合や、ステルス標的で $\sigma_B$ が小さい場合には、ベースラインを短くとるか受信機を増やしてマルチスタティック化するしかありません。

まとめ

本記事では、バイスタティックレーダーの幾何を距離和楕円から体系的に導きました。

  • 遅延が測るのは距離の和 — 受信機は直接波との時間差 $\Delta t$ から $R_\Sigma = R_t + R_r = c\Delta t + L$ を得ます。位置ではなくスカラー1つです
  • 等距離和曲線は送受信機を焦点とする楕円(3次元では回転楕円体)です。半長軸 $a = R_\Sigma/2$、半焦点距離 $f = L/2$、離心率 $e = L/R_\Sigma$ で、$L \to 0$ で円=モノスタティックに帰着します
  • 距離和の勾配は $\hat{\bm{u}}_t + \hat{\bm{u}}_r$、その大きさは $2\cos(\beta/2)$ です。この一つの計算から、距離分解能 $\Delta R = c\tau/(2\cos(\beta/2))$ と、楕円の法線がバイスタティック角の二等分線になることの両方が出てきます
  • ドップラーの一般式は $f_d = -\frac{2v}{\lambda}\cos(\beta/2)\cos\delta$ です。$\beta = 0$ でモノスタティックの $2v\cos\delta/\lambda$ に帰着し、$\beta \to 180^\circ$ ではドップラーが完全に消えます
  • フォワードスキャッタではバビネの原理により $\sigma_{FS} = 4\pi A^2/\lambda^2$ という形状に依存しない巨大なRCSが得られますが、その角度幅は $\sim\lambda/D$ と極めて狭く、同時に距離分解能もドップラーも失われます
  • バイスタティックレーダー方程式 $P_r = P_tG_tG_r\lambda^2\sigma_B / \left[(4\pi)^3 R_t^2R_r^2 L_{\text{sys}}\right]$ から検出条件は $R_tR_r \leq \Pi_{\max}$ となり、覆域はカッシーニの卵形線になります。$\Pi_{\max} < L^2/4$ ではベースライン中央に覆域の穴が開くため、$L < 2\sqrt{\Pi_{\max}}$ が基本の設計制約です

バイスタティックの本質は、$\cos(\beta/2)$ という一つの因子に集約されます。分解能ではこれが分母に来て性能を下げ、ドップラーでは分子に来て感度を下げ、その代わりにRCSではモノスタティックの制約から解放してくれる — この trade-off をどこに置くかが、バイスタティックシステム設計そのものです。

次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。