ラジオ放送やアマチュア無線では「AM」という言葉をよく耳にします。しかし、ひとくちにAM変調といっても、実際には複数のバリエーションがあることをご存知でしょうか。標準的なAM(DSB-FC)では、送信電力の大部分が情報を含まない搬送波に費やされ、しかも同じ情報が上側波帯と下側波帯の両方に重複して載っています。
どれくらいのムダなのかを先に数字で言ってしまいましょう。この記事で実際に計算したところ、変調度を限界の100%まで上げても、情報を運ぶ側波帯は全送信電力のわずか33.3%しかありませんでした。残りの66.7%は、聞き手に何の情報も届けない搬送波を送るためだけに消えています。1 kWの送信機を持っていても、実際に情報を運んでいるのは333 Wぶんだけ、ということです。
この「ムダ」を体系的に削減していく方式が、DSB-SC(Double Sideband Suppressed Carrier:搬送波抑圧両側波帯) と SSB(Single Sideband:単側波帯) です。DSB-SCは搬送波を取り除いて電力効率を改善し、SSBはさらに片側の側波帯も除去して帯域効率を高めます。
これらの方式を理解すると、次のような応用に直結します。
- 短波(HF帯)の長距離音声通信: SSBは事実上の標準方式です。同じ送信電力で標準AMの3倍の「情報の電力」を相手に届けられるため、電離層反射で減衰しきった信号でも了解度を保てます
- 航空無線・海上通信: 限られた周波数割り当ての中に多数のチャンネルを詰め込む必要があり、占有帯域を半分にできるSSBが用いられます
- ディジタル通信の基盤: QAM(直交振幅変調)はDSB-SCを2つ直交させて多重したものであり、Wi-FiやLTE、5G NRの変調方式はすべてこの延長線上にあります
- 信号処理の道具立て: SSB生成に使うヒルベルト変換は、包絡線検波・瞬時周波数推定・複素ベースバンド表現など、無線に限らず信号解析の基本道具です
まず、これから登場する3つの方式が「周波数軸のどこに何を残すのか」を一枚の絵で押さえておきましょう。

上段の標準AMでは、搬送波周波数 $f_c$ にそびえ立つ矢印(搬送波)と、その左右に対称に広がる三角形(下側波帯と上側波帯)の3つが送られています。中段のDSB-SCは矢印だけを消したもので、三角形は左右とも残るので帯域幅は $2W$ のまま変わりません。下段のSSBは矢印に加えて左側の三角形も消しており、占有する周波数の幅が $W$ に、つまり半分になっています。この「縦(電力)を削るのがDSB-SC、横(帯域)を削るのがSSB」という対応関係が、記事全体の見取り図になります。
本記事では次の順序で解説します。
- 標準AM(DSB-FC)の構造と、変調度・電力配分・包絡線検波の実測
- DSB-SC変調の原理と、同期検波・位相誤差の影響
- SSBの必要性と2つの生成法(フィルタ法・位相法)、位相精度の要求
- SSB復調における周波数誤差の影響
- VSB(残留側波帯)の概念と用途
- 帯域幅・電力効率の定量比較とQAMへのつながり
前提知識
この記事を読む前に、以下の記事を読んでおくと理解が深まります。
標準AM(DSB-FC)の復習 — 何がムダなのか
SSBやDSB-SCの意義を理解するには、まず標準的なAM変調(DSB-FC: Double Sideband Full Carrier)の構造を押さえ、「何がムダなのか」を明確にする必要があります。
標準AMでは、メッセージ信号 $m(t)$ を搬送波 $\cos(2\pi f_c t)$ に乗せるとき、次のように送信信号を生成します。
$$ \begin{equation} s_{\text{AM}}(t) = A_c \bigl[1 + k_a m(t)\bigr] \cos(2\pi f_c t) \end{equation} $$
ここで $A_c$ は搬送波振幅、$k_a$ は変調感度(変調指数を制御するパラメータ)です。角括弧の中を分配してから展開すると、次の2項に分かれます。
$$ s_{\text{AM}}(t) = \underbrace{A_c \cos(2\pi f_c t)}_{\text{搬送波}} + \underbrace{A_c k_a m(t) \cos(2\pi f_c t)}_{\text{情報成分}} $$
第1項 $A_c \cos(2\pi f_c t)$ は $m(t)$ をまったく含まない純粋な正弦波であり、メッセージ情報を一切運びません。第2項だけがメッセージ情報を運ぶ成分です。にもかかわらず、送信機はこの2つを合わせて送り出すため、電力は両方に配分されてしまいます。
変調度と包絡線 — なぜ $m$ は1を超えてはいけないのか
標準AMの受信機がやっていることは、「振幅の山の高さの変化を追いかける」ことです。信号 $s_{\text{AM}}(t)$ の振幅の輪郭、すなわち包絡線が $A_c[1 + k_a m(t)]$ となるので、この輪郭を取り出せばメッセージが戻ってきます。ここで重要なのが変調度
$$ m = k_a \max|m(t)| $$
です。$m$ は「搬送波の振幅に対して、どれだけ深く振幅を揺さぶるか」を表します。$m$ を大きくするほど情報成分の電力が増えるので、送信側としては大きくしたい。しかし無制限には上げられません。単一正弦波メッセージについて $m = 0.5, 1.0, 1.5$ の3通りを実際に計算した結果が次の図です。

上段($m=0.5$)では包絡線の最小値が $+0.50$ で、青い包絡線と受信機が取り出す赤い破線が完全に重なっています。中段($m=1.0$)は最小値がちょうど $0.00$ で、包絡線が横軸に接する限界の状態です。下段($m=1.5$)では包絡線の最小値が $-0.50$ と負になり、受信機が見る $|1 + m\,m(t)|$ が本来の波形から最大 $1.00$ もずれています。これが過変調で、負になるはずの部分が折り返されてしまうため、包絡線検波では元の波形をどうやっても復元できません。要するに、$m \le 1$ は「守らないと情報が壊れる」制約であり、AMの電力効率を語るときの上限もここで決まります。
周波数領域での構造
次に、同じ信号を周波数の側から眺めます。フーリエ変換の変調定理(周波数シフト性質)を使うと、$m(t) \cos(2\pi f_c t)$ のスペクトルは $M(f)$ を $\pm f_c$ だけシフトしたものになります。
$$ \mathcal{F}\bigl[m(t)\cos(2\pi f_c t)\bigr] = \frac{1}{2}\bigl[M(f – f_c) + M(f + f_c)\bigr] $$
したがって、標準AM信号のスペクトルには次の3つの成分が現れます。
- 搬送波: $f = \pm f_c$ にデルタ関数(電力を消費するが情報なし)
- 上側波帯(USB): $f_c$ より高い周波数帯に $M(f)$ のコピー
- 下側波帯(LSB): $f_c$ より低い周波数帯に $M(f)$ の鏡像コピー
実際に $f_c = 500$ Hz、$f_m = 50$ Hz、$m = 0.6$ の信号をFFTにかけて振幅を測ると、次のようになります。

実測値は、搬送波(500 Hz)が $1.0000$、上側波帯(550 Hz)と下側波帯(450 Hz)がそれぞれ $0.3000$ でした。側波帯の振幅がちょうど $m/2 = 0.3$ になっているのは理論どおりで、$m$ をどれだけ上げても側波帯の振幅は搬送波の半分($m=1$ のとき $0.5$)までしか届かないことを意味します。占有帯域は $f_c \pm f_m$ の $2W = 100$ Hz で、メッセージの帯域 $50$ Hz の2倍になっています。
USBとLSBは $M(f)$ の鏡像関係にあり、まったく同じ情報を運んでいます。つまり標準AMには2つのムダがあります。
| ムダの種類 | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 搬送波の送信 | 情報を含まない搬送波に電力の大半が使われる | 電力効率が低い |
| 両側波帯の送信 | 同じ情報が2回送られる | 帯域効率が低い(帯域幅 $= 2W$) |
「電力の大半」と書きましたが、これは具体的に何割なのでしょうか。次に実測してみます。
電力配分 — 100%変調でも情報は全体の1/3
送信電力の内訳を求めるには、信号を「搬送波成分」と「情報成分」に分けて、それぞれの時間平均電力を計算すればよいだけです。$m(t) = \cos(2\pi f_m t)$ のとき、正弦波の二乗平均が $1/2$ であることを使うと、
$$ P_c = \frac{A_c^2}{2}, \qquad P_{\text{SB}} = \frac{A_c^2 m^2}{2}\cdot\frac{1}{2} = \frac{A_c^2 m^2}{4} $$
となります。ここで $P_c$ は搬送波電力、$P_{\text{SB}}$ は上下2つの側波帯の合計電力です。総電力は両者の和なので、$P_c$ でくくると
$$ \begin{equation} P_{\text{total}} = P_c + P_{\text{SB}} = P_c\left(1 + \frac{m^2}{2}\right) \end{equation} $$
という有名な式が得られます。この式を数値で確かめたのが次の図です。$A_c = 1$ として実際に信号を生成し、時間平均電力を測っています。

実測結果は、$m=0.3$ で搬送波95.69% / 側波帯4.31%、$m=0.5$ で88.89% / 11.11%、$m=0.8$ で75.76% / 24.24%、そして限界の $m=1.0$ でも66.67% / 33.33% でした。総電力も $m=1$ のとき $0.7500$ となり、理論式 $0.5 \times (1 + 1/2) = 0.75$ と一致しています。つまり、法令や歪みの制約をすべて無視して変調度を限界まで振り切っても、情報が乗っているのは送信電力の3分の1だけということです。$m=0.3$ という控えめな変調では、実に95.7%が搬送波として空中に捨てられています。
この「情報を運ぶ電力の割合」を電力効率 $\eta$ と呼び、上の式から次のように書けます。
$$ \begin{equation} \eta_{\text{AM}} = \frac{P_{\text{SB}}}{P_{\text{total}}} = \frac{m^2 / 2}{1 + m^2 / 2} \end{equation} $$
分子・分母を $P_c$ で割った形になっていることに注意してください。$m$ を $0$ から $1$ まで動かしたときの振る舞いを描くと次のようになります。

曲線は $m$ の小さいところで極端に低く($m=0.3$ で4.31%)、$m=1$ でようやく33.33%に達して頭打ちになります。しかも $m^2$ に比例するため、変調度を2倍にしても効率は4倍近くまでしか伸びず、いくら頑張っても赤い破線(搬送波を送らないDSB-SC・SSBの100%)には遠く及びません。AMの電力効率の悪さは調整で改善できる性質のものではなく、「搬送波を送る」という構造そのものに由来するのです。
それでも標準AMが使われる理由 — 包絡線検波の単純さ
ここまで読むと標準AMは救いようがないように見えますが、決定的な長所が1つあります。受信機がダイオード1本とコンデンサ・抵抗だけで作れることです。包絡線検波器は、ダイオードで波形の正の部分だけを通し、コンデンサにピーク電圧を保持させ、抵抗でゆっくり放電させる、という素朴な回路です。この放電の速さを決めるのが時定数 $RC$ で、次の2つの条件に挟まれます。
$$ \frac{1}{f_c} \ll RC \ll \frac{\sqrt{1-m^2}}{m \cdot 2\pi f_m} $$
左側は「搬送波の1周期のあいだに放電しきってしまわない」条件、右側は「包絡線が下がる速さに追いつける」条件です。$f_c = 20$ kHz、$f_m = 50$ Hz、$m = 0.8$ の条件では、左辺が $50\ \mu$s、右辺が $2.39$ ms となり、$RC$ はこの間に収める必要があります。3通りの $RC$ で実際に検波した結果が次の図です。

$RC = 5\ \mu$s(小さすぎ)では搬送波の1周期ごとに放電しきってしまい、拡大図のとおり出力がゼロ付近まで落ちるリップルだらけの波形になって、真の包絡線に対する正規化RMS誤差は74.91%に達しました。$RC = 0.5$ ms(適切)では拡大図でもほぼ平坦に包絡線をなぞり、誤差は5.04%まで下がります。逆に $RC = 20$ ms(大きすぎ)では放電が間に合わず、包絡線の下り坂を直線的に横切ってしまい(これを対角クリッピングと呼びます)、誤差は46.39%に悪化しました。回路は単純でも、時定数の選択は上の不等式で挟まれた狭い範囲に限られるというのが実測から読み取れる要点です。
以上をまとめると、標準AMは「受信機は極端に安いが、電力の2/3以上を捨て、帯域も2倍使う」方式でした。この2つのムダを段階的に解消していくのが、これから解説するDSB-SCとSSBです。まず、搬送波のムダを取り除くDSB-SCから見ていきましょう。
DSB-SC(搬送波抑圧両側波帯)の原理
直感的な理解
DSB-SCのアイデアはシンプルです。標準AMの式 $s_{\text{AM}}(t) = A_c[1 + k_a m(t)]\cos(2\pi f_c t)$ で、搬送波成分 $A_c\cos(2\pi f_c t)$ は情報を運ばないのに電力を消費している。ならば、搬送波を送らず、情報成分だけを送ればよいのです。式の上では、角括弧の中の定数項 $1$ を消すだけです。
数学的定義
DSB-SC信号は、メッセージ信号と搬送波の単純な積として定義されます。
$$ \begin{equation} s_{\text{DSB}}(t) = m(t) \cos(2\pi f_c t) \end{equation} $$
標準AMの式から定数項を取り除いただけですが、これにより搬送波成分が消え、送信電力のすべてが情報伝送に使われます。回路的には、加算をしない乗算器(バランスド・ミキサ、リング変調器)1つで実現できます。
周波数スペクトル
先ほどの変調定理をそのまま適用すると、
$$ S_{\text{DSB}}(f) = \frac{1}{2}\bigl[M(f – f_c) + M(f + f_c)\bigr] $$
となります。$\pm f_c$ にデルタ関数は現れず、メッセージスペクトル $M(f)$ をシフトした成分だけが残ります。帯域幅は標準AMと同じ $2W$ のままですが、搬送波に使われていた電力がなくなった分、電力効率は $100\%$ に跳ね上がります。
波形に何が起きるか — 位相の反転
電力効率が上がる代わりに、時間波形の性質が大きく変わります。標準AMでは包絡線が常に正でしたが、DSB-SCでは $m(t)$ が負になる区間で搬送波の符号が反転します。実際の波形とスペクトルを見てみましょう。

上段では、$m(t)$ がゼロを横切る 2.5 ms、7.5 ms、12.5 ms、17.5 ms の各点(赤い一点鎖線)で搬送波の位相が $180°$ 飛んでいます。そのため波形の輪郭は赤い破線の $|m(t)|$ となり、元の $m(t)$ の符号情報が失われています。下段のスペクトル比較では、側波帯の振幅は標準AMもDSB-SCもともに $0.30000$ で変わらないのに対し、搬送波成分だけが $1.00000$ から $1.335 \times 10^{-16}$(数値計算上のゼロ)へ落ちています。側波帯はそのままに搬送波だけが消え、帯域幅は変わらない — DSB-SCの本質がこの一枚に凝縮されています。
搬送波を送らないということは、受信側で搬送波を復元しなければならないということです。次に、この復調方法を見ていきましょう。
DSB-SCの復調 — 同期検波
なぜ包絡線検波が使えないのか
図6で見たとおり、DSB-SC信号の包絡線は $|m(t)|$ です。たとえば $m(t) = \cos(2\pi f_m t)$ のような正弦波メッセージなら、包絡線は $|\cos(2\pi f_m t)|$ という全波整流された波形になり、周波数も2倍に見えてしまいます。ダイオード検波器は振幅の大きさしか見ないので、位相が $180°$ 飛んだかどうかを判別できないのです。
同期検波(コヒーレント検波)の原理
DSB-SCの復調には、受信側で搬送波と位相が同期した局部発振器(ローカルオシレータ)を用意し、受信信号に掛け算する同期検波が必要です。受信信号 $r(t) = m(t)\cos(2\pi f_c t)$ に、局部発振器の信号 $\cos(2\pi f_c t + \phi)$ を掛けます。
$$ v(t) = r(t) \cdot \cos(2\pi f_c t + \phi) = m(t)\cos(2\pi f_c t)\cos(2\pi f_c t + \phi) $$
ここで三角関数の積和公式 $\cos A \cos B = \frac{1}{2}[\cos(A-B) + \cos(A+B)]$ を、$A = 2\pi f_c t$、$B = 2\pi f_c t + \phi$ として適用します。$A – B = -\phi$、$A + B = 4\pi f_c t + \phi$ なので、
$$ v(t) = \frac{1}{2}m(t)\cos(\phi) + \frac{1}{2}m(t)\cos(4\pi f_c t + \phi) $$
第1項は $m(t)$ をそのまま定数倍したベースバンド成分、第2項は搬送波周波数の2倍($2f_c$)付近に持ち上がった高周波成分です。両者は周波数軸上で大きく離れているので、ローパスフィルタ(LPF)で第2項を落とせます。LPF通過後の出力は
$$ y(t) = \frac{1}{2}m(t)\cos(\phi) $$
となり、位相誤差 $\phi = 0$ のとき $y(t) = \frac{1}{2}m(t)$ すなわち元のメッセージが定数倍で復元されます。
位相誤差の影響 — 直交ヌル
上の式から明らかなように、出力は $\cos(\phi)$ に比例して小さくなります。$\phi$ を $0°$ から $90°$ まで振って、復調出力の振幅を実測したのが次の図です。比較のため、後で扱うSSBの結果も同じ図に載せています。

左のグラフでDSB-SCの実測値(丸印)は理論曲線 $\cos\phi$(黒破線)にぴったり重なり、$\phi = 30°$ で $0.8660$、$45°$ で $0.7071$、$60°$ で $0.5000$、$90°$ で $0.0000$ でした。右のグラフの波形を見ると、$\phi = 90°$ では出力が完全に消えています。この現象を直交ヌル(quadrature null) と呼び、後述するQAMの原理そのものです。
一方、SSBの実測値(四角印)は $\phi$ をどれだけ増やしても $1.0000$ のまま変化しません。これは後で理由を説明しますが、SSBは位相誤差で振幅が落ちないという重要な違いです。DSB-SCとSSBは「どちらも同期検波が必要」と一括りにされがちですが、位相誤差への応答はまったく異なります。
実装上は、DSB-SCの受信機には搬送波再生回路が必須になります。搬送波そのものは送られてこないので、側波帯の情報から搬送波の位相を推定するコスタスループや、2逓倍してPLLで引き込む回路が使われます。
ここまでで、DSB-SCが搬送波を除去して電力効率を改善することを見てきました。しかし帯域幅は依然として $2W$ のままです。メッセージ帯域幅 $W$ に対して2倍の帯域を占有する — この「もう一つのムダ」を解消するのがSSBです。
SSB(単側波帯)変調の原理
なぜ片方の側波帯だけでよいのか
DSB-SCのスペクトルは搬送波周波数 $f_c$ に対して対称です。つまり、上側波帯(USB)と下側波帯(LSB)は互いに鏡像であり、まったく同じ情報を運んでいます。
もう少し正確に言うと、実数信号 $m(t)$ のフーリエ変換 $M(f)$ は $M(-f) = M^*(f)$ という共役対称性を持ちます。この対称性のため、$f > 0$ 側のスペクトルさえ分かれば $f < 0$ 側は自動的に決まり、逆も成り立ちます。$m(t)$ を $f_c$ にシフトした後も対称性は保たれるので、USBの成分を知ればLSBの成分は完全に再現できます。
したがって、片方の側波帯だけを送信しても情報は失われません。これがSSBの基本的な発想です。SSBでは帯域幅が $W$ に半減し、同じ周波数割り当てに2倍のチャンネルを詰め込めます。
SSB信号の数学的表現
SSBの数学的定義にはヒルベルト変換が不可欠です。メッセージ信号 $m(t)$ のヒルベルト変換 $\hat{m}(t)$ は、$m(t)$ のすべての周波数成分の位相を $-90°$ 回転させたものとして定義されます。
$$ \begin{equation} \hat{m}(t) = \mathcal{H}\{m(t)\} = \frac{1}{\pi} \text{p.v.} \int_{-\infty}^{\infty} \frac{m(\tau)}{t – \tau} \, d\tau \end{equation} $$
ここで p.v. はコーシーの主値積分を表します。積分の形は取っつきにくいですが、周波数領域での効果は明快で、伝達関数は
$$ H_{\text{HT}}(f) = -j \operatorname{sgn}(f) = \begin{cases} -j & (f > 0) \\ j & (f < 0) \end{cases} $$
です。$|{-j}| = 1$ なので振幅スペクトルはまったく変わらず、正の周波数成分の位相を $-90°$、負の周波数成分の位相を $+90°$ だけ回します。$\cos$ が $\sin$ に、$\sin$ が $-\cos$ になる操作だと思えば十分です。
このヒルベルト変換を使うと、SSB信号は次のように表されます。
$$ \begin{equation} s_{\text{SSB}}(t) = m(t)\cos(2\pi f_c t) \mp \hat{m}(t)\sin(2\pi f_c t) \end{equation} $$
ここで、$-$ を取るとUSB(上側波帯)、$+$ を取るとLSB(下側波帯)になります。
なぜこの式で片方の側波帯が消えるのかを確認しましょう。第1項 $m(t)\cos(2\pi f_c t)$ のスペクトルは、変調定理より
$$ \frac{1}{2}\bigl[M(f-f_c) + M(f+f_c)\bigr] $$
です。第2項については、$\sin$ の変調定理 $\mathcal{F}[x(t)\sin(2\pi f_c t)] = \frac{1}{2j}[X(f-f_c) – X(f+f_c)]$ を $x = \hat{m}$ として使うと
$$ \mathcal{F}[\hat{m}(t)\sin(2\pi f_c t)] = \frac{1}{2j}\bigl[\hat{M}(f-f_c) – \hat{M}(f+f_c)\bigr] $$
となります。ここに $\hat{M}(f) = -j\operatorname{sgn}(f) \cdot M(f)$ を代入すると、$\frac{1}{2j} \times (-j) = -\frac{1}{2}$ の係数が出て
$$ \mathcal{F}[\hat{m}(t)\sin(2\pi f_c t)] = -\frac{1}{2}\bigl[\operatorname{sgn}(f-f_c)M(f-f_c) – \operatorname{sgn}(f+f_c)M(f+f_c)\bigr] $$
を得ます。USBの場合($-$ 符号)にこの2式の差を取ると、$f > f_c$ の領域では $\operatorname{sgn}(f – f_c) = +1$ なので $\frac{1}{2}M + \frac{1}{2}M = M$ と強め合い、$0 < f < f_c$ の領域では $\operatorname{sgn}(f - f_c) = -1$ なので $\frac{1}{2}M - \frac{1}{2}M = 0$ と打ち消し合います。
この導出は係数の追跡が煩雑ですが、結論は明快です。ヒルベルト変換で $90°$ ずらした信号を、$90°$ ずらした搬送波に載せて足し引きすると、片方の側波帯だけが正確にキャンセルされるのです。ではこれを回路やソフトウェアでどう実現するのか、2つの代表的な方法を見ていきましょう。
SSBの生成法
フィルタ法
最も直感的な方法は、まずDSB-SC信号を生成し、そこから不要な側波帯を帯域通過フィルタ(BPF)で除去するアプローチです。
- メッセージ信号 $m(t)$ と搬送波 $\cos(2\pi f_c t)$ を乗算してDSB-SC信号を生成
- BPFでUSBまたはLSBのみを通過させる
長所 は原理が単純で、フィルタの素性さえよければ抑圧比を稼げること。短所 は、側波帯の境界(搬送波周波数のすぐ両脇)でフィルタの遷移帯域が問題になることです。音声信号のように低域に成分があるメッセージでは、USBの下端とLSBの上端が $f_c$ を挟んで数百Hz以内に接近しており、極端に急峻なカットオフ特性が要求されます。
実用的には、搬送波周波数をあえて低い中間周波数(IF)に設定してそこでSSBフィルタリングを行い、その後に目的の送信周波数へアップコンバートします。IFを数MHzに取れば、水晶フィルタやメカニカルフィルタで比帯域の小さい急峻な特性を実現できるからです。
位相法(ヒルベルト変換法)
フィルタ法の「急峻なフィルタが必要」という課題を回避するのが位相法です。SSB信号の式をそのまま回路にします。
- メッセージ信号 $m(t)$ を2つに分岐
- 一方はそのまま $\cos(2\pi f_c t)$ と乗算
- 他方はヒルベルト変換器(全域で $90°$ の位相シフトを与える回路)を通してから $\sin(2\pi f_c t)$ と乗算
- 2つの出力を減算(USB)または加算(LSB)
長所 はフィルタに依存しないため任意の搬送波周波数でSSBを生成できること、短所 は広帯域にわたって正確に $90°$ の位相シフトを実現するのが難しいことです。この「難しさ」がどれくらい効くのかを含めて、両方式の様子を数値で見てみましょう。

左上のフィルタ法では、DSB-SCの6本の線スペクトルのうち $f_c = 2000$ Hz より上の3本だけをBPFで残しますが、通過域と阻止域の切り替わりが $f_c$ 直下に来るため、青線のような立ち上がりの急な特性が要ります。右上を見ると、$m\cos$ と $\hat{m}\sin$ の振幅スペクトルは完全に一致しており、両者の違いが位相だけであることが分かります。左下はその差を取った結果で、理想的なヒルベルト変換を使った場合、残留LSBの最大値は $1.03\times10^{-13}$、USBの $1.0000$ に対して $-260$ dB という数値計算上ほぼ完全な抑圧が得られました。
問題は右下です。位相シフト器が $90°$ からわずかに $\delta$ だけずれると、不要側波帯の抑圧比は $\delta = 0.5°$ で $47.2$ dB、$1°$ で $41.2$ dB、$2°$ で $35.2$ dB、$5°$ で $27.2$ dB と急速に劣化しました。実用上の目安とされる $40$ dB を確保するには、位相精度を約 $1°$ 以内に保つ必要があるわけです。アナログ回路でこの精度を音声帯域全体(300 Hz〜3 kHz、10オクターブ以上)にわたって維持するのは容易ではなく、ポリフェーズフィルタなどの近似回路が使われてきました。逆に言えば、FIRフィルタやFFTで位相を厳密に扱えるディジタル信号処理ではこの制約が消えるため、位相法がソフトウェア無線(SDR)の標準的な実装になっています。
ウィーバー法(第3の方法)
フィルタ法と位相法のハイブリッドとして、ウィーバー法(Weaver method) もあります。メッセージ信号を帯域の中心周波数でいったんベースバンドに落とし、ローパスフィルタで片側を除去してから搬送波周波数にアップコンバートする方式です。急峻なBPFも広帯域の位相シフタも不要で、ローパスフィルタだけでSSBを生成できるという利点があり、これもディジタル実装と相性のよい方式です。
生成法が分かったところで、SSBにすると具体的にどれだけ得をするのかを数字で確認しましょう。
SSBはどれだけ得なのか — 帯域と電力の実測
$300$ Hz、$700$ Hz、$1200$ Hz の3トーンからなるメッセージ(最高周波数 $W = 1200$ Hz)を使い、標準AM・DSB-SC・SSBの占有帯域幅を $-40$ dB 基準で実測しました。あわせて、同じ「情報の電力」を相手に届けるのに必要な総送信電力も比較しています。

左のグラフでは、標準AMとDSB-SCがともに $6800$〜$9200$ Hz の $2400$ Hz($= 2W$)を占有したのに対し、SSB(USB)は $8300$〜$9200$ Hz の $900$ Hz しか使っていません。DSB比 $37.5\%$、つまり半分よりさらに狭くなっています。SSBは片側を捨てるだけでなく、メッセージの最低周波数(この例では $300$ Hz)に対応する $f_c$ 近傍の空白も同時に削り落とすため、実際の音声信号ではおおむね「半分以下」に収まります。右のグラフは、正弦波を $100\%$ 変調した場合に同じ側波帯電力を届けるのに必要な総送信電力で、標準AMが $3.00$ 倍、DSB-SCとSSBが $1.00$ 倍でした。$\eta_{\text{AM}} = 1/3$ の裏返しであり、同じ送信管・同じ電源で、SSBなら標準AMの3倍の「効く電力」を送れることを意味します。
帯域が狭いことは、受信機側の通過帯域も狭くできることを意味します。受信機に入る雑音電力は帯域幅に比例するので、帯域が半分になればそれだけでSNRが $3$ dB 改善します。電力効率の $3$ 倍($10\log_{10}3 = 4.8$ dB)と合わせると、SSBは標準AMに対して $8$ dB 近い優位を持つことになり、短波の長距離通信でSSBが標準になった理由がここにあります。
得られる利益がはっきりしたところで、その代償である復調側の要求を見ておきましょう。
SSBの復調 — 周波数誤差が音程を狂わせる
SSBの復調もDSB-SCと同様に同期検波で行います。受信したSSB信号に再生した搬送波を掛け、ローパスフィルタを通す、という手順です。位相誤差 $\phi$ が乗った場合の出力を計算してみましょう。$s_{\text{SSB}} = m\cos(\omega_c t) – \hat{m}\sin(\omega_c t)$ に $2\cos(\omega_c t + \phi)$ を掛けると、積和公式より
$$ y(t) = m(t)\cos\phi + \hat{m}(t)\sin\phi $$
が得られます(高周波項はLPFで除去済み)。単一トーン $m = \cos\theta$、$\hat{m} = \sin\theta$ を代入すると加法定理そのままで
$$ y(t) = \cos\theta\cos\phi + \sin\theta\sin\phi = \cos(\theta – \phi) $$
となり、振幅は $1$ のまま、位相だけが $\phi$ ずれることが分かります。図11でSSBの実測値がどの位相誤差でも $1.0000$ だったのは、この性質を確かめたものです。人間の耳は音声の位相に鈍感なので、SSBは位相誤差にはむしろ強い方式だといえます。
ではSSBの弱点はどこにあるのでしょうか。それは周波数誤差です。局部発振器の周波数が $f_c + \Delta f$ にずれると、復調されたトーンはすべて $\Delta f$ だけ平行移動してしまいます。実測してみましょう。

$300 / 600 / 900$ Hz の3トーンを送ったとき、$\Delta f = 0$ Hz では復調後も $300 / 600 / 900$ Hz で、周波数比は $2.000$ と $3.000$、つまり基音と倍音の整数比が保たれています。ところが $\Delta f = 20$ Hz では $280 / 580 / 880$ Hz となり比は $2.071 / 3.143$、$\Delta f = 50$ Hz では $250 / 550 / 850$ Hz で比は $2.200 / 3.400$ と、整数比が崩れてしまいます。下段の波形を見ても、誤差が大きいほど元の波形(青)からの崩れが激しくなっています。
ここが直感に反するところです。全体が同じ量だけシフトするのだから、単に音が低くなるだけではないかと思えますが、そうではありません。音の高さの知覚は周波数の「比」で決まるため、全成分を一律に加算的にずらすと倍音構造が非調和になり、金属的で不自然な声(いわゆるドナルドダック・ボイス)になります。$50$ Hz という一見小さな誤差でも、$300$ Hz の基音に対しては $17\%$ にあたる大きなずれです。実務上、SSB音声で了解度を保つには周波数誤差を数十Hz以内、快適に聞くには $10$ Hz 程度以内に抑える必要があるとされ、これがSSB受信機に高い周波数安定度を要求する理由です。
なお、この弱点を緩和するために、送信側で搬送波をわずかに残すパイロットキャリア方式(SSB-RCやSSB-FC)も使われます。受信機はこの微弱な搬送波にPLLを引き込むことで、周波数誤差をほぼゼロにできます。
SSBの利点と代償が見えたところで、SSBを適用しにくい信号のための折衷案を見ておきましょう。
VSB(残留側波帯)変調
SSBの実用上の課題
SSBは帯域効率に優れていますが、メッセージ信号に直流(DC)成分や非常に低い周波数成分が含まれる場合に破綻します。低域成分は $f_c$ のすぐ近くに現れるため、フィルタ法では分離できず、位相法でも極低周波での $90°$ シフトが困難だからです。
テレビの映像信号がまさにこのケースでした。映像信号は画面の平均輝度に対応する直流成分から数MHzまでの広い帯域を占め、低域成分が豊富です。SSBを適用すると搬送波近傍の低域成分が失われ、画面全体の明るさやベタ塗り部分が再現できなくなります。
VSBのアイデア
VSB(Vestigial Sideband: 残留側波帯) は、片方の側波帯を完全には除去せず、搬送波近傍の「残留(vestige)」だけを残す折衷案です。
- 片方の側波帯は全て送信(例えばUSB全体)
- もう片方の側波帯は大部分をカットするが、搬送波近傍の低周波成分だけは残す
これにより、帯域幅は $W < B_{\text{VSB}} < 2W$ とDSBより狭くなり、フィルタの遷移帯域に余裕ができて急峻なフィルタが不要になり、低域成分が保存されるためDC成分を含む信号にも対応できます。
VSBフィルタの条件
VSBが正しく復調されるためには、VSBフィルタ $H(f)$ が搬送波周波数 $f_c$ を中心として次の対称条件(vestigial symmetry condition) を満たす必要があります。
$$ \begin{equation} H(f – f_c) + H(-f – f_c) = \text{const}, \quad |f| \leq W \end{equation} $$
この条件は「上側波帯で削られた分と下側波帯で残された分を足すと一定になる」ことを要求しています。同期検波では上下の側波帯が足し合わされて復調されるので、削った分を反対側で補っておけば、復調後にフラットなメッセージスペクトルが復元されるという理屈です。
ここまでで4つの方式が出そろいました。最後に全体を俯瞰しましょう。
各AM変調方式の総合比較
送信信号の式
メッセージ信号 $m(t)$、搬送波 $\cos(2\pi f_c t)$、ヒルベルト変換 $\hat{m}(t)$ を用いると、4方式は次のように並びます。
| 方式 | 送信信号 $s(t)$ |
|---|---|
| DSB-FC(標準AM) | $A_c[1 + k_a m(t)]\cos(2\pi f_c t)$ |
| DSB-SC | $m(t)\cos(2\pi f_c t)$ |
| SSB-USB | $m(t)\cos(2\pi f_c t) – \hat{m}(t)\sin(2\pi f_c t)$ |
| SSB-LSB | $m(t)\cos(2\pi f_c t) + \hat{m}(t)\sin(2\pi f_c t)$ |
定数項 $1$ を落とすとDSB-SC、そこに直交成分を足し引きするとSSB、という段階的な関係になっていることが見て取れます。
性能指標の比較
本記事で実測した値を含めて、性能指標を一枚にまとめると次のようになります。

表を横に読むと、標準AMは「帯域 $2W$・効率 $33.3\%$・送信電力3倍」と性能面ではすべて劣るのに、受信機だけがダイオード1本で済むことが分かります。DSB-SCは送信機も単純なまま効率を $100\%$ にできますが、受信機に搬送波再生が要ります。SSBは送信機・受信機とも複雑さの代償を払う代わりに、帯域と電力の両方で最良です。性能と回路の複雑さがきれいにトレードオフの関係になっており、用途に応じてどこで妥協するかが方式選択そのものだと読み取れます。
QAMとの関係
DSB-SCの直交性は、現代のディジタル通信の基礎になっています。互いに直交する2つの搬送波 $\cos(2\pi f_c t)$ と $\sin(2\pi f_c t)$ にそれぞれ独立なメッセージ信号を載せると、
$$ s_{\text{QAM}}(t) = m_I(t)\cos(2\pi f_c t) – m_Q(t)\sin(2\pi f_c t) $$
となります。形はSSBの式とそっくりですが、$m_Q$ が $m_I$ のヒルベルト変換ではなく独立な信号である点が決定的に違います。これがQAM(直交振幅変調) であり、同じ帯域幅で2倍のデータを伝送できます。
なぜ2つを重ねても混信しないのかというと、図11で確認した直交ヌルがあるからです。$\cos$ で同期検波すれば $\sin$ に載った成分は $\cos 90° = 0$ で完全に消え、$\sin$ で検波すれば逆になります。Wi-Fi(802.11)、LTE、5G NRなど現代の高速無線通信はすべてQAMを基盤としており、その原理はDSB-SCの直交多重にあるのです。
まとめ
本記事では、AM変調の帯域効率と電力効率を改善する各方式について、数式の導出と実測値の両面から解説しました。
- 標準AM(DSB-FC) は変調度を限界の $m=1$ まで上げても、情報を運ぶ側波帯は全電力の $33.33\%$(実測)にとどまる。$m=0.3$ なら $4.31\%$ しかない
- 過変調($m>1$) では包絡線が折り返し(実測で最小値 $-0.50$、最大 $1.00$ のずれ)、包絡線検波では復元不能になる
- 包絡線検波 は $RC$ を「搬送波周期 $50\ \mu$s より十分長く、追従限界 $2.39$ ms より十分短く」取る必要があり、適切な $0.5$ ms で誤差 $5.04\%$、外すと $46$〜$75\%$ に悪化する
- DSB-SC は搬送波を除去して電力効率を $100\%$ に高める(実測で搬送波振幅 $1.0000 \to 1.3\times10^{-16}$、側波帯は $0.3000$ のまま)が、復調に同期検波が必要
- 同期検波の位相誤差 はDSB-SCの出力を $\cos\phi$ 倍に減らし、$90°$ で完全消失する(直交ヌル)。一方でSSBの振幅は位相誤差によらず一定
- SSB は片方の側波帯を除去し、占有帯域を $2400$ Hz から $900$ Hz(DSB比 $37.5\%$)に、必要送信電力を標準AMの $1/3$ に削減する
- SSBの弱点は周波数誤差で、$\Delta f = 50$ Hz では倍音比が $2.000/3.000$ から $2.200/3.400$ に崩れ、音質が不自然になる
- 位相法の実装精度は $90°$ から $1°$ ずれると抑圧比が $41.2$ dB まで落ちるため、ディジタル実装の優位性が大きい
- VSB はSSBとDSBの中間で、低域成分を含む信号(映像など)に適する
- QAM はDSB-SCの直交多重であり、現代のディジタル通信の基礎をなしている
DSB-SCとSSBの理解は、変調・復調の体系的な理解の中核をなします。特にSSB生成に使うヒルベルト変換は、信号解析やSDR(ソフトウェア無線)でも頻繁に登場する重要な概念です。
次のステップとして、以下の記事も参考にしてください。